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ノウハウ 明るい我らに仕事あり vol.33 社長の器の中には何が入るか? 明るい我らに仕事あり 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 
 こんにちは、小山です。毎日炎暑が続いていますね。こんな時期においしいのがそうめん。皆さん、そうめんを食べる時、どのような器を使っていますか? ガラス製の涼しげなものもいいですし、木桶に氷ともみじの青葉を添えるなんて趣向も素敵ですね。器が良いだけで、味もぐっと引き上げられるように感じられます。実はビジネスも同じ。社長の「器」次第で、いい会社にも悪い会社にもなるのです。そこで今回はこちらの相談から。
 
 
【相談ケース65】 いい社長ってどんな社長?
 
小山社長、お初にメールをさせていただきます。実は、この夏から一念発起して新しい会社を立ち上げることになりました。準備等々もだいぶ終わり、9月から本格始動する形になっています。そこで、敬愛する大先輩・小山社長に、一度喝を入れていただいて己の覚悟を改めたいと存じます。小山社長がお考えになる、いい社長とはどのような社長でしょうか。(31歳 経営者・男性)
 
 

会社のためにお金を使える社長になれ

 
 敬愛するとまで言われてしまったら、教えないわけにはいかないですね(笑)。
 端的にお答えしましょう。いい社長とは、会社のためにお金を使い、未来へ投資できる人。そしてお客様と時代の変化に合わせてギアを変えられる社長です。
 個人的なお金の考え方で美徳とされるのは、節約上手で借金がない状態ですね。でも会社経営においては、借金を未来に向けて上手に使える人が優れた経営者と言えるのです。ケチな社長はまずその時点で失格です。
 例えば、新しい機材を導入するかどうかの判断が求められるとします。古い機材は、壊れていないし、まだ十分使える。新しい機材を導入すると、仕事の効率やコストは今までよりは良くなるけども、それなりの出費になる。さて、どうするか?
 いい社長は、ここで「導入する」を選びます。一見、「まだ使えるのにもったいない」と思われるかもしれません。でも実は節税対策になったり、効率アップで新たに時間や社員の可能性を生み出すことができる。それが優れた経営者の目なのです。
 なお、お客様と時代の変化に合わせてギアを変えるというのは、「意思決定が早く志向が柔軟である」と言い換えられます。ダメ社長は往々にして「正しい意思決定をする」という意識に縛られて判断が遅れますし、自分の決定に固執して頑固になりがちです。決定が正しいかどうかを決めるのはお客様。意思決定したものをお客様が受け入れて初めて「正しかった」という評価になるのです。それがわかれば、考え方を変えるのはたやすいですよね。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 いい社長になるには、あくまで自分のことより会社や社員にお金を使う人であろうとしなくてはいけません。業績が良くないのに高級なクルマに乗っていたり、会社が利益を上げていないのに高級ブランド品で身を固めていたりと、お金を社員のために使わず、自分にしか使わないような人は論外です。そんな社長には誰もついてきません。(もっとも清貧を貫きすぎて窮屈になってしまうのも考えものですが。)社員や取引先、または関係者は、社長のそういうところをよくチェックしていますよ。
 
 
【相談ケース66】 中小企業に人事部は必要?
 
今回は、人事のことで相談があり、メッセージいたしました。弊社は決して大きくない会社で、社員数は約80名です。今年から新卒採用を始めるにあたり、私一人ではまかないきれないので、専任で権限のある人事担当を設けるべきかどうか悩んでいます。御社は人事に関する部署づくりについてどのようにお考えですか? また新卒採用にあたって、売り手市場である今、どのような工夫で良い人材に注目されるようにしていますか?(58歳 経営者・女性)
 
 

中小企業に人事部はいらない

 
 80名ともなれば、人事について専任を置こうかどうか迷うかもしれませんね。でも、答えは「NO」です。今の御社の規模では、まだ置いてはいけません。社員数が100名を超えるまでは、人事部があるメリットなどほとんどないのです。
 たとえば古参の幹部を人事担当者にして、その人に人事権が集中すると、モンスター幹部になってしまうでしょう。要するに、社員たちが皆、その人の顔色だけをうかがって仕事をするようになってしまうわけです。 
また、中小規模での採用においては、やはり社長の目が最も重要なフィルターになるはず。そんな中、権限を分譲するのはいさかいのもとです。人事案をつくって実行しようとしたのに社長がダメだと却下したら、その人は仕事そのものを否定されたことになります。案を出させるのは構いません。でも、「決めるのはあくまで社長」というレベルに会社がいるうちは、専任という位置づけが不安定になりやすいのです。
 そしてもうひとつ、良い人材に注目される方法ですが、確かに今の就職環境は売り手市場で、学生は大企業に目を向けやすい状況にあります。そんな中、通り一遍のやり方をしても注目は集まりません。人がやらないやり方をしなくてはいけない。
 例えば武蔵野では、会社案内のメールをEメールでは打ちません。携帯電話番号に、直接ショートメールを打ちます。多くの会社はEメールにしますよね。でもそれだと他の企業の案内の中に埋もれてしまうんです。そこで、多少の料金はかかりますが、確実に開封されるほうを選んでいます。「誰も見ないけど無料」ということより、「お金をかけてでも確実に見させる」という効果のほうが大事ですからね。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 実は、このショートメール作戦は、全て私が総務部に直接指示をしたものです。人事を置いて裁量を渡してしまっていれば、作戦変更から実行までがスムーズに行かなくなっていたでしょう。採用のスピードも遅れ、結果的にいい人材が他社に流れてしまっていたかもしれません。ただし、規模が100名を超えたら、企業としての方法論がまったく異なってきます。そのあたりのことはまたの機会に。もしくは、武蔵野の経営サポートをお申込みいただければ、みっちりと指導して差し上げますよ。
 
 
 武田信玄が遺した有名な言葉に「人は城、人は石垣」というものがありますね。信玄が自分を支える優秀な部下を評した名言です。でも、その「人」もいいリーダーあってのもの。会社の未来に投資できる社長は結果的にうまく人を育てられるでしょうし、人事に関して適切な判断ができ、人を集められる社長は社員に安心感を与えるでしょう。社長の「器」の中に入ってくるのは、まぎれもなく「人」なのです。現役社長の皆さん、そうめんでもすすりながら、一度自分の器を品評してみてはいかがですか?
 
 
 
 
 明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.33 
社長の器の中には何が入るか? 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

http://koyamanoboru.jp

(2015.8.5)
 
 
 
 

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