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ノウハウ 小山昇の「再定義からはじめる仕事術」  第4回 最頻値、サボリ、叱り方、実現可能な数字 小山昇の「再定義からはじめる仕事術」 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ

第4回 最頻値、サボリ、叱り方、実現可能な数字

 
 
皆さんこんにちは。小山昇です。B-plusさんでの連載3シリーズ目になる今回は、武蔵野の経営用語集『増補改訂版 仕事ができる人の心得』を底本にお送りしています。社内で使われる言葉について見直して仕事の生産性を高めようという趣旨のこのコラム。先月までで【あ行】【か行】を見てきましたが、皆さんの職場でも取り入れていただいてますか? 社内の意識改革は言葉の再定義から。今月は【さ行】に入ります。さっそく始めましょう。
 
 

➖さ行➖

 
*最頻値(通番0515)
最も固まりの多いところを指す。平均値で見るとマーケットを見誤る。月収1000万円の人1人と月収10万円の人9人で成り立っているマーケットがあるとして、マーケットの大きさは1090万円で平均は109万円。最頻値とはもっとも多く分布している値です。人数の多いゾーンをターゲットとして、10万円以下の商品を売るのが正しい。
 
解説: いつの頃からか、「高単価顧客を重視しましょう」という姿勢がもてはやされるようになりました。どこの経営コンサルタントが触れまわったのやら。嘆かわしいことです。確かに、単価のいい顧客向けに商品構成をシフトしていくのは一見すると理に適ってそうに思えます。外資系コンサルがいかにも言いそうな「選択と集中」というやつですかね。
 
しかし、彼らは自分で商品を売ったことがないから言えるのです。労力対比の収益性をどれだけ高めたって、売上高が増えなければ意味がありません。絶対的な業績が伸びなければ意味がありません。経営は率で考えると判断を間違います。
 
A社の前年度売上高が10億円として、今年20億円になりました。成長率200%です。「すごい! やった!」と思いますね。同じくB社の前年度売上高が100億円で、今年の売上高は150億円でした。成長率は150%止まり。どっちが偉いか聞くと、大抵の人はA社を褒めます。違う。断然B社が偉いんです。50億円伸びてるんですよ!? 経営は量です。だから一番お客さんの多い価格帯=最頻値を押さえるべきなのです。例でいうと想定すべき顧客は月収10万円の人。109万円の人でも1000万円の人でもありません。
 
 
 
*サボリ(通番0531)
損をするのは自分自身なのです。あとで痛い目にあう。会社はなんの損もしない。上手にサボっていても、見ている人がいます。それは、良心というもう一人の自分です。
 
解説: いいですねぇ、サボリ。どうぞサボってください。会社はなんの損もしませんから。むしろ、万々歳ですから。だって、マラソンで抜かされるのと抜くのと、どっちが気持ちいいですか? 抜くほうが気持ちいいでしょう。サボっている人は自ら“抜かされ役”を買って出てくれているようなもの。やる気みなぎる優秀な社員たちがその人を追い抜いて気持ちよくなった勢いでますます頑張ってくれたら、会社にとってはありがたいこと、このうえない。サボった人たちは表彰してあげたいくらいです。
 
・・・と、憎まれ口を叩きましたが、要するに、サボったって自分にとっていいことは何もないよ、ということです。出世したいでしょう? 給料もっと欲しいでしょう? サボってて出世できますか? できませんね。はい、以上。
 
 
 
*叱り方(通番0545)
同じことを何度も、うんざりするくらい全力で叱る。人前で叱る。相手の目を見ながら、叱るべき問題点をできるだけ具体的に。
 
解説: 多くの社長や上司は「怒る」と「叱る」が区別できていません。両者は区別しなさい。「小山さんいっつもそれ言ってますよ。前も聞きましたよ」という声が聞こえてきます。その通り、何度も言っています。できるようになるまで何度でも言います。できるようになれば皆さんが伸びるから。皆さんに伸びてもらいたいから言うのです。「怒る」と「叱る」は区別しなさい!
 
ね? これが「叱る」です。人間のやることなんだから、同じことを何度も叱ってはじめて改まるのです。その覚悟もなしに「何度言わせるんだこのバカ!」と怒ってくる上司には、心の中で「まだ2回だこのバカ!」と言い返してやりなさい。私も加勢してあげますから。
 
回数も然りですが、大事なことがあと2つあります。1つめは、「事」を叱るということです。部下にビールを買ってこいと指示したらワインを買ってきた。そのときの叱り方は「ビールじゃないだろこれは!」が正しい。「何やってんだお前は!」は「怒る」です。これは部下の人間性を否定することになり、最悪です。
 
大事なことの2つめは人前で叱ること。彼ら彼女らのメンツに配慮して別室に呼んで二人だけになってから叱る社長がいますが、あれは間違いです。たまに上司が社長から叱られると部下は溜飲が下がっていいからということもありますが(笑)、それ以上に、「事」を叱るぶんにはそれを見せたほうが、他の社員たちの勉強になりますからね。
 
 
 
*実現可能な数字(通番0595)
会社がつぶれます。無理をしないと利益は出ない。
 
解説: 武蔵野は毎年の期首に経営計画発表会を開きます。私は52期目を勝負の年とにらんで、発表会で「売上高6.6億円・経常利益4億9400万」という経営目標を発表しました。でも、みんな、私も含めて社員全員、会場にいたサポート会員企業の皆さんも、実現可能だと思った人は誰もいませんでした。前年の経常利益が3億6500万円なのに、約5億円。達成したら成長率135%です。ひどい会社だと105%ぐらいの目標でも「根拠は何だ!」とか「無責任だ!」とか文句を言われるのに、135%なんて、我ながら超クレイジー。普通に考えたら実現不可能です。
 
でも現実には、達成したんですよ。なぜできたか。誰もが「無理だ」と思ったからです。これが例えば105%だったら、まだなんとかなりそうですよね。「やってやろうじゃんか!」とメラメラ燃えてくる人もいるでしょう。するとどうなるか? 今までのやり方のまま目標に挑んでしまって未達に終わります。これが真理です。
 
経営目標は燃えてくるぐらいじゃダメ。勝負をかけるときは社員が青ざめるぐらいの目標を掲げないと、会社がつぶれます。「今のやり方じゃダメ」「今と同じ考え方じゃダメ」「今と同じレベルの人間でいてはダメ」この3つが基本の立ち位置です。そこから死ぬほど考えて努力してこそ、会社は長くやっていけるのです。


小山昇の「再定義からはじめる仕事術」
第4回 最頻値、サボリ、叱り方、実現可能な数字




 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

   http://koyamanoboru.jp

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