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ノウハウ 明るい我らに仕事あり vol.30 中小企業ならではのグローバル戦略 明るい我らに仕事あり 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 
 こんにちは、小山です。風薫り、新緑がまぶしくなり始める5月、いかがお過ごしでしょうか。外回りがある方などは、適温の中、それなりに成果も上がっているのではないでしょうか? 人間、成果が上がり、余裕ができると視野が広くなっていきます。普段は目の前のことで精いっぱいでも、余裕がある時は世の中を広く見渡せるもの。そこで、今回のキーワードは「グローバル」です。一段上のビジネスパーソンになるために、国内だけでなく国外への対策もしっかり身に着けておきましょう。
 
 
【相談ケース59】 海外から日本に拠点を戻す?
 
初めまして。弊社は雑貨の製造業を営んでおります。十数年前にアジア数ヶ国に工場を建設し、現地労働者を雇用していました。しかしながら、近年現地の生活水準、給与水準が上がってくることで、海外生産のメリットが薄まっているところなのです。国内生産に戻すべきだろうか、それとも海外中心にしたほうがいいのか。小山社長はどのように現在の海外情勢をご覧になっておられますか。(59歳 経営者・男性)
 
 

重要な技術は国内へ戻すべき

 
 おっしゃる通り、近年では現地の雇用環境や生活水準に変化が起きてきていると言われています。それはそれで文化の成熟が見られるわけですから、喜ばしいことなのでしょうが、経営者としては悩ましくもありますね。
私としては、こうした変化に伴って、次のような考えを持っています。「高度な技術および技術者を必要とするものは日本に戻し、それ以外の場合で海外拠点を活用する」。
 なぜこのように考えるかには2つの理由があります。1つめは、現地に高度技術を置いておくと、技術を盗まれる可能性があるということ。日本が技術大国であることは今も昔も変わりません。どこの国とは言えませんが、平気で技術を盗んで転用するお国柄もあります。そうさせない意味合いで、高い技術を要する製造がある場合は国内に戻したほうがいいでしょう。
 2つめは、高い技術や特殊な技術は高く売れるため、現地に持っていく必要がそもそもないということ。薄利多売の商品ではないはずですので、国内生産でも十分に利益が出るようにできるはずです。
 日本は昔から技術を守る術を身に着けてきました。例えば毎年年度末に行われる各地の道路工事。実はあれも税金の無駄使いに見えて、工事技術の維持・保護という側面から見ると不必要なものではありません。伊勢神宮などで20年に一度、式年遷宮が行われるのも、宮大工の技術を継承して守っていくためでもあります。つまり、庇護管理できる場所に技術を置いておく発想が重要なのです。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 技術は会社の宝です。そのかけがえのない技術力をさらに磨くためには、重要な商品については国内へ戻すことをお勧めします。もちろん採算的に国内工場でまかなえない部分もありますので、優先順位をどうつけていくかが肝心ですね。ただし、各社がこのような動きをしはじめたら、国内で技術商品を扱う場合、生半可な技術では通用しなくなるはずです。それも企業の成長にとっては良い刺激になるのではないでしょうか。
 
 
 
【相談ケース60】 外資・大手への防衛策は?
 
小山様、いつも拝見しております。1つ質問させてください。私は現在大学院生として国際経営について研究しています。研究テーマの1つに「外資参入を受けての国内企業の防衛策」がありまして、それについて小山社長はどうお考えでしょうか。業種によっては海外企業の市場参入が著しく見られますが、外資、特に大資本の波状攻撃にあった場合、どんな防衛策が有効となるでしょうか。(25歳 大学院生・男性)
 
 

同じ土俵で戦ってはいけない

 
 他国の市場に参入してくるくらいですから、該当する外資の大部分が資本力の高い企業であると仮定しましょう。すると経営者の立場からすると、案外シンプルな答えが出てきます。外資ならびに大資本企業の市場参入で困るのは、中小企業の皆さんでしょう。その社長の立場であれば、「同じ土俵に上がらない」ということが最善でしょうね。小学校1年生と社会人が同じ土俵に立って、まともな相撲が取れるわけがないですから。
 そもそも大資本が入ってくるような市場は、かなりオープンな市場ということになります。資本投下に対して相対的な売上が見込めないところに、彼らはそもそも参入しませんからね。そこまでは、あなたも大学や院で勉強なさっているので当たり前にご存じでしょう。つまり私の考えは、先程の小学生と大人に当てはめると、「大人では狭くて通れないけども、小学生なら通れる抜け道を探す」ということです。そこで狭く深く戦えば勝てるはず。
 これは、今までの経験則を無視して、まったく新たに新事業に名乗りを上げるということではありません。例えば、携帯電話のマーケットは、大手数社が独占している状態です。そこで携帯電話“販売”をしても勝てないのは誰の目にも明らかですよね。でも、仮に利用技術という抜け道を探してみるとどうでしょうか。利用技術は、お客様がより利便性を感じられるようにするサービスの一部です。そのサービス分野の中で、自社の強みを生かしてニッチなエリアを確保できるようにする。大手はお客様一人ひとりの声を拾ってなどいられませんし、拾っていても割に合わないでしょうが、中小企業はその声が生命線になることがしばしばあります。それを武器にするのです。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 日本人はお客様目線をわかっている民族です。お客様に「何か困っていることはないですか?」と尋ね、そこで返ってくる返事を商品性に反映させる。この感覚は日本人には常識的にわかることですが、外資は意外に、そこのところが深くわかっていないケースが多々あります。自分たちだけしか立ち入れない隙間を見つけ、そこで不満や不便を解消するサービスを展開する。これが小資本企業の生き残る道でしょう。
 
 
 皆様の中にも、海外展開をなさっている企業の経営者や幹部リーダーは何人もいらっしゃるでしょう。ビジネスを進める上で、海外資本や海外文化の壁に直面することも少なくはないと思います。その時に、今回のコラムを思い返してみてください。技術にせよ、お客様に対するマインドにせよ、日本人ないし日本企業には誇るべきものがきちんとあります。グローバルの流れや、国際情勢の変動だけに一喜一憂せず、今一度、自分たちの手のひらの中にあるものをしっかりと見てください。ではまた来月お会いしましょう。
 
 
 
 
 明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.30 
中小企業ならではのグローバル戦略 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

http://koyamanoboru.jp

(2015.5.6)
 
 
 
 

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