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ノウハウ 明るい我らに仕事あり vol.10 VS離職者“退職バトル”必勝術 明るい我らに仕事あり 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 
 こんにちは、小山です。夏が過ぎようとしていますが、まだまだ残暑が厳しいですね。9月は一年の折り返し時期ですので、いろんな変化も起こりやすいもの。人の気持ちもそうです。月後半にもなると、切なさの薫る秋の気配を感じ始め、人間の心にも変化が生じます。そこで出てきやすいのが退職の悩み。今回はそんな退職が思わぬトラブルに発展してしまわないよう、少し経営者・管理職寄りの相談をまとめてみました。まずはこちらから。
 
 
【相談ケース19】 上手な辞職の促し方は?
 
いつも拝読しております。私も小さいながら企業を営んでいる身として、小山社長のお話にはいつも感銘を受けています。そこで折り入って相談をさせていただきたく筆を執りました。小山社長は、社員を退職させるとき、どのように話して退職させますか? 私の見る目がなくお恥ずかしい限りですが、どうにも扱いが難しい社員について、辞職させる考えでいますが、なかなかスムーズにはいかないものでして。ご経験談をお聞かせくださいますと幸いです。(54歳 経営者・男性)
 

文化と風土は社長より格上

 
 同じ経営者として、社員を大事にしたい気持ちもありますし、社員のことで困ってしまう気持ちもよくわかります。ただ、私の経験談で申し上げますと、社員を辞めさせる権限は社長にはありません。誤解を招かないように言うと、これは法律的な意味ではなく、社内文化・企業風土的な意味合いです。法律的にはもちろんしかるべき理由があれば解雇を通告することもできるでしょう。しかしながら、人の気持ちは法律のようには割り切れません。
 たとえば、業績の上がっていない人がおり、会社としてはその人に代わって、もっと優秀な人材を採りたいと思っていたとします。その人は業績こそ低いけれども、同僚たちから見たら、とても頑張って働いているように見えるかもしれない。そんな中で、「君、もう明日から来なくていいから」 と言ったとすると、「社長はあれだけ頑張っているあの人の努力を見ずに、簡単にクビを切るんだな」 と思われてしまいかねないリスクがあります。
 それが社内の文化や風土に悪影響を与えないようにするためには、どうしたらいいか? これは人事異動につきます。人事異動はクビではありませんし、被雇用者は受け入れる義務があります。株式会社武蔵野の場合は、「人事異動を拒否したら、給与や賞与がダウンする」 と明確にルールとして決まっているほどです。
 もしもその人事異動を不満として辞めるならば、それはそれで仕方がないことだと、双方割り切ることができるでしょう。もっともその場合は、さらに追加の駆け引きが必要になりますから、それを怠ってはいけません。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 退職後にバトルになるか否かは、いわゆる筋の通し方が重要です。辞めさせる社員の不満を募らせて、後々問題になったりしないように、また、同僚たちの目も意識して、彼らの気持ちの中に不審火やボヤ騒ぎを起こさせないように配慮しましょう。大前提となるのは、切り捨てではなく全体の最適化。もしかすると異動によって花咲く才能があるかもしれませんので、その見極めをしっかりと。
 
 
 
【相談ケース20】 辞めた後に無差別悪口テロ?
 
小山社長、初めまして。某企業で管理職をしております。実は、私の元部下にあたる女性が会社を退職後、困った行動をしているのです。と申しますのも、円満退職に見えたのですが、どうも退職の仕方に不満があるようで、現在の部下と連絡をとりあい、あることないこと吹聴しているようなのです。そのうち何人かは私や会社に対して疑心暗鬼の状態になっており困っています。現在は社員ではないだけに、どのように対処すべきか判断しあぐねていまして、何か良いお知恵はないでしょうか?(42歳 会社員・男性)
 

辞める前の駆け引きで鎮火

 
 大変難しい問題ですが、結論から先に言えば、時間が解決するまで待つ他はありません。その方が明らかに会社に対して妨害行為を働いているならば法的処置も考えられます。しかし、今回はおそらく、単に元同僚と食事なりお酒なりを楽しむ中で出てきた話に、現在の社員が感化されやすくなっている状態でしょう。こういう場合は、向こうがあきらめるまで待つしかないのです。
 しかし、こうした問題の原因を探るのは、今後のためによいことなので、少しお話しておきましょう。該当の元部下は女性のようですが、あなたは彼女が辞める際にどのようなやりとりをしましたか? もしかすると止めることなく「わかった」とあっさり言ってしまったりしてはいませんでしたか?
 実は、男性も女性も辞める場合のやりとりには一つの技術が必要なのです。相手が女性の場合は、最低5回は 「辞めてほしくない」 と慰留すべきです。本心ではそう思っていなくても、「あなたは大切な人だから辞めてほしくはない」 と言い続ける。基本的に辞意を表わした時、相手の決心は固まっていますから、覆すのは難しいでしょう。ただ、あっさり言われると腹が立ち、引き留められると優越感に浸りながらも意見を覆さない。人間とはそもそもそういうものなのです。
 これが男性の場合は、その気持ちを金銭的な価値のあるものに置き換えてあげると、恨みを買ったり、問題化したりしにくいはずです。退職金が出ない場合のほうが多いでしょうから、そういう時は有給休暇を全て消化させてやるなどすれば納得しやすいでしょう。
 
ではここで、今回の「小山昇の結論」
 
 勝負は試合が始まる前に大部分が決まるものです。雌雄を決するのは下準備。その下準備をしないで進んでしまうと、思いがけないトラブルに立ち往生してしまいかねません。部下の退職についても同様で、辞めることを認める前に、相手がスマートに辞めていけるよう、どれだけの準備を整えてあげるかがカギになるのです。それをふまえて退職相談に乗れるのが、真に優れた上司ではないでしょうか。
 
 
 駆け引きをすると時間的にも金銭的にも 「面倒くさい」 「なんだか損をしている気がする」 と感じやすいものです。そこで思い出してほしいのが 「損の道と得の道があれば損の道を行け」 という言葉。目先の利益や時間を大事にするのは人間どうしてもある傾向です。しかし、自分が損をしなくてはいけない時にいつでも損ができるように利益を上げておけるから、慌てず損ができる。その準備ができているかいないかが、企業、経営者、上司の器です。皆様が一回りも二回りも大きな上司として敬愛されるようになることを願っています。
 
 
 
 
 明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.10 VS離職者"退職バトル"必勝術
 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

http://koyamanoboru.jp

 
 
 
 

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