小山です、こんにちは。いよいよ師走です。一年は本当に早いもので、もう年末の忘年会シーズンですが、合わせて新年の準備もしなくてはなりません。新年の準備といえば、まず年賀状ですね。でも私は、年賀状を書かないようにしています。その代わりに関係各位の誕生日を覚えておいて、誕生日カードを毎月書く。そうすると印象に残る度合いが違ってくるでしょう? 何事も、一つ工夫を凝らせば心に残るもの。そこで今回は年末の「工夫」と「心に残る」、この2点に関する質問に答えました。まずはこちらから!
【相談ケース25】 新年の目標、上手な立て方は?
小山先生、私は入社1年目の新人として、今年1年(まだ3ヶ月少々残ってますけど)頑張ってきました。職場にも慣れ、来年は2年生になるので、ますます頑張りたいと思っています。そこで先生、一つ教えてください! 12月ですから来年の目標を立てようと思っています。より仕事ができるようになる目標の立て方ってあったりするんですか? ちなみにぼくが立てようと思っているのは、3年以内に同じ部署のエースである8年目の先輩を抜くことです! 無謀ですかね?(笑)(23歳 会社員・男性)
ゼロに何をかけても答えは・・・?
まず先生はやめましょう(笑) 私はそんな大それた立場ではありませんから。
さて、目標の立て方ということですが、あなたに一つ質問です。簡単な算数ですよ。「0×α」、この答えは何になるでしょう? αにはどんな数字が入っても構いません。
そうです、「0×α=0」 ですよね。つまりゼロに何をかけてもゼロにしかならない。これは目標も同じことなんです。あなたはまだ1年目。会社のことをわかっているように自分では思いがちですが、限りなくゼロに近い。本当に“1”人前となって仕事をこなしていくのはこの先の話です。ですから、あなたが今、エース格の先輩を超えようと思うのは無謀な目標なんですよ。やってはいけません。
大事なのは 「自分に近しい年次で、参考となる先輩を見つけること」「その先輩の真似をすること」、この二つです。特に後者。「簡単だ」 と思うかもしれませんが、言うは易く行うは難し。ここで言う真似は 「そっくりそのまま」 という意味です。これがすぐできたら、それだけで私は天才だと思います。仕事に圧倒的な自信を持っていいほどの。
実は私も、昔は営業が下手でした。だから、まず 「この先輩のような仕事の仕方を覚える」 という、目標の先輩を決めました。少し上の年次の先輩です。そして彼に付いて仕事を教えてもらっていたんです。昼も夜も、コバンザメのようにひっついて、カバンから靴から何から、名刺の出し方や、その人がオリジナルでつくった営業ツール (パンフレットやリーフレットのようなもの) まで、全部そっくり真似した。それで見違えるほどに成長できたことを経験しています。
ではここで、今回の 「小山昇の結論」。
経験がないうちに、自分一人でああだこうだと工夫をしても、結果的に空回りしかねません。また目標を高く持ちすぎても足を滑らせます。階段を一気に10段跳びできないようなものです。大事なのは、自分に近しい年次、世代の目標を見つけ、その人の真似をすること。まずはいろんな先輩から話を聞いて、「目標」 となる人を絞ってみてください。あなたが自分で工夫する新年の目標はそこから先の話です。
【相談ケース26】 小山流必勝トーク術を教えて
初めて質問を出させていただいております。年末にさしかかり、弊社でもお得意様への挨拶回りが予定されています。今年の営業成績はふるわなかったため、この挨拶回りでなんとしてもお客様の心をつかみ、来年へとつなげたい考えです。そこで小山社長に教えていただきたいのが、がっちりとお客様の心をつかむトーク術です。ぜひ小山流の必勝トーク術をご教授くださいませ。(26歳 会社員・女性)
立て板に水のトークは愚行なり
せっかくのお申し出ですが、私は 「必勝トーク術」 は持ってはおりません。あなたはおそらく、どこかで私の講演やDVDをご覧になったのでしょうか。私がよくしゃべるという印象をお持ちのようですね。いやいや、その印象は間違ってはいませんよ。人としゃべるのは嫌いではありません。ただし、私がお客様に対して武器にしているのは 「しゃべる」 ことではありません。私がやっているのはその反対、「必勝ヒアリング術」 なのです。
お客様にとって大事なのは、私たちに対して要望を話すことです。よく、キレイな言葉を使って立て板に水のようにお客様に話して聞かせる人がいますね。でも、お客様は私たちの講演やトークショーを見ているわけではありません。自分たちの要望や希望にあなたがどれだけ耳を傾けてくれるか。そこにしか注目していないのです。
勘違いしやすいのは、お客様に自分の思いや商品の魅力を伝えようとしすぎることなんですね。「伝えないとお客様はわかってくれない。わかってくれなければ売れないじゃないですか?」 と思われるかもしれません。でもそこでしゃべってしまうと、お客様は引いてしまう。目的が明確になっていれば、きちんと戦術を選べるものなんですよ。
ではここで、今回の 「小山昇の結論」。
話がうまい人は、自分の話に酔ってしまいがちです。大事なのは人の話を聞けるかどうか。そこが相手の心に残るかどうかの分かれ目です。それができれば、男にも、女にも、お客様にもモテるんです。年末の挨拶回りに行く時、ふと聞いてみればいいじゃないですか。「何か行き届かなかった点はなかったでしょうか?」 と。そこでお客様から不満や要望をお話しいただけたら、それを解決していけばいいだけでしょう? 発想の逆転が大事ですよ。
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いかがでしたか? 「あっ! なるほどな、できていなかった」 と思われた方も意外に少なくないのではないでしょうか。同じような手間をかけるなら、より自分のためになる、より心に残ることを誰もが考えます。しかし、そのベクトルが往々にして間違っているケースが目立っています。冷静に、客観的に考えた施策にしてくださいね。
それでは、本年も大変お世話になりました。皆様、どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.13 ひと味違う歳末レベルアップ作戦
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://koyamanoboru.jp