こんにちは、小山昇です。今年は桜の開花が驚くほど早くてびっくりしてしまいましたね。3月の下旬にはもう満開になっていて、このコラムが出ている今、かなり散ってしまってきていますね。桜が散る頃に、私はいつも思うことがあります。今年、新社会人になった人たちは、そろそろ、ある悩みにぶつかるだろうと。そう思っていたら、来ました、新人ならではの悩みの相談メールが。私は花見に忙しいので、本当はコラムなんか書いている場合ではないのですが・・・そんなこと言っちゃいけないか!(笑) というわけで、今月はこちらのお悩みから。
【相談ケース9】 新人の心構え、教えてください!
小山社長、初めまして! 今年から新社会人になり、一人前になったのでがんばっていきたいと思います! というか、相談というわけではないんですけど、新人として気を付けないといけないことって、どんなことなのかなあと思って、教えてもらいたくてメールしました!!! マナーとか名刺の渡し方とかは研修で習ったんですけど、心構えのようなものを教えてください。よろしくお願いします!(22歳 会社員・男性)
仕事は半人前、給料は一人前
大変元気がいい文面ですね(笑)。やる気にも満ちているようで、けっこうなことです。よろしい、教えて差し上げましょう。
あなたのメールに書かれていた内容で一つだけ気になることがあります。それは「一人前」という表現が使われていること。はっきり言いましょう。「一人前になった」? あなたが今一人前なのは給料だけです。
新人というものはえてして、「仕事は半人前、給料だけは一人前」と言われます。会社に入って名刺さえ持たされたら即一人前だなんて勘違いしてはいけませんよ。ましてや、自分は仕事ができるのでどんどん仕事を与えてほしいなどとも思ってはいけません。新人がこの時期にできることは、せめてお客様への挨拶を元気よくきちんとすることくらいか、会社の中で一番やさしい仕事をやるくらいです。今の自分は仕事ができない、そう思っていないと、素直に先輩の言うことが聞けなくなります。
そのように自分をセーブすることは、あなた自身を守ることにもなるんです。一つ質問ですが、あなたが普段生活する中で、一番疲れない場所はどこですか? 自宅ですよね。では自宅はなぜ疲れないのでしょうか? それは見るもの全てをあなたが理解し、わかっているせいで、脳が新しく活動する必要がないからです。しかし、会社に入ったばかりの頃は、とにかくインプットの連続ですよね。これはね、すごく疲れてしまうんです。それだけで精一杯なのに、先輩に一日も早く追いついてやろうなどと意気込みすぎては、容量オーバーしてしまうのです。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
新人は、会社に慣れるまでは、言われたことをひたすらやりなさい。あまり多く考えすぎない、できることを一つひとつ覚えていく。今のあなたには会社も多くは求めていませんから、慌てすぎたり、気負いすぎたりしないように。また、慣れてくれば、できることもさせてもらえることも増えますから、「自分はこんなことしかさせてもらえない」などとも思ってはいけません。
【相談ケース10】 新人らしさって何?
小山社長、初めてメールさせていただきます。今年の4月から地元の企業に就職し、期待と不安の日々を送っています。その中でどうしてもわからないことが一つあります。先輩や上司がとても優しくてアドバイスもいっぱいくれるのですが、「新人らしくやったらいいんだよ」と言われることがよくあります。「新人らしい」というのはフレッシュな感じなのだろうとイメージはできるのですが、会議に出た時に「新人らしい意見を言ってほしい」などと振られることもあって、どう答えたらいいかわからなくて。「新人らしさ」って、いったい何ですか? 誰にも聞けないので教えてください。(22歳 会社員・女性)
新人の仕事は会社に行くことだけ
これは誰しも経験しがちなことではありますね。「新人らしさ」というのは、はっきりと言ってしまえば、「何もできない人らしさ」と言えるでしょう。上司の方の言わんとすることは、確かに「フレッシュな意見」という点では理解できなくもない。ですが、それはあなたを職場や仕事に溶け込ませようとしている配慮でしょうから、あなた自身はそこまで考えなくてよろしい。
新人の仕事は、ズバリ言ってしまうと「会社に来て、タイムカードを押すこと」です。つまり、出社することだけです。だってそれ以外できないのですから仕方がありません。
そこで自分を卑下することはないんです。最初から何でもできる人なんていません。できないのが正しいんです。携帯電話もガラケーからiPhoneやスマホに変えた途端、同じようにメールをするにしてもやりにくくなりますよね。あなたは過去にアルバイトをされてきたかどうかわかりませんが、アルバイトである程度仕事ができる自信がついていたとしても、ところ変われば品変わるわけで、同じ仕事でもセオリーが異なります。まずはそこに慣れないと話にならないわけです。
もっとも、いつまでも新人らしいと言われているのも癪でしょうから、あなたとしてはいろんな先輩に質問に行きたくなるでしょう。せっかくだから、その相手の見極め方もついでに教えておきます。
いいですか、ベテランの先輩に質問してはいけません。二年目など、自分に一番近しい先輩に質問するように。ベテランは仕事ができる人たちです。仕事ができるということは、「こんなのは教えなくても当たり前にできる」と盲目に考えることもあります。しかし二年目の先輩は、まだ仕事も一人前とは言い難いレベルですから、あなたの「わからない」の心情をよく理解してくれ、ポイントを突いた回答が返ってくることでしょう。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
新人のうちは、自分が手柄を立てて認めてもらおうという気持ちを持たないようにしましょう。まずは会社に行くことが嫌にならないように、環境に慣れることだけを考えましょう。その時、頼りになるのは年次の近しい先輩です。ベテランに教わるよりも、まずは彼らがやってきたことを学び、吸収するようにしましょう。「新人らしさ」とは、「何もできない自分を自覚して行動できていること」です。
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物事には何事にも本質というものがあります。新人の本質は「まだ一人では何もできないこと」。ベテランの本質とは当然ながら大きく違います。新人は、自分の本質が変わってくるまでは、「長いものには巻かれろ」ではありませんが、なされるがままにしかなりません。今は会社に行って、会社が自分の居場所なのだということをひたすら自分に刷りこんでください。ではまた来月!
明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.5 春のフレッシュ社会人指南
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://koyamanoboru.jp