B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

ノウハウ 明るい我らに仕事あり vol.34 社員の心に響く小山流査定術 明るい我らに仕事あり 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 
 こんにちは、小山です。もうすでに夏休みをとり終えた方も、これから遅めの夏休みをとる方もいることでしょうが、まだまだ暑い夏は終わりません。仕事でもプライベートでも、いい汗をかきたいものです。でも、部下を持つ上司や社長の皆様には、ひとつ頭を抱えそうな時期でもありますね。そう、査定です。年末賞与の評価査定が行われる時期になりました。そこで今回は査定にまつわる、経営者や上司の悩みをピックアップ。社員のマインドに効果的な査定方法はどんなものか、一緒に考えてみましょう。
 
 
【相談ケース67】 公平・平等に査定するには?
 
いつも拝読しております。1つ教えていただきたいことがあり、お便りしました。会社を設立して3年、ようやく社員も増やすことができ、今期から初めて賞与を出すことになります。そこで頭を痛めているのが査定の基準です。社員のモチベーションを上げるために、どのような査定が効果的なのでしょうか?(33歳 経営者・女性)
 
 

ダメ査定によくあるパターンとは

 
 今期から賞与となると、なかなか悩みどころでしょうね。査定において、1つだけハッキリ言えることがあります。それは、公平や平等という言葉をはき違えてはいけないということです。
 ダメ社長がよくやってしまうダメ査定で最もよくあるダメパターンは、誰に対しても一律の金額で支給してしまうこと。全部、一律にしてしまうのですね。うまくサボって手抜きをするのが得意な社員でも、一生懸命まじめにやっていて勉強熱心な社員でも。「そんなえこひいき、ないでしょ?」と思われがちですが、実はそのようなケースがたくさんあるからこの世は恐ろしい。
 そもそも社員から嫌われたがる社長はいません。良く思われたい、敬意を持たれたいと思うものです。そんな心理が働いて、社員から文句が出ることを面倒くさがるわけです。賞与が多かった人は文句を言いませんが、自己評価より少なかった社員からは不満が出ます。「なんでこうなんですか」と。いくらこっちがそれなりに考えて査定していても、です。そうなるのが面倒くさいなら、一律にしてしまったほうが手っ取り早い。この逃避心理がダメ査定のスタートなのです。
 他には、こんなダメ査定も。給与3ヶ月ぶんを出すのではなく、そもそも賞与総額を減らして、会社の利益にするのです。そうすれば社員間では平等だし、そもそも賞与に期待しなくなるので、不満も出ないだろう…。「いくらなんでも、それはないでしょ」とお思いですか? それがあるからこの世は恐ろしい(笑)。社員は損をしているわけで、当然モチベーションなど上がるはずもありません。
 つまり、公平や平等という言葉をはき違えると、逆効果になってしまいかねないのです。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 本当の意味で公平であり平等であるというのは、チャンスを平等に与え成績によって公平に評価を行い、差をつけることです。甲子園を目指す高校球児たちには、全て平等に甲子園出場権をかけた県大会予選というチャンスが与えられます。そこで結果を出せた学校が甲子園に行くことができる。自分たちの出す結果によって決まってくる、実に平等なシステムです。社員というものは基本的に楽をして高い給料をもらいたがるもの。それに流されて、「公平・平等」の意味をはき違えてはいけません。
 
 
 
【相談ケース68】 初めて査定を任されたが…。
 
小山社長におうかがいします。弊社は20人ほどの規模の小さな会社です。これまで毎年、社長が賞与の査定を行ってきましたが、レベルアップのためにと、今期から中間管理職の社員に査定業務が任せられました。まさに私がその役割を担うことになります。ただ、社長が定めた査定ルールはあるものの、どうもそれが正しいものには思えず、悩んでいます。より幅広い目を持って査定をするべく、小山社長の査定方法もぜひご教授ください。(42歳 会社員・男性)
 
 

固定観念のある査定はダメ査定

 
 かわいい部下を査定するわけですから、力も入りますね。いいでしょう。まず覚えておいていただきたいのは、「固定観念を持つな」「半期の結果だけを見ろ」という2つです。
 ダメな会社の査定者は、固定観念をひきずったまま査定をしてしまうことがよくあります。「こいつは頑張って結果を出しているけど、5年前に大きな失敗をしたな。イマイチ信用できない」など、個人的な思い込みや固定観念が、その人の実力を見る目を曇らせてしまう。人間が人間を見るのですから、どうしてもそうなりがちです。
 しかし、それではまともな査定になりません。あくまで評価はこの半期の結果でのみ下されるべきです。麻雀と同じで、半荘が終わったらそこで全てが清算され、次の半荘はまったく新しい場にならなくてはいけないのです。
 また、社長がつくったルールについては、問題があれば指摘すべきでしょう。あなたの会社が幸いなのは、ルールそのものはあることです。ルールに不満があれば伝えればいい。それは問題意識の表れであり、実際に部下を評価するのはあなたたちですから、しかるべき提言になるでしょう。
 ただし、ルールを否定するだけで代案を持たないのはよくありません。自分たちで仕組みをつくって、それを啓蒙から実施まで責任を持って動かすという気概を持って提言しましょう。新しい案が会社にとって利益を生み出すものであれば、社長もそちらを採用するでしょう。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 このケースは、部下だけでなく社長自身も胸に刻んだほうがいいですね。仮に社長自ら査定をする場合でも、いい社長は社員の評価を直属の上司である人物に聞くもの。ダメ社長は、自分だけの思い込みで固定観念を外さずに判断し、査定ルールづくりにおいても、自分が定めたルールが正しいと信じて曲げません。これでは会社に未来はない。大事なのは、正しい正しくないにかかわらず、ルールそのものを社員たちがどう良く変えていくか。経営者たるもの、そこを見ているべきです。
 
 
 賞与に限らず、査定において社員たちは「まな板の上の鯉」のようなものです。しかしこの査定をきちんと公正な立場で行えれば、社員たちのモチベーションや会社への思いはがらりと変わってきます。そうした信頼感を得るためにも、評価査定は簡単に考えず、しっかりと扱ってあげたいものです。ちなみに、武蔵野の場合、毎年最低評価をとった社員は、だいたい3年で辞めていきます。評価査定をきちんと運用すれば、優良な社員が自然に残ります。そして、彼らはやがて会社の成長に欠かせないファクターになってくれるのです。
 
 
 
 
 明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.34 
社員の心に響く小山流査定術 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

http://koyamanoboru.jp

(2015.9.2)
 
 
 
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事