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ノウハウ 小山昇の「再定義からはじめる仕事術」 第2回 運命、営業案内、改革について 小山昇の「再定義からはじめる仕事術」 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ

第2回 運命、営業案内、改革について

 
 
皆さんこんにちは。株式会社武蔵野代表取締役の小山昇です。先月から始まったこのシリーズ、皆さん、ご覧いただけてますか? 旧二作に続く今度のシリーズは、2012年発行の武蔵野の実践用語集『増補改訂版 仕事ができる人の心得』を底本にお送りしています。
 
なぜ用語集をまとめたか? いい質問です。例えば「ビールを持ってこい」と上司に言われて――おっとっと。「また飲み会の話!」と歴代の秘書(肩書は違いますが)からお叱りが出たので(笑)、詳しくは第1回をご覧いただくこととして、要は、事業を発展させるために、社内で使う言葉の意味を統一したかったのです。
 
皆さんも、今いちど社内で通用している言葉を見直して、それぞれの定義を決めてみませんか。そしてどうせなら意味をそろえるだけでなく、各人がそれぞれの言葉を生産的な意味に解釈し直せるように、再定義してみませんか。この連載がその参考になることを願いつつ、【あ行】の続きから始めましょう。
 
 
*運命(通番0115)
誰と出会ったかで決まる。現在の自分の人格にふさわしい出会いしかない。よくするには、自分を磨くことです。
 
解説: 誰ですか、「誰と出会うかがあらかじめ決まっているのが運命なんじゃないの?」と素っ頓狂なことを言っているのは。
 
いいですか、想像してください。今仮に、人間の人格を身長で表わすとしましょう。すると、自分より背が高い人のことは、あなたにはわからないのです。まだまだ低い視点で相手のお腹や背中がいくら見えたって、極端な話、壁みたいなもので、人間がいるとは気付かないですからね。そこから努力して、能力的にも成長して自分の身長が伸びた時に、はじめて相手の顔が見え、声が聞こえてきます。運命を待っているうちに、素敵な出会いは頭の上をビュンビュン通り過ぎていたんです。悔しいでしょう。もったいないでしょう。だからもっともっと勉強しましょう。
 
ただし、このことに気付かせて引っ張り上げてくれる誰かは必要です。武蔵野では私がそれをやっています。
 
ちなみに、武蔵野は社内結婚が多いのは以前お話しした通りです。もう1つ、離婚がほぼほぼないということも強調しておきましょう。なぜか。同じ身長の社員同士でくっついて、結婚したら、女性は子どもができます。子育てを通じて妻がレベルアップします。それで男を見下すようになれば離婚もあるでしょう。でも、武蔵野は早朝勉強会を通じて男もレベルアップを続けているから、そうならないのです。経営サポート事業の指導先でも、ちゃんと社員教育に力を入れる会社は、社員の離婚が極めて少ないですよ。
 
 
*営業案内(通番0118)
電話・ファックス番号は大きな字で見やすく、表に刷る。開いて渡してはいけない。売り込みになる。暇な時に見てくださいと言って、半期ごとに置いてくる。気になって見るものです。中身を全部変える必要はないが、表紙は毎回変える。そうしないと新しく作成したことが伝わらない。
 
解説: 営業案内の資料やパンフレットは売り込みの道具ではない。これが大前提です。売り込まれたら、相手は「買わなきゃ」となって引きます。それが人間の心理というものです。
 
では、結果的に買ってもらうにはどうやるか。営業案内を渡す時、特に見てほしいページに、さりげなく紙を一枚、端をはみ出させて入れておきましょう。人に借りた本に付箋が貼ってあったらそのページを覗きたくなるでしょう。あれと同じ心理による仕掛けです。
 
人に行動を起こさせるには、自らその行動を取らせること。これ以外ありません。お客様が商材を買ってくださるのは、商材の有用性に、自ら気付いた時です。つまり、営業案内は、お客様の気付きを演出して差し上げるためのものなのです。決して売り込むためのものではない。そして、言うまでもなく、演出は仕掛けが重要です。
 
私は日頃から、「人間の心理を無視して事業の成功なし」と言っています。恋愛だってそうでしょう。武蔵野で私が一番女性社員からモテるのは、彼女たちの変化に、私が一番よく気付くからです。髪型を変えたとか、今日は表情が明るいとか。――お? 歴代の秘書たちがみんなうなずいてくれていますよ。やれやれ、よかった(笑)。
 
 
-か行-
 
 
*改革(通番0189)
1人から始まる。危機意識がないと進まない。
 
解説: 作業時間の短縮、業務フローの刷新などなど。企業は様々な社内改革を行うものです。ただ、その成功いかんが「いかに他の人を巻き込めるか」にかかっていると考えている人が多い。それは間違いです。
 
例えば残業です。残業はみんなが減らしたいものです。でも、社内改革が好きな社員は1人もいません。人間は自分が慣れ親しんだ環境が一番居心地がいいからです。あまつさえ、「こんな改革をしましょう!」と手を挙げようものなら、往々にして責任者にさせられる。自ら望んでそんな面倒は背負う人はいません。
 
武蔵野では近年、残業が大幅に減りました。私が「社員の残業を減らす」と決めたからです。そのための改革も、私が号令をかけて始めました。まず、道具を変えさせました。社内のシステムに新しいソフトを入れて、他社がキーボード入力でやっている作業を、キーボードなしでできるようにしました。今まで紙ベースでやっていたことの大半をITで済ませられるようになり、大幅に業務を効率化できました。もちろん、原資はかかりましたよ。約1億円。バックヤードのことに1億円もかけて、もし効果がなかったら責任問題です。だから私が始めたのです。
 
もうおわかりですね。「1人から始まる」というのは、トップから始まるという意味です。会社にトップは1人しかいません。そう、改革は、他でもない、社長であるあなたが、あなたの責任において始めるべきなのです。


小山昇の「再定義からはじめる仕事術」
第2回 運命、営業案内、改革について




 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

   http://koyamanoboru.jp

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