B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

ノウハウ 明るい我らに仕事あり vol.35 感情にアプローチして関係を活性化せよ 明るい我らに仕事あり 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 
 こんにちは、小山です。秋本番を迎え、過ごしやすい季節になっていますね。秋は「食欲の秋」「スポーツの秋」などと言われるように、何か行動を起こすにはもってこいのシーズン。人と接する機会も増えますので、私なら「コミュニケーションの秋」も加えたいところです。普段会社で顔を合わせているのに、社内の風通しがもうひとつ・・・。社内にそんなモヤモヤ感を感じたら、ぜひ宴会やレクリエーションの機会を設けて、親密になれるよう働きかけてみることをお勧めします。そんなわけで、今回はコミュニケーションのご相談を2つご紹介しましょう。
 
 
【相談ケース69】 飲み会での上司の作法とは?
 
小山社長、こんにちは。私は某企業で管理職を務めておりますが、自分のチームはどうも一体感に欠けると感じており、飲み会を開いて雰囲気を変えたいと考えています。そこで小山社長に相談なのですが、上司たる者、そのような場でどのような振る舞い方をするのが理想的なのでしょうか?(38歳 会社員・男性)
 
 

口が1つ、耳が2つある理由

 
 チームの雰囲気を良くしたりメンバーの団結力を高めたりするうえで、上司が率先してお酒の席を設けるのは非常に有意義なことです。部下と自分の関係も良くなりますしね。我が株式会社武蔵野も、上司は定期的に部下との飲み会を設けるように、と指導しています。
 しかし、ただ上司と部下がざっくばらんに飲むだけではいけません。部下と飲む際に上司が気を付けなければいけないのは、「彼らが聞きたい話だけをする」ということ。普段の仕事に対する説教や指導はもってのほか、かつての自分の手柄話、自慢話などもNGです。そんな話を部下たちは延々と聞きたくないのが普通です。あなたも上司や社長のワンマントークに付き合うのはウンザリでしょう?
 人間には口が1つ、耳が2つついています。哲学的にいうと、これは「話す倍のことを聞け」という解釈ができるのです。彼らが話したい内容を話させ、上司であるあなたは聞き役に徹する。もしくは彼らが質問してくることに答えるだけにとどめる。これが飲み会における正しい上司の姿です。
 では、彼らはどういう話をしたがっているか。それを探るためには、普段からあなた自身が部下に対して細かい気付きを持っていなくてはいけません。髪型を変えた、服を新調した、ネイルのデザインが変わったなど、日頃から気付き上手になっておくべきです。そしてその小さな変化を褒めてやること。どうせなら大きなことを褒めてやりたい気持ちはわかりますが、そんな大きな変化はそうあるものではない。だから小さな変化を拾って、彼らの感情を上げてあげるべきなのです。それを怠って自分の話ばかりしてしまうとせっかくの飲み会も台無しですよ。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 まず身近なことを褒めてリアクションをとること。あらかじめ彼らに会での話題や質問を用意しておいてもらうのも良い手でしょう。どんなことでも構いません。私の場合は恋愛相談からデートのお勧めコースまで幅広く質問させています。上司は話し役ではなく聞き役であり、仕事以外でも役立つ情報を彼らに提供できる“情報通”でなくてはいけません。それができればしめたもの。みんな腹を割って話すようになります。すると必然的にチーム内のコミュニケーションも活性化し、普段の雰囲気も変わるはず。頑張ってください。
 
 
 
【相談ケース70】 社内レクリエーションを成功させるには?
 
いつも楽しく拝読しております。私は小さな会社を立ち上げて10年になりますが、多少なりとも社員が増え、そろそろ社内レクリエーションを充実させたいと考えるようになりました。運動会やバーベキューなどいろいろアイデアはありますが、社内コミュニケーションの促進に活かすうえでは、どんなレクリエーションを、どのように用意するのが効果的なのでしょうか。アドバイスをいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。(54歳 経営者・女性)
 
 

わざわざ不便なことを選ぶ

 
 多くの社員の人生を預かっていくようになると、彼らにとっても働きやすい環境にしてあげたい。それは社長としての、ある種の親心ですね。素晴らしいと思います。
 私見ではありますが、どのようなレクリエーションをするにしても、「手間のかかるもの」を選んでいくのが成功のコツだと思います。一般論でも、キャンプやバーベキューをすると、焼肉屋で焼肉をするのとは違う、独特の盛り上がりや楽しさがありますね。それは、肉を切る人、焼く人、火を管理する人、テーブルやテントを整える人など、役割がたくさんあり、さらに食事一つするにも手間がかかるからなのです。その手間が楽しさとなり、感情を共有する体験となり、人の心の壁を取り払うのですね。
 武蔵野でいえば、過去にこんな例がありました。社員旅行に出かけた際、ホテルの部屋がどうしても足りず、半分はホテルへ宿泊し、残り半分は近くのキャンプ場のバンガローに宿泊することにしました。日替わりでホテル宿泊とバンガロー宿泊を交代するようにしたのです。ホテル班は何もしなくてもシェフが料理をつくってくれますが、バンガロー班はそうはいきません。おかずの魚を釣るのも、米を炊くのも、全部自分たちでやらなくてはいけない。しかし、いざ2日目になると、その手間暇をかける時間があまりに楽しかったようで、バンガロー班はホテルへの移動を嫌がり、ホテル班はどうしてもバンガローに泊まりたいと主張するようになったのです。
 楽をすればいいのに、楽なことには楽しさがない。そこに皆が気付いたのですね。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 レクリエーションを企画するうえでは、便利さを優先するのは避けたほうが賢明です。「かわいい子には旅をさせろ」ではありませんが、むしろ不便な環境下で、手間暇がかかることを率先して取り入れてください。その手間暇は、あらゆる利便性を追求する現代社会と逆行しているように見えます。でもそのほうが互いに協力しあう気持ちや団結心は養われるものなのです。「準備に頭を使うのではなく、現場で体を使う」――これがレクリエーションの極意だと心得てください。楽しいイベントになるといいですね。
 
 
 さて、2つのご相談を取り上げてコミュニケーションについて考えてきました。この両者に共通して言えることは、人間対人間の関係を深めるためには、感情を無視するわけにはいかないということです。一方的に話を聞かせるのではなく、相手に話させることによって、話す楽しさや開放感をもたらす。不便な環境に置いて、仲間意識と共同作業の喜びをもたらす。こうした感情へのアプローチは、トップもしくは上司にとって必要不可欠の要素なのですね。ではまた来月、お会いしましょう。
 
 
 
 
 明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.35 
感情にアプローチして関係を活性化せよ 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

http://koyamanoboru.jp

(2015.10.7)
 
 
 
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事