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ノウハウ 小山昇の「再定義からはじめる仕事術」  第3回 勘の良し悪し、下駄、危機管理、高度化 小山昇の「再定義からはじめる仕事術」 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ

第3回 勘の良し悪し、下駄、危機管理、高度化

 
 
皆さんこんにちは。小山昇です。武蔵野の経営用語集『増補改訂版 仕事ができる人の心得』を底本にお送りする新シリーズ。初めて読む方は、ぜひ第1回冒頭もあわせてご覧ください。人は言葉の捉え方が変わると行動が変わる生き物です。皆さんも、いつの間にか社内で当たり前に使われている言葉を、見直してみませんか? それによって、それらの言葉を以前より生産的な意味で使えるようにしてみませんか?
 
この連載はその参考にしていただくためのものです。第3回の今月は【か行】の続きから。さっそく、一緒に始めましょう。
 
 
*勘(通番0250)
厳しいところで「鋭くなる」。温かいところで「甘くなる」。体調の悪い時や身内でトラブルのある時は当たらない。悪い予感は当たるが、良い予感はまずハズレる。
 
解説: 勘がいい人と悪い人は何が違うか。例えば、腕時計をしている人は勘が悪い人が多いです。どれくらい時間が経ったか、今何時か、自分で考えなくなるからです。車の運転もそう。どこに行くにもナビ任せという人ほど、なんでもない渋滞にひっかかっています。私などは、エレベーターを待つ短い間でも、3基あれば3基のうちどれが一番に来るか、常に考えています。つまり、「勘がいい」というのは、「自分で考えて先を読める」ということです。
 
先読みする対象を人の心理にすればジャンケンだって強くなります。ホームでその日のカバン持ちと一緒に電車を待っている時に、いつも私の右に立つ彼が左に来たら、その日の私は彼とジャンケンで負けることは絶対にありません。なぜか。いつもの立ち位置に来ない。ということは、今日の彼はいつもの彼ではない。であれば、彼が普段よくグーを出していれば、グーこそ出さなくなる。だったらこっちはチョキから出していけば、「あいこ」はあっても「負け」はありません。サポート会員の社長が申し込める「小山昇の一日カバン持ち」は、夕食の勘定を賭けたジャンケンで閉めます。相手の心理を読むこの不敗戦略で、私がこれまで何人の社長に夕食をおごってもらったことか(笑)。
 
悪い予感が当たって良い予感はハズレるのも、ちゃんと法則があります。良い予感は大体がファジーです。なんとなく「あそこと契約できそうだ」と思うから、具体的な分析がついおろそかになる。詰めが甘くなり、契約できずに終わる。何のことはない、自分で招いた結果なのです。
 
皆さんはぜひ、この法則に気付いて、良い予感についても悪い予感の時と同じくらい具体的にシミュレーションする癖を、身につけてくださいね。
 
 
*危機管理(通番0290)
①悪い情報は速く、よい情報はゆっくり。 ②悪い報告をほめる。報告しなかった人を罰する。 ➂責任追及はいけない。 ④職階を飛び越して行う。居合わせた人で対処する。飛び越されても怒ってはいけない。 ⑤危機管理に前例なし。 ⑥時間無視、事実だけでよい。5W1Hでなくてもよい。
 
解説: 良い情報を上げるのはゆっくりでかまいません。報告しなくても会社はつぶれないからです。悪い報告は一刻も早く報告してもらわねば、会社がつぶれます。緊急性が高い悪い報告を、嫌な気持ちを押しのけてきちんと報告した社員は褒めるべし。報告しなかった社員は容赦なく罰すべし。
 
責任追及もいけません。危機が起きるのも、その報告がなされない会社にしてしまったのも、社長の責任ですからね。
 
「居合わせた人で」というのは、危機管理はスピードが命だから。当事者が海外出張から帰ってどんなにいい対処をしても、お客様の傷ついた心は癒されません。当人じゃなくていい。スーツじゃなくていい。時間無視でいい。「今行け! すぐ行け! 行けるやつ全員行け!」――これが絶対ルールです。飛び越された当人が後から「なんで俺を通さなかったバカ野郎!」と怒ったら、「その時その場にいないお前が悪いんだバカ野郎!」ですよ。事後共有はするんだから、感謝されても、怒られる筋合いはない。このことを社長が社の方針として示すべきです。
 
「前例なし」と明言するのは、危機対応を自己満足にさせないためです。お客様に納得していただくことが重要なのであって、「このケースにはこの対処が有効」なんていうモデルをコレクションすることが危機管理ではありませんからね。
 
 
*下駄(通番0408)
履かせてはいけない。優秀な人に履かせると、次の評価の時に差がなくなるので不満をもつ。古い人に足を引っ張られる。
 
解説: 私も昔は、何人かに下駄を履かせました。いつまでたってもA評価がとれないダメダメ課長が何人かいて、下駄を履かせて部長にしたけど、例外なく辞めてしまった。今考えれば当然です。評価が伴わないのに昇格させて、苦しむのはその人自身です。「長いこと頑張ってるんだから」と昇格させて、辞める必要がない社員を辞めさせてしまうほうが、よほどかわいそうです。彼らには申し訳ないことをしました。
 
また、いかに若くして優秀な人材であっても、いきなり課長や部長に上げてはいけません。よほどできた社内環境でないと、どうやったって、足を引っ張られますからね。そして、そういった人事は社長の肝いりで進められることが多い。つまり、ここでも、無用な足の引っ張りあいを起こさせた責任は社長にある。引っ張りあいが起きるレベルの環境になっているのも社長のせい。社長の責任は、それほど重いのですよ。
 
 
*高度化(通番0463)
みんなができるようになることです。質がよくなることです。複雑になることではありません。
 
解説: 武蔵野は日本有数のIT企業です。意外ですか? ところがこれが事実です。なぜか。全社員がiPadを使えるから。
 
「たかがタブレットくらいで」と失笑しますか? 確かに、難しいことはさせていません。もっと最先端の業務システムを入れている会社は他にいくらでもあります。でも、使いこなしている社員はせいぜい2割。いっぽう武蔵野は、全員が同程度に使いこなしています。だから、トータルで業務が速い。これこそ本当の高度化です。
 
ついでに補足すると、私がこれまで導入したツールで、最初から社員が賛成していたものはゼロ。皆無です。でも、しばらくやらせて元に戻そうとしたら、便利で味をしめちゃったから、みんな「やだ!」と言う。ずるいやつなんか、もっと使いこなせるよう、自発的に勉強を始めている。まったく、困ったものです(笑)。


小山昇の「再定義からはじめる仕事術」
第3回 勘の良し悪し、下駄、危機管理、高度化




 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

   http://koyamanoboru.jp

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