こんにちは、小山です。残暑が厳しいですが、街中を見ると、子どもたちも夏休みを終え、はりきって学校へ行っています。大人たちも負けないよう、がんばっていきたいものですね。ところで「がんばる」という言葉を辞書で引くと、「困難に打ち勝って我慢してやり抜く」といったストイックな意味が出てきます。歯を食いしばって、血と汗と涙にまみれて結果を手にする。そういう美徳もありますが、それだといたずらに疲れるだけ。仕事はスマートにこなしたいものです。今回のテーマはまさにそれ。さっそく始めましょう。
【相談ケース43】 整理整頓にどこまで口を出す?
初めてお便りさせていただいています。都内で中小企業を経営する者です。一つ教えていただきたいのですが、武蔵野様では小山社長自らオフィスの清掃を細かくチェックされていると聞きました。そこまでして職場の環境管理に心を配るのは、どんな効果を期待してなのでしょうか。(59歳 経営者・男性)
不要な時間をカットしていく
おっしゃる通り、株式会社武蔵野では、月に一度「環境整備」と称して社内の点検管理を行っています。私が全拠点を回り、「整理・整頓・清潔・礼儀・規律」をチェックする際に特に見るのは、しかるべき場所にしかるべき物が収まっているかどうか。実は、掃除が行き届いているという意味でキレイかどうかを調べているわけではないのです。もちろんキレイであるに越したことはありませんが、それよりも、決められた物が決められた場所に収まっていることによって、それを必要とする人が探し回らなくてよくなるということが大事です。
置き場を決めると、たとえば資料一つとってみても、「探す」という不必要な要素をカットできます。一つの物のために何十分も時間をかけて探し、また探しを繰り返していると、本来業務に当てられるはずの時間が目減りしてしまいますよね。その効率の悪さが業績悪化の引き金になってしまうのです。
余談ですが、私は自分の持ち物を入れる場所をすべて決めています。右のポケットには小銭入れを入れ、電車の切符は左のポケットに入れる、鍵は必ずこの場所に置く、などです。よく家を出るときに携帯電話を忘れる人を見かけますが、あれも携帯電話の置き場所を固定していないからそのようになるのです。私の場合、携帯やタブレットは鞄の中に入れたまま、コンセント近くに鞄ごと置いて充電するように決めています。そうすると、どんなに急いでも、鞄を忘れて外に出ることはまずありませんから、必然的に携帯電話も忘れないのです。
大事なのは整理整頓です。雑然としたオフィスは無駄の温床。無駄な時間を社員に背負わせるのは忍びない。私はそう考えているのです。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
整理整頓は、最も身近なところからできる「仕組み化」です。会社の中にある物や情報を整理整頓して整えておくことで、何かを忘れたり、なくしたり、探すのに時間を取られたりするリスクを排除できます。金銭ではなく時間・労力面でのコストカットをするという考え方なのです。
【相談ケース44】 効率アップは時間管理から?
いつも拝読しています。最近、上から業務の効率アップを求められており、部下にも徹底させたいと考えています。そこで、武蔵野様で実践されている業務効率化の施策で特に成果を上げているものがあれば、ぜひ教えてください。よろしくお願いいたします。(42歳 会社員・男性)
センスあるスマートな仕事ぶり
業務の効率をアップするために必要なのは、無駄な時間を省くことが一番でしょう。先の質問者への答えに似ていますが、ここで言う「無駄な時間」には2種類あります。一つめは“ダラダラ”パターン。二つめは、“仕事の順番間違え”パターンです。
ダラダラパターンをなくすためには、終わりの時間を決めることが大事です。仕事を始める時間は決めても、終わる時間を決めない人は多いです。だから一つの仕事に時間をかけてしまう。でも、丁寧にやることと時間をかけることは似て非なるものです。
実はこれについて、この夏、おもしろいことがありました。サッカーのワールドカップが開催された時期、生放送の放映時間がちょうど通勤時間帯にかかる試合が多くありましたよね。社員が試合の結果を気にするばかりでは仕事にならないので、その間、武蔵野では、あえて始業を一時間遅らせて、試合を観てから出社しても間に合うようにしました。すると、おもしろいことがわかりました。始まりが遅くなっているのに、皆が仕事を上がる時間は今までとほぼ同じだったのです。そこでわかりました。皆、1時間くらいはサボっていたんだな、と(笑)。
もう一つ、仕事の順番間違えパターンでよくあるのは、その時にできる仕事を優先してやっていないというものです。「これは電車の中で立ったままでもできるな。でもこれはオフィスじゃないとできないから、優先してやろう」と考えるのです。または「自分一人で完結できる仕事」「上司や部下がいないとできない仕事」など、仕事にも性格がいろいろあるので、自分のスケジュールにマッチした仕事の順番を考えてあげれば、ロスが防げるはずです。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
効率を上げるためには、部下に仕事を急がせるのではなく、周囲も無駄を省ける工夫をしたうえで、部下自身に促すことが大事です。たとえば夜間など、決められた時間になると強制的に電源が下りてPCが使えないようにするといったことも効果的でしょう。多少なりとも枷があるほうが、「工夫しなければ」という意識が働きます。それを刺激するとよいでしょう。
無駄がなくなるほうが、フットワークも軽くなります。人間の体でも、スマートな体つきの人は、歩いたり走ったりも軽やかです。同じように、スマートな知性を持っている人は、余計な物や余計なコトに余計なエネルギーをかけませんね。そしていつも穏やかで話しやすい。反対に、やたらと精神論や自分の成功を主張する人は、どこか暑苦しいし近づきたくない。仕事のやりかた一つでも、センスあるやり方を選びたいものですね。
ではまた次回!
明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.22 秋はスマートに仕事をこなす
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://koyamanoboru.jp
(2014.9.3)