こんにちは、小山です。いよいよ4月、多くの会社が新たな年度をスタートする時期ですね。春になると、人は何かを変えようとします。仕事に対する気持ちを引き締めたり、環境を変えてみようとしたり。それはそれでとても大切なことですが、気持ちを新たにしていくにも作法というものがあります。頭の中で「春だから気分一新、いろいろと環境を変えてみよう!」と思っているだけでは前に進みません。そこで今回は、「小山流メンタルの切り換え方」をお届けしましょう。
【相談ケース57】 社訓を浸透させるためには?
小山社長、いつも拝読しています。今回、お便りしたのは、社訓についてです。この春から、全社一丸となれるよう、社訓を定めました。ところが、新年度オリエンテーションできちんと説明したのですが、どうも社員にはピンと来ていない様子です。社訓など、今の若い世代にはあまり必要がないものなのでしょうか・・・。(57歳 経営者・男性)
社是・社訓は文化の種
企業理念にしても社是・社訓にしても、紙に書いて張り出せば、どこの会社だってそれなりの格好はつくでしょう。しかし、そこに書かれた内容を社員が理解していなければ、床の間の掛け軸のように、ただの飾り物にしかなりません。それよりも大事なのは、会社の文化です。文化をつくるために社是・社訓を利用すると考えてもいいほどです。
社是・社訓は、会社を代表するあなたが、過去の経験にもとづいた理想の業務のあり方を言葉にしたものです。人生の体験が込められている。したがって、どの社是・社訓も奥は深いはずなのです。それだけに、社員に何度も説明していかなくては伝わるはずがないのです。ただ飾ってあるだけだったり、さらりと説明しただけでは、社員たちはその奥行きを思い知ることはないでしょう。
実は武蔵野でも、最近、社是を説明する機会がありました。本部長がオリエンテーションで経営理念の解説をしたいということで、こと細かく教えたのです。すると「そういう意味だったんですか!」と入社19年のベテランが驚いていました(笑)。どんなにいい社訓があってもトップがしっかり解説してあげないとこういうことになりかねない、と私も学んだものです。「これくらいわかっているだろう」というトップの思い込みから説明が不足すると、社是・社訓は形骸化してしまいます。そうさせず、社員の中にしっかりと根付けば、やがて文化になる。社是・社訓は会社にとって企業文化の種なのです。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
文化を育むために、丁寧に社是・社訓を説明してあげてください。もっとも、それができなければ即ダメな会社だとも言えません。社是・社訓がなくても伸びているところはあります。ただし、自社にそれなりの企業文化を築き上げ、長きにわたってその文化を大事にしていこうと考えるならば、社是・社訓から社員育成を始めてみるのもいいでしょう。
【相談ケース58】 事務所のレイアウト変更で気を付けることは?
小山社長、こんにちは。新年度がスタートして、オフィスのレイアウトを替えようかと考えています。ただ、大きな会社ではなく、数名程度の小さな会社ですので、「してもしなくても同じかな」と思うこともありまして。レイアウトを変えることによって業務効率が上がったりすることもありますか?(32歳 経営者・男性)
まずは形を変えてみる
結論から言えば、社内レイアウトを変更することによって、最終的には業務効率が上がることになるでしょう。例えばいつも北を向いて仕事をしていた環境を、南向きの配置にしてみる。それだけで社員の士気が上がるのは間違いありません。
理屈はとてもシンプルで、見ている景色が変われば、自然に気分が変わるんです。それだけ。単純です。単純ですが、形が変わらないことには心が変わる可能性すらありません。気持ちを変えたいなら見えている風景を変えること。それ以上もそれ以下もありません。
たとえば、若いカップルが結婚式当日を迎え、披露宴会場に向かうとしましょう。会場までは私服で行くでしょう。ところがその数時間後には、シャツにジーンズ姿から、男性はタキシード、女性はウエディングドレス姿で高砂に座ることになる。それで気分もそれなりになる。着ているものが変われば気分が変わる典型的な例ですね。
レイアウトを変えるというのはこれと同じことです。なぜ変更するか、どのように変更するかは二の次、三の次。「変わった」という事実が重要なのです。
ただし、変えるにもルールが1つ。みんなが壁を向いてしまうレイアウトはいけません。これはコミュニケーション面で問題が出てきます。できれば人と向き合うレイアウトから始めたいですね。別のパターンとしては、教室形式のレイアウトもおすすめです。1ヶ月ごとに一番前の列の人が最後列に行くなどすると、もっと変化をつけられますね。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
「気分一新」とは、形を変えることから始まります。もしそれで気分や心の持ちようが変わらなければ、あれやこれやと考える前にまた変えてしまえばいい。むしろ1つのレイアウトに固執するよりも、こまめに変えるとそれだけこまめに意識が切り替わるので、仕事のメリハリもつけやすいはずです。人事制度にかこつけて新レイアウトを試させるのは社内に刺激を与える一つの手ですよ。
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今回は、春ならではの「思考」と「気持ち」の切り換えについて、相談に応じました。ロング、ショート、それぞれのスパンでメンタルに効く回答ができた気がします。土台となる企業文化を育てることや、機を見て「気」を入れ替えることは、会社の雰囲気を管理するうえで欠かせない工夫です。ただし、気分を変えただけ、やってみただけで満足してしまってはいけませんよ。どんなにいいきっかけも、きっかけはきっかけ。ゴールではありません。それを忘れないでくださいね。
明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.29 春のキモチはこう引き締める
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://koyamanoboru.jp
(2015.4.1)