こんにちは、小山です。いよいよ夏本番がやってまいりましたね。今月半ばを過ぎれば世間を盛り上げたサッカーのワールドカップも終わり、寝不足からも解放されるのではないでしょうか。と言っている間にお盆休みが近づき、「今年の休みは何をしようか」とソワソワ、わくわく。仕事が手につかなくなるかもしれませんね。ということで今回は、身も心もビシッと締まった夏を過ごすための心得です。ただでさえダレやすい夏、まずはこの質問から。
【相談ケース39】 夏のダレを防ぐには?
初めまして、小山社長。弊社は規模的には中堅にあたる企業で、私自身は営業部で課長職を務めております。例年、夏になると暑さのせいか、どうも成績が伸び悩みます。お尻を叩いて走らせたいところですが、ここ数年は40℃近い超猛暑日が続くこともあり、無理をして倒れられてもいけませんので困っています。こまめな声かけ程度では大した効果を得られません。何かよい叱咤激励の方法はあるのでしょうか?(38歳 会社員・男性)
しっかりした基準値をつくる
夏に気持ちがダレてしまうのは、これは人間の性でしょう。もっと言うと、夏だからというのではなく、そもそも人間はいつも奮ってばかりはいられません。隙を見てサボリたがりますし、できることならば仕事はしたくない。そういう性質の生き物なのです。
ではなぜ人間が仕事をしているか。それは食うのに困るから。社員で言えば、一定額の給料がもらえなくなると困るから働くわけです。つまり、「こうなったら困るでしょ」という基準値をつくれば、社員がダレることはなくなります。
武蔵野の場合は、その基準値は賞与の評価として厳密に定めています。成績によって賞与が上がったり下がったり、露骨に金額に出てしまう。評価は最上級のSS、次にS、そして一般評価のAから最低ランクのDまであります。Dになると、賞与はSSの4分の1ですから、とてつもなくみじめな気持になる。それが嫌だから、皆、自分を奮い立たせて頑張るわけなのです。
過去、一番下がったのは前回賞与が250万で次回の賞与が45000円だったケースですね。こういう実例を目の当たりにした本人はもちろん、話を聞いた他の社員も「これは・・・」と思わずにはいられないはずですよね。
ちなみに、武蔵野の賞与にはもう一つ法則があり、会社の業績がいい時は幹部優遇主義になります。逆に業績が悪い時は、新人や一般社員が優遇されて、幹部は「超」がつく冷遇になります。ですので、幹部だからといって、気を抜けないわけですね。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
どれだけやればどれだけ優遇されるか、またやらなければどのようになってしまうか、その基準をつくり部下に浸透させるだけで、彼ら彼女らのやる気は大きく変わります。むしろ下手な叱咤激励は「ウザい」と思われるだけ。ましてやそれが精神論だったりすると、逆効果にすらなりかねません。現在のポジションでつくれる基準値をしっかりとつくること。ここから始められてみてもいいのではないでしょうか。
【相談ケース40】 クールビズは本当に必要?
いつも楽しく拝読しています。我が社は従業員20名程度の小さな会社で、社内の雰囲気もとてもよく、家族的な会社だと自負しています。ただ、アットホーム感が強すぎるのか、服装について注意を促さないといけなくなるようなことが時々あります。いっそ制服にしようかと考えるいっぽうで、クールビズの風潮を見ていても、あまりビシッとさせても良くないかとも思い、正直迷っています。服装について武蔵野さんではどのように考えておられるのか、参考までに教えてくださいませ。(49歳 経営者・男性)
社内に服装文化をつくる
この質問をお受けして私が最初に思い出したのは、武蔵野の社長就任当時の状況でした。当時、営業で外に出ない時などの社員の服装は実に自由でして、中にはビーチサンダルで会社に来る者までいましたね。社内でそのような風潮ができあがってしまっていたので、服装をきちんとさせようにも、簡単にはいかない。文化というのは一度根付いてしまったら、そう簡単に変えられないからです。
そこで私は、たとえば男性であれば、ネクタイをつけてきたら5000円を給与にプラスするという「ネクタイ手当」を始めました。すると皆、小遣いが欲しいものですから、それまでサンダルにラフなシャツ姿だったのが、一丁前のスーツ姿でしゃあしゃあとやってくる(笑)。我ながら、なかなかのアイデアだと思いましたね。
では内勤の女性ならばどうしていくべきか。制服をつくるのも手ですが、一方的にトップが制服を決めてもセンスがどうのこうのと反発を食らうだけです。そこでお勧めは、彼女たちに一度つくらせてみることです。「会社が負担するから、好きなようにデザインを決めてみて」と振る。するとね、これがおもしろいように「できない」のです。
女性社員は服装に当然こだわりを持ちますから、自分のセンスに従っていいデザインを提案します。でも、センスも価値観もまったく同じということはありえませんから、社内で複数の意見が出てぶつかってしまう。で、まとまらないので、うやむやになっていく。でも、それはそれで大丈夫です。「自分たちで制服を決められないなら、日頃の服装をちゃんとしてね」というメッセージが残りますからね。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
大事なのは社内の服装文化をどうつくるか。上司が部下に対して「その服装は非常識だ」と言うのは簡単です。しかし、部下から「クールビズのこのご時世に、何を固いこと言っているんだ」と思われたらそこまで。それよりは、ひとひねりして、彼らが自主的に考えざるを得ない状況にさせてしまいましょう。そうやって社内に服装についての共通見解ができてくると、次に入ってくる社員は最初からそれを真似します。こうなればしめたものです。
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夏は楽しい時期でもありますが、人の気持ちはダレる季節です。年間を通じたバイオリズムでも、年度が変わって間もなくの勢いが影をひそめ、なんとなく仕事への集中力を欠いてしまいやすいタイミングです。「慣れ」は歓迎ですが、「慣れ」が「ダレ」に変わりそうな気配が見えたら、誰から見てもわかる対策をしっかりと立て、空気を変える必要があるでしょう。それで空気が良く変われば、会社にとって大きな経験的財産です。夏バテ、熱射病に気を付けて、夏を乗り切っていきましょう!
明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.20 「ダレ」「慣れ」をいかに制するか
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://koyamanoboru.jp