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ノウハウ 明るい我らに仕事あり vol.37 (最終回) 筋道とおして花道かざる 明るい我らに仕事あり 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 
 こんにちは、小山です。一年が過ぎるのはあっという間。2015年も残りわずかとなってまいりました。そして、今回をもってこのコラム「明るい我らに仕事あり」も、ひとまず本編は最終回を迎えることになりました(年明け1月号は番外編を準備しています)。そんなこともあって今回何を書くか考えましたが、やはり仕事を包括するうえで最も大きなものは「筋道」だろうと。どんな仕事をするにしても、「筋」をとおさねば活躍できません。私なりに考える“小山流筋道論”。さて初めのご相談は――?
 
 
【相談ケース73】 独立するにあたっての心構えは?
 
小山社長、お世話になります。私は約10年、出版社で編集者として働いてまいりまして、このたび独立をすることになりました。ご存じのように編集者はフリーランスで働く人が多い業種です。私も今後、自分の仕事の幅を広げつつ、お世話になった編集部とも、外部から仕事に関われるようにしたいと考えています。そのために大事なことを、ご教授くださいますと幸いです。(42歳 編集者・男性)
 
 

在職中と退職間際の仕事も大事に

 
 おや、編集者の方ですか。私もこれだけ多く本を出してくると編集者の知り合いがたくさんいますが、どの版元さんでしょうね・・・。ともかく、おつかれさまでした。そして、独立されるとのこと、おめでとうございます。
 独立してうまくいく人とそうでない人は、はっきりと分かれます。その分かれ目は、都度目の前の仕事を一生懸命やってきたか、または適当にやっつけでやってきたかの違いです。社員時代に一生懸命仕事をしてこなかった人が独立してうまくいったためしを、私は見たことがないですから。
 人間、第三者に管理されているほうが結果を出しやすいものです。ところが独立したら、全ての管理を自分ですることになります。「今日は疲れたからもうやめた」と楽な方向に走りがちになるんですね。そうなると生産効率が下がり、給料をもらっていたときよりも稼げなくなってしまいますね。
 独立したら、会社の看板は頼れません。地盤もありません。あるのは時間だけです。独立してうまくいくためには、まず遮二無二仕事に取り組んでいかなくてはいけないのですが、社員時代からその癖をつけておけないと、うまくいきっこないのです。
 私は一度、武蔵野に入社して独立し、社長として再び戻ってきたわけですが、独立後はそれこそ朝の4時から夜中まで働き尽くしでした。それくらいの気概がないと独立してもうまくいきません。
 他にも言えることとして、お世話になった会社のライバル会社になるのは避けたほうがいいでしょうね。私はダスキンの仕事をしていましたので、独立後、ダスキンに弓をひくような仕事はしないと決めていました。あなたも、受けた恩を水に流してはいけませんよ。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 古巣とうまく関係をつくっていくには、まず古巣での残りの仕事を一生懸命に頑張ることが大事です。そして独立後は朝も昼も夜もなく働いていけるよう体制を整えてください。また、独立後も今の会社と取引関係を持ちたいならば、誠実さを欠かした辞め方は絶対にいけません。「あの人とは一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるぐらい、最後まで頑張り、誠実であるべきです。そしてフリーになってからは、これまで以上のご活躍を期待していますよ!
 
 
【相談ケース74】 社員の花道をどうかざる?
 
小山社長、いつも拝読しております。私が社長を務めております会社でも、時折社員の退職があります。彼らの前途を祝ってあげたいところですが、会社としてはせっかくの戦力がいなくなるわけですから、多少なりとも複雑な気持ちではあります。恥ずかしながら、引き留めようとして関係がこじれてしまったこともゼロではありませんで・・・。社長として社員の退職というものにどう向き合うべきか、ご指南をお願いいたします。(55歳 経営者・男性)
 
 

引き留めるよりも大事なこと

 
 まず、はっきりしているのは、「辞める」と言っている社員を引き留めることはできないということです。引き留めたとしても、やはり3年以内には、再び辞めると言い始めるでしょう。つまり、無駄なのです。
 しかし、社長として社員たちに現実を見せてあげることくらいは、してもいいかもしれませんね。武蔵野でも、会社を辞めて他の会社に行ったり独立したりしたもののうまくいかず、人によっては、その会社に戻ろうと思っても戻れなくなってしまい、路頭に迷ったらしい者も過去にはいました。
 でも、今の武蔵野にはほとんどいません。なぜならば、社員たちが皆現実というものを知っているからです。私が開催しているセミナーなどの関係で、武蔵野には企業経営者が多く出入りします。社員たちは、ことあるごとに経営者たちとコミュニケーションをとっているので、独立や転職の大変さを嫌というほど聞かされているのです。
 もちろん、転職や独立には個々に理由がありますし、前向きな退職であれば彼らにとってもよいことだと思います。しかし、そうではない「逃げ」のような退職の場合、少なくとも彼らが選ぼうとする現実が、いばらの道であるということは気付かせてあげたほうがいいかもしれません。それは、引き留めるということではなく、あくまで「気付かせてあげる」のです。
 そこから彼らがどう判断し、どう人生を生きていくかは、それはもう彼らの問題です。あなたにとやかく言えることではありません。一時でも机を並べて一緒に仕事できたことを感謝して、終わってあげるとよいでしょう。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 社員は社長の所有物ではないのですから、いつまでも手元に置いておけると思っていると大間違いです。彼らには彼らの人生があり、それがあなたの目に正しい道として映っていようと、いなかろうと、それはもう社員自身の問題なのです。引き留めることをしてもいいですが、過度な引き留めはこじらせるだけ。それよりは、退職後の現実を見せて慎重にさせてあげるほうが、もし彼らが退職後に失敗してもダメージが最小限で済みます。場合によっては「やはり会社に残ろう。骨を埋めよう」となって以前にも増してしっかり働いてくれるかもしれません。
 
 
 さて、いよいよ残りのスペースも少なくなりました。長きにわたってこのコラムを楽しみにしてくださった皆様、たくさんのご質問をお送りくださった皆様、そして言いたい放題の連載を快く続けさせてくださった編集部に感謝申し上げます。本編は今回が最終回ですが、新年には番外編、そして3月には新連載が決まっています。そう思ってみれば、厳密には最終回というわけでもない(笑)。ということで、年明けにお会いしましょう。皆さん、よいお年を! 
 
 
 
 明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.37 
(最終回) 筋道とおして花道かざる 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

http://koyamanoboru.jp

(2015.12.2)
 
 
 
 

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