こんにちは、小山昇です。3月は卒業のシーズン。新しい人生の門出をする前に、別れが訪れる季節でもありますね。同時に、年度の総決算をする時期でもあります。思い返してみてください。今年度のお仕事は有意義でしたか? やり残したことはありませんか? あるならば、4月からの新たなスタートに備え、この時期を大事にしましょう。そんな 「転機」 のヒントになるような相談を、今月は二つご紹介します。
【相談ケース7】 上司との関係がうまく保てません・・・。
小山社長、こんにちは。実は上司のことで悩んでいます。私の上司は、なんというか上にだけいい顔をして、下には厳しい感じの人なんです。私がうまく物事を運んだら「自分の指導のおかげ」という顔をしているし、ミスをしたり失敗したりすると「お前がしっかり努力していないからだ」と厳しく突き放されます。「守ってほしい」という甘えを持っているつもりはないんですが、さすがにこれだけつれない感じだと仕事にやる気が出てこなくなってしまって。上司との距離感も出てきて、最近ではあまり話もできなくなりました。この上司とどう付き合っていけばいいかわからないんです。(27歳 会社員・男性)
ホウレンソウの「報」を駆使して
上司を使いこなせ!
これは “上司の使い方” の問題ですね。上司と部下との関係の正しい在り方ではないがゆえに、あなた一人が悩んでしまっているわけです。ただ、私は疑問です。その悪い上司を作り上げているのは誰でしょうか? それは、あなたです。
まず、上司が的確な指示を出すためには部下からの報告が必要です。大部分の部下は報告をおろそかにしがち。結果報告はするけれども、面倒くさいから中間報告はしない方々が多いのではないでしょうか。しかし、中間報告というのは上司に自分の手柄を認めさせるために重要なプロセスです。いい中間結果も悪い中間結果も余さず報告しなくてはいけません。
今回のように心理的抵抗があると 「悪い結果は報告しにくい」 と思われるかもしれませんが、報告をこまめにすると、上司としては現状が悪化するのを防ぐべく、あなたに指示を出さざるを得ないでしょう。それで結果が出なければ 「あなた(上司)の指示通りにやりました。でも結果が出ませんでした」 というふうに、上司の失敗を目に見える形にするためにまた報告する。さすがに上司もこれではマズイ。器の小さい上司だったら、今回のケースのようにあなたの努力不足と言うかもしれません。そうなったら次の一手。「では、どのように努力したらいいか教えてください」。そこまで言われたら上司はうまくいく方法を考え、教えざるを得ないでしょう。
こうして成功がもたらされたら、初めて 「僕が勝ち得た成功です」 と胸を張ればいい。ずるい? そんなことはありません。これが正しい “上司の使い方” なのです。
ではここで、今回の 「小山昇の結論」。
上司と部下との正しい関係を一言で言うと、「言われたとおりやってうまくいけば俺 (自分) の手柄、うまくいかないならば悪いのは上司」。報告というのは、自分の手柄を上司に認めさせるためだけに使うものだと割り切りましょう。会社は 「実績の証拠がある人」 を認める傾向にあります。細かな報告の積み重ねは、あなたの手柄を立証するための証拠なのです。
【相談ケース8】 残業がありすぎる環境をどうにかしてほしい!
私は会社の総務部にいるのですが、最近残業がとにかく多いんです。年度末が近付いてきているから仕方がないと思うのですが、毎日早朝から終電までは当たり前で、帰宅後も自宅のPCで作業をしなくては間に合わない状態です。せっかくのお休みも山のように持ち帰った仕事をこなすばっかりで・・・。最近ではカレと会える時間もなくなってぎくしゃくしちゃって本当にもうイヤなんです。だけど正社員なので辞めたくはない。会社はこういう環境を改善してくれない。仕事でもミスが頻発してしまうし、どうしたらいいかわからなくなっています。(33歳 会社員・女性)
他力本願でいても
何も解決はしない!
まずあなたに言いたいのが 「他力本願で仕事をするのはやめなさい」 ということです。仕事が忙しく、そこまで仕事漬けにならなくてはいけない状況は確かにおかしい。しかし、その環境を今のままにしている原因は、あなたたち、今の総務部の面々の考え方ではないでしょうか。
これはシンプルな話なんです。残業が多いならば、どうすれば残業を減らせるか考えればいい。たとえばバックヤードをIT化して、人的労力がかからないような仕組みをひとつひとつ取り入れればいいわけです。その際、自分たちでゼロから仕組みを考えだす必要はありません。「考えろ」 と言われると、つい勘違いしてしまうのですが、いままでできなかったことを 「考える」 だけでできるようになれば世の中苦労はありません(笑)。他の会社の総務が取り入れて成功している事例を調べ、それを持ってくればいいだけです。
これは一つの例ですが、武蔵野にはかつて250名くらいの体制のとき、総務経理で8名ほどの人員がいました。それが今では650名体制で総務経理担当者は4名です。しかもパートさんを含めてです。これはまさしく武蔵野の総務経理をIT化したがゆえの結末。彼らはいかに効率よく仕事をして、社員数や売上の増加とともに増えゆく業務量をこなそうかと考えました。それで、積極的に外部の成功事例を招き入れ、自社に合わせて統合し、自分たちの負担を楽にするように仕掛けた。彼らは決して特別にITの知識があったわけでもなんでもないですが、“武蔵野総務IT改革” を実現してしまったのです。
ではここで、今回の 「小山昇の結論」。
変えようと思えば自分たちで環境を変えることはできます。誰かが変えようとしてくれるのを待っているだけでは、いつまでも状況は好転しません。人的ミスが出ているということは、おそらく急を要する事態でしょう。腐っている暇はありません。自分たちの残業をなくすためには、あなたたちが仕事の仕組みを変えていく動きをすべきです。
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「働かざる者、食うべからず」 という言葉があります。ご存じのとおり、「働かない者は、食べてはならない」 という教えが込められた一文ですね。今回のテーマでもある 「動かざる者、楽するべからず」 というのも、実は似たようなもの。「働」 という文字は人が動くと書きます。動くのは大変だと言われるかもしれませんが、実はその逆であることが今回おわかりになったでしょう。ではまた来月、お会いしましょう!
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明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.4 動かざる者、楽するべからず
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://koyamanoboru.jp