こんにちは、小山です。3月は企業では決算月にあたるところが多いでしょうし、個人事業者においては確定申告が大詰めを迎えますね。皆さん、帳簿とにらめっこしている日々でしょうか。企業・個人ともに、事業をやっていれば数字というものは必ずついてきます。事業をしていなくても家庭では妻が家計のやりくりをしていたり、夫は小遣いをやりくりしていたりと、「数字」は非常に身近なもの。そこで今回は、「数字」にまつわるご相談をまとめてみました。まずはこちらから。
【相談ケース55】数字に弱い部下をなんとかしたい
初めまして。本日は数字と人材の上手な扱い方を教えていただきたくてお便りしました。うちの若手社員はどうにもプレゼンが下手なのです。うまくいくようにと私もたくさん資料を用意し、数字的な裏付けをしやすいようにサポートしていますが、それらを活用できないのです。どのように指導すべきか、迷っています。(34歳 会社員・女性)
数字の体験領域を意識する
ご質問の中に、ひとつ気になるフレーズがあります。「たくさんの資料を用意」とありますが、そこにはどれだけの量の数字が含まれていますか? 「数字的な裏付けをしやすいように」ともあるので、おそらく膨大な量の数字が、山のように入っているのではないでしょうか。これは、率直に言えば、上司であるあなたのサポート方法そのものが間違っています。
実は人間というものは、数字にせよ何にせよ、情報がある一定の量を超えると処理できなくなります。キャパシティオーバーになり判断ができなくなるのです。企業でも従業員が3500人以上になると、1人ではマネジメントできません。
もちろん人によって情報処理能力や技術には差がありますが、基本的に若手社員は、とりわけ能力も技術もないと思っておくほうがいいでしょう。つまり今のあなたができる情報処理と同じことを部下に求めてはいけないのです。
ではどうしたら、彼らが機能しはじめるか。彼らの実力に合わせた数字、情報量にセーブしてあげてください。まずはそこからなのです。
また、人には数字の「体験領域」というものが存在します。つまり、扱ったことがない数字が目の前にあると、その数字をどう扱えばいいかわからない。わかりやすい例で、たとえば販売促進のために社員に1億円の予算を渡し、「これで好きなように販売促進企画を練れ」と命じたとしましょう。すると・・・まず使えません。使う方法を知らないからです。これは実際に武蔵野であった話ですので間違いありません(笑)。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
大事なのは、その人の身の丈に見合った数字から与えていき、だんだんと大きな数字を処理できるように仕向けていくこと。小学生にいきなり100万円を与えても、おろおろするだけです。例えるなら10円から50円、さらに100円、500円と小遣いをアップしていき、お金の使い方を教えるようなイメージです。そうしていけば、次第にたくさんの数字を駆使してプレゼンをまとめられる社員に育つはずです。
【相談ケース56】税理士とお付き合いするポイントは?
こんにちは、小山社長。当社は大きな企業ではないので、経理関連はすべて社長である私が行っています。でも、昔から算数や数学が苦手で、自分では大変過ぎるので税理士さんにお願いしたいと思っています。でも、どのような税理士さんがいいのかちっとも見当がつきません。いい税理士の見分け方を教えてください。(28歳 経営者・男性)
ダメ税理士はここで見分けろ!
本来社長が数字に弱いというのは考えものですので、あなたにもしっかりと経理の勉強をしていただくという前提でお話ししますね。
付き合ってはいけない税理士は、勉強意欲の低い税理士です。反対に、経営者の考えや心情を理解するため、また企業の本質というものを理解するために経営を勉強している税理士は、いい税理士だと言えます。
ダメ税理士に相談するとこんなことが起こります。あなたが銀行からお金を借りるとして、銀行から「担保をつけてください」と言われた。ここでダメ税理士は「それは一般的だからいいじゃないですか」と返してきます。この一言で、もうダメダメぶりが露呈しています。
「一般的だから」を根拠にする税理士は、自分が勉強していないから、一般論を持ち出すしかないんです。経理をちょっと勉強すれば学生でも言えるようなことしか基準にできないのでは、話になりませんね。
このような一般論だよりのダメ税理士が跋扈する理由は、税理士事務所の在り方にあります。税理士事務所は資産というものを持ちません。パソコン1台、机1台、あとは電話があればできる仕事ですから。でも企業には、大なり小なり資産があります。大きい企業ならば土地や自社ビル、社用車に設備器材・・・。もうおわかりですね。税理士には「経費」を扱った体験はあっても、「資産」を所有し、活かした体験はないから、企業を率いる者の心理がわかるほうがそもそも不思議なのです。ですので、経営者というものを「理解しようとしている」という誠実な姿勢が見えるかどうかがジャッジポイントになるでしょう。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
税理士と面談をする時、どんな本を読んでいるか聞いてみてください。そこで経営の本が多く出てこない税理士は即失格。そして面談日時などを決める際のメールや電話のレスポンスの早さもよく観察しておいてください。意思決定が早い、対応が早いとポイントアップです。最終的に大事なのは、経営全体のことではなく、あくまで経理業務部分だけの相談にとどめること。経営者が経営全体を相談するに足る相手は、経営者しかいませんよ。
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今回、数字について語らせていただきましたが、けっこう多くの人が身につまされる話だったのではないでしょうか? 数字は甘く見てはいけません。もっと言うと、数字の向こう側にある本質をしっかりと見ることが大事なのです。人間、いろいろな経験を経て成長していくものですが、数字も「体験」して初めて扱えるものになっていきます。一度、じっくりと数字というものについて考えてみてください。その時間が、あなたと数字の関係を向上させていくはずです。
明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.28 数字の向こう側を見極めよ
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://koyamanoboru.jp
(2015.3.4)