こんにちは、小山昇です。まだまだ寒い早春、インフルエンザも流行っているようですが、皆さんは健康に過ごされているでしょうか。健康と言えば、体の健康もさることながら、心の健康もビジネスパーソンにとって大事なものです。特に2月は新年の慌ただしさから解放されて気持ちがゆるみ、勢いを失いがちな時期でもあります。こういうときこそ、自分を奮い立たせて、しっかりと先を見据えて足元を固めておきたいですね。さて、今月はそんな気持ちの健康につながる、こんなご相談から。
【相談ケース5】 会社の役に立つ発想をしろと怒られる。
最近、上司からよく言われるんです。「ちゃんと考えて仕事しろ」 って。私は総務の仕事をしていて、今までも言われたことをきちんとこなすような仕事の仕方をしてきました。それが正しいと思っていました。営業さんや企画関係の方々みたいに何か発想するというのは得意じゃないですから、皆さんのフォロー役である総務の仕事は私に合った仕事だったんです。でも新しく来た上司が、「言われたことをやるだけじゃダメだ」 と厳しくて。業績が上がる仕事のやり方を考えろと言われて、一生懸命考えてはいるんですが、どうもうまくいかなくて・・・。このままだと役立たずだと思われそうで、どうしたらいいか困っています。(32歳 会社員・女性)
考えるのではありません!
成功例を真似しなさい!
一生懸命考えても結果が出ない。なるほど、それは確かに困ってしまいますね。でも、それはあなたの勘違いから生じてくるものかもしれませんよ。
そもそも 「考える」 という行為をだいたいの方が間違って解釈しています。「考える=新しい何かを発想する」 ということではなく、「考える=過去の体験を思い出すこと」 なのです。
つまり、あなた自身の中にその上司がイメージしている総務としての体験や経験がなければ、いくら考えたところで何かを生み出すのは難しいでしょう。フランスのパリに一度も行ったことがない人に 「パリのベスト散策コースを選定しろ」 と言っても無理な話。それと同じです。立場を変えて、企業の社長でも同じこと。「会社の新しい事業を考える」 と言う社長は多いですよね。ただ、彼らの実体験をさかのぼって思い出しても、経験したことのない未知のビジネス領域を自力で考え出せるかといったら、まず不可能です。我が身に起きたことがない物事を考えるなんて、できません。「入念なシミュレーションの結果・・・」 とか、「想定される事態を未然に回避すべく・・・」 とか、ちゃんちゃらおかしい。そんなのは全部自己満足。考えた “つもり” になっているだけです。
そのいっぽうで、中には新しい事業や仕事のやり方を作り出し、成功する人もいる。それは彼らが 「考えているのではなく、真似している」 からなんですね。他の会社の成功事例、業界での成功事例、そういったものを真似ることから始めているから上手くいくのです。あなたのお悩みだって、他の部署で上手くいっていることを自分の部署に採用してはいけないという決まりはないはずですよ。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
成功例は遠慮せず真似をしなさい。各部署のみんなが残業の時間を少しでも減らせるようなバックヤードを作るなど、総務と言えどできることはいっぱいあります。いろんな企業の総務がどのような形で会社の業績に貢献しているのか、よく研究なさるといいでしょう。そして大いに真似しましょう。
【相談ケース6】 今の会社にいてもしょうがないんじゃないか。
小山社長、いつもご書籍やコラムを拝読しています。恥ずかしながら、自身の将来に思い悩み、筆をとりました。私が勤める会社は、正直なところ、経営状態がかんばしくありません。すぐに倒産するようなことはなさそうですが、成績不振が何年も続き、給料にもボーナスにも影響が出ています。私は今この会社で中堅のポジションにいるのですが、年齢的なことや将来のことを考え、これ以上今の会社にとどまるべきではないのかもしれないと考え始めました。転職をして伸び盛りの会社に行ったほうが給料も上がる可能性はあるし、何より生き生きと仕事ができるんじゃないか、と。ぜひ武蔵野様のような企業を探したいと思うのですが、いいアドバイスをいただけないでしょうか。(35歳 会社員・男性)
転職したら給料が上がる?
そんなのはただの幻想です!
いきなり大ナタを振るってしましますが、はっきり言ってあなたの考え方は甘い。転職しても上手くはいかないでしょう。
もっとも、あなたの不安な心境はよくわかります。業績不振の会社にいると、社員の選択肢は3つに絞られてしまいます。1.現状に甘んじる 2.辞めて他の会社に行く 3.あなたの仕事ぶりを認めさせて社長に提言する、という選択肢です。
1については論じる必要もありませんね。2については、かなり熟考なさるべきです。なぜならば、転職先の会社で給料が上がる保証は何もないからです。今の会社ではあなたは中堅社員かもしれない。しかし、新しい会社ではあなたは単なる新入社員です。引き抜きや抜擢でないかぎり、同じようなポスト、同じような給料を保証された転職はありえません。そうなると、今の会社にいることが最も良い選択ということになってきませんか?
もちろん、そこで何もしなければ1のままですが、ここで私が望むのは、あなたが奮起して3の選択肢をとることです。今の会社への入社を決めたのはあなたです。会社が請うてあなたに入社を迫ったわけではないでしょう。あなたが希望し、あなたが選んだのです。この認識がないから不満がたまる。会社は何もやってくれないと思う。違います。あなたが会社に何もしていないうえに、わがままを言っているだけなのです。
ではここで、今回の「小山昇の結論」。
今すぐにそんな気持ちにはなれないかもしれませんが、状況を受け止めて、自分の仕事をより良いものにしていこうと努力してみてください。会社の上役は常に人材を探しています。不平不満ばかり言う社員と、状況が悪いながらも打開しようともがき頑張っている社員と、どちらを給料を上げてでも昇進させようと考えるでしょうか? 答えは言わずもがなですね。
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今回のお悩みは、「自分の頭だけで下手に考えると仕事の現場でどんなことが起きるか」 ということがわかる内容でした。もちろん何も考えずぼんやりするよりはいいのですが、「考え方」 を間違えないようにしたいものです。もうすぐ春。心機一転のスタートを切る時期が来る前に、心の整理をしておくことも大切ですね。ではまた来月、お会いしましょう!
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明るい我らに仕事あり ~お悩みビジネスパーソンの駆け込み寺~
vol.3 下手な考え、捨てるが勝ち
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。