こんにちは、小山です。皆さん、ゴールデンウイークはいかがお過ごしでしたか? 有給をうまく使って長い連休をとった方もいらっしゃるのではないでしょうか。連休が明けたら、間もなく梅雨のシーズンに入りますね。天気がジメジメして気分が憂鬱になると五月病にもかかりやすくなります。こういう時期こそ、仕事面で成果を出して、夏の商戦につなげたいところ。そこで今回は、個人ないし企業の存在感を一段上げるアドバイスをお届けします。まずはこちらの質問からいってみましょう。
【相談ケース35】 営業のできる男になりたい
こんにちは小山社長。私はこの春に新卒で入社した営業マンです。部に配属されて1ヶ月。まだまだ先輩についていく見習いの状態ですが、自分でも新規開拓をしていかなくてはいけない時期になりつつあります。私のような新人は、とにかくがむしゃらに、当たって砕けろで売りまくらなくてはいけないと思っています。そこで何か営業力を高めるためのコツを教えてください。(22歳 会社員・男性)
営業の極意は“売り気”にあらず
新人らしい、はつらつとした、やる気に満ちた質問ですね。でも、新人ゆえの危うさというものが見えます。あなたは、とにかく猪突猛進でお客様のところへ突撃営業をかけようとなさっているのでしょうか? 勢いは大事ですが、一つだけ、考え違いをしないように気を付けてください。
まず、営業というのは、相手を説得することではありません。よくありがちな間違いが、売り気に走ってお客様の前で商品やサービスのセールストークばかりしてしまうことです。営業は「立て板に水」では決してうまくいきません。相手からすると、興味がないことを一方的に聞かされるのは時間のムダ。こちらがいかに流暢に商品やサービスの良さを説明できても、それが相手から求められていなければ、雑音以外の何物でもないのですね。
営業がうまい人というのは、お客様が困っている心配事、「嫌だなあ」と思っている不安事、面倒くさいと感じている厄介事を聞き出すヒアリング能力に長けた人なのです。「相手が困っていることがある」という事実と「解決改善のために、商品やサービスが役立つ」という結果をつなげられる人が、レベルの高い営業ができるというわけです。
これは男女関係でも同じこと。モテる人を観察していると、往々にして聞き上手です。男性ならば相手の女性がやってほしいことをわかっていると、女性は「自分のことをわかってくれて、包み込んでくれている」と感じられます。営業は「売る」のが仕事ではありません。「解決すること」が仕事なのだと心得てください。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
営業の必須条件は情報獲得能力です。相手の抱える問題を解決するためには、まず何で困っているかを知らなければ始まりません。もし解決策がわからなければ、周囲の先輩に方法を聞くなりするとよいでしょう。ちなみに、あなたのような新人が自分の頭だけで考えて物事をクリアすることはまず不可能です。考えるということは、過去に体験したことを思い出すことにすぎません。顧客の悩みを聞き、先輩や上司の経験をうまく引き出して解決につなげ、自分の信用にする。それが、あなたにとって現時点での「できる営業」と言えるでしょう。
【相談ケース36】 スポンサーになるべきか否か
小山社長、先日の投稿では経営コンサルタントの件で有意義なアドバイスをありがとうございました。おかげさまで経営も上向きになっておりますが、そこで、自社のブランドイメージを上げる狙いでも、社会貢献の意味からも、社会活動団体のスポンサーになることを考えています。ただ、初めての試みなので、どの程度の事業規模になればスポンサーになってもおかしくないのかなど、わからないところが多々あります。ご助言をいただけますと幸いです。(38歳 経営者・女性)
何をもって社会貢献とするか
会社が順調なようで結構ですね。素晴らしいと思います。また社会貢献への意識も企業の存在理由として大変有意義ですね。基本的には、事業規模がどの程度あるとか、年間売り上げがいくらあるとかは、スポンサードとは関係がない認識でよいでしょう。社長として、あなたがすべきだと思ったタイミング、内容でやればいいのですよ。
ただ、一つ私の考え方をお話しすると、スポンサーになることだけが社会貢献の道ではないのではないでしょうか。たとえば、雇用を促進したり、地域のイベントを応援したりするだけでも、十分に社会貢献になります。武蔵野の場合は、スポンサーになるよりは雇用創出を第一に考えていますので、今のご時世では珍しく終身雇用を貫いています。基本的には死ぬまで雇用することを一つの指針にしているのです。
また、地域のお祭りに社員を派遣して(毎年160名は派遣していますでしょうか)、地域そのものを盛り上げる活動をしたり、本社近くの駅前の清掃を(毎朝20分ぐらい)させています。地味ですよね。でも、これ、時間あたりの人件費に換算すると、かなりのお金がかかっているんですよ。しかも、活動によって直接ブランド力が上がるわけではない。
ただね、町の人たちはわかってくれているんです。「武蔵野さん、町のためにやってくれてるな」と。それが引いては、会社の信用につながっていることは間違いないですし、私はそれでいいと思っているんです。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
本当の意味での「ブランド力」とは、見栄えのいい印象や企業像をこしらえることではありません。単にお金を出してスポンサーという冠を得ることだけがブランドイメージアップの道筋ではないのです。大事なのは企業が、自社の社会貢献をどこにもってくるか、企業活動を通じて何を成していく意識があるのか。それを明確にすることが大事なのです。それは同時に、御社の理念になっていきます。この意識が全社で共有できたら、会社のレベルがまた一つ上がったと言えるでしょう。
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個人にせよ企業にせよ、一朝一夕で世間からの信用を得ることはできません。信用は積み重ねてできるものです。信用の土台なくして、個人も企業も成長はないでしょう。短期、中期、長期と目標の度合いは変われど、やはり何事も基本が大事です。足元をしっかりと固めて、中だるみのない仕事なり経営なりをしてください。ではまた次回!
明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.18 「できる営業」「できる企業」はどこが違う?
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://koyamanoboru.jp