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ノウハウ 明るい我らに仕事あり vol.16 経営者のお悩み整理整頓術 明るい我らに仕事あり 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 
 こんにちは、小山です。3月といえば、降り積もった雪が解け、春が間近に迫ってくる時期ですね。多くの経営者にとっては決算の時期にあたるのではないでしょうか。年度の総括をし、新年度から心新たに走りはじめたい――ところですが、現実はそう簡単に春の訪れを美談にはしてくれません。周りは問題が山積。どれから手をつけたらいいか、また、それらの問題を誰に相談したらいいかわからない・・・。そんな心のもやもやを晴らし、スッキリとした春を迎えていただくために、今回は経営者仕様の“お悩み整理整頓術”をお伝えしましょう。
 
 
【相談ケース31】 問題が山積しすぎて困っている
 
小山様へご相談があります。小規模ながら会社を営んでおり、おかげさまで丸10年を迎えようとしております。ありがたいことに社員も着実に増え、業績は上がってきましたが、ありがたくないことに社内の問題も着実に増えてきています。それなりに手を付けてはおりますが、抜本解決に至っていないように感じ、気が休まりません。小山様が経営者として問題を解決なさる場合、何をもって解決となさっていますか?(47歳 経営者・女性)
 

重きを断ち切る、それが「思い切り」。

 
 「問題がありすぎてしまう」―なるほど。では、まず経営課題を書き出してみてください。その課題に対して、対処ができている度合いに応じて「◎」「○」「△」「×」と4段階でチェックしてみましょう。できましたか?
 さて、ここからが大事です。「◎」「○」以外のことは、全て捨ててください。つまり、問題自体を放棄するのです。問題が生じているサービスや商品がどんなに大事に育ててきたものであっても、もう捨ててしまうのです。
 いささか強引に見えますが、これは問題解決のために重要な「選択」と「集中」というものです。たとえば旅行をするにしても、北海道と沖縄に同時には行けません。どちらかを選べば、どちらかを諦めるしかない。「でも・・・」とあなたはおっしゃるでしょう。わかります。経営者だからこそ、後ろ髪を引かれますよね。
 実は問題解決の最大の妨げになっているのは、整理の仕方の良し悪しではなく、この後ろ髪を引かれる思いです。あなたの会社が手がけるサービスが5つあったとしましょう。この5つそれぞれが問題を抱えていたら、個々に応じた戦略も5つ必要になりますね。でもそれだけのマンパワーがない、つまり追いつかなければ、急場しのぎしかできなくて当然です。
 これを解決するには簡単な話で、そのうち4つを切ってしまえばいいんです。そうすれば残る1つの問題に集中して対処し、解決方法を深掘りできます。
 これが「このビジネスもせっかくここまでやってきたのに」とか、「もしかしたらもうすぐ芽が出るかもしれない」などと思いを断ち切れないでいると、いつまでも泥沼から抜け出せません。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 思いは「重い」と書き換えてみてください。多くの問題に重りがついているから、問題に引っ張られて会社はどんどん沈んでいきます。その「重い」を断ち切ってみる。すると、軽くなるわけですから、浮上も早いでしょう? 重いものを断ち切ることを「思い切り」と言うのです。事業を前に進ませるのであれば、「思い切る」とは精神論の話ではないことをお忘れなく。
 
 
 
【相談ケース32】 退職を考えている社員を引き留めたい
 
小山社長、こんにちは! 私は今、数名の仲間と会社を立ち上げたばかりの新米社長として、悪戦苦闘の日々を過ごしています。そんな中、最近、ふと疑問に思うことが出てきました。社員は創業メンバーで、お互いの仲間意識も強いのですが、だからといって何でもかんでも相談していいことにはならないのかなと。実は、経営のことを社員に少し相談してからというもの、どうも社内の雰囲気が悪くなり、退職を考えているという話も漏れ聞こえてきて・・・。どうやれば引き留められるでしょうか?(26歳 経営者・男性)
 

経営はお友達ごっこではない

 
 おやおや、やってしまいましたね。その通りです。社長たるもの、簡単に社員に相談してはいけません。あなたがやってしまったことは、社長としては大変な間違いだったのです。でも、そこに気付けただけ、まずは勉強になって良かったとしましょう。
 なぜ社員に相談してはいけないか。これは社員が不安になるからです。たとえ会社が潰れそうな時でも、社員には夢を見させないといけないんです。それが社長の仕事なんですよ。
 武蔵野でも、こういうことがありました。数年前、過去最高売上、最高利益を誇った年度があります。でも、手元にキャッシュがない。いつも8000万円ぐらい置いてあるのに、4500万円しかなかった。フローのトラブルです。だから賞与がダウンということになりました。当然、社員は怒りますよね。だって過去最高売上、最高利益なのに賞与がダウンなんて話、納得できるはずがないですから。でもそこで「キャッシュがないんだ」と正直に言ってしまうと、「景気がいいのは見せかけだけだったのか」と不安がるのは必定です。そこで私は言い切りました。「夏の賞与を大奮発してやるためだ」と、もうニコニコしながら。明るい未来が待っているのが楽しみで仕方がないというふうに。
 それで社員は「なんだ大丈夫なのか。社長があんなにニコニコしてるんだから、そうなんだろう」と安心して、頑張って働いてくれました。大丈夫になるかどうか、わからなかったのにね(笑)。
 社員を不安がらせないのは社長の大事な役目です。それでも辞めてしまうなら、そのまま辞めさせればいいんです。人が入れ替わることは、会社にとって決して損ばかりではないですから。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 人の入れ替わりは社内を活性化するチャンスでもあります。経営はお友達ごっこではないことを、ここで理解しておかなくてはいけません。社長と社員、それぞれの立場で為すべきことの区別が明確に共有されれば、会社は大きく成長するでしょう。頑張ってください。
 
 
 いかがでしたか? 3月は卒業と同時に、ちょうど雪解けの季節です。雪は「溶ける」ではなく「解ける」と書きますね。今まで寒さのもとでなかなか解けきらなかった氷が解け、日差しが大地を暖める。昔の人は、冬の終わりと春の訪れを人生の問題の解決になぞらえて「解ける」という漢字をあてたのでしょう。皆様の周囲の問題も、見事に解けてなくなり、穏やかな春を迎えられることを祈っています。ではまた来月!
 
 
 
 
 明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.16 
経営者のお悩み整理整頓術 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

http://koyamanoboru.jp

 
 
 
 

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