こんにちは、小山です。すっかり秋めいてきましたね。木々の色もほんのりと変わりつつあり、本格的な秋の到来を思わせてくれます。秋は過ごしやすい季節。休日ともなると、レジャーの楽しみも出てきますね。しっかり働き、しっかり休み、しっかり遊ぶ。それが重要ですが、そのすべての基本となるのが健康です。そこで、今回は 「社員の健康管理」 の話をいたしましょう。
武蔵野の社員は働くのがお好き?
自分で言うのもなんですが、我が武蔵野の社員はよく働く社員ばかりです。若い世代も休日返上で会社に出社したがる。でも、そこにはちょっとした裏事情も。たとえば男性の社員が家庭を持っていた場合・・・会社にいるほうがラクなんですね(笑)。休みともなれば子供のお守りや、買い物のお付き合いなど、何かと面倒なことも少なくない。会社に来ると仕事は進んで業績アップに近づけるし、出張ともなれば手当がもらえて地方でのんびりできるでしょう?
もちろん、会社としては、これほどありがたいことはないかもしれません。売り上げが上がるわけですからね。でも私は、会社が儲かっても、社員の家庭が幸せでなければ意味がないと考えています。家族の不幸の上にある売り上げというのはよろしくないのです。
たとえば社長として、会社を日本一に育てたいと願うのは当然です。そのためには、全国展開も視野に入れた事業計画を考えなくてはならない。全国へ派遣する社員はやはり優秀な人材でなければならない。でも、優秀なやつほど悪いことを考えます(笑)。会社の目も届きにくくなるので、プライベートが管理しきれないため、家族をいたずらに不安にさせてしまいかねません。それで本当に社員も家庭も幸せだと言えますか?
社員の健康をまず第一に
もっとも、日本一になりたいという企業のモチベーションは正しいです。武蔵野のように、それが一田舎の大将であってもいいんです。私は後者のほうが好きだというだけでね。だから、私は社員のプライベートもそれぞれがよく知っている会社でありたいと願っています。「プライベートを把握する」 と言うと、誰と誰が付き合ってるだとか、何だとか、そういうスキャンダラスな話に終始しがちですが、それ以上に社員の健康、心の健康を考えるのも会社の大事な役割だと思いますから。
したがって、武蔵野では休みについても厳格な規定を設けています。まず休日出勤は禁止。もちろん社長もです。規定の休みは、誰が何と言っても必ず休まなくてはいけません。休日出勤や休日出張で手当がもらえると家族は喜ぶかもしれませんが、それが続いて社員の健康を害するようなことがあったら、本当の幸せとは言えませんから。
と言っても、そこはさすがに武蔵野の社員。「休め!」 と言われて 「はい、わかりました」 と休むような連中ばかりではありません。そこで強制的に休ませる仕組みを考えたのです。それが9日間の長期有給休暇制度です。この制度では、月末月初にかけて、必ず連続して休暇を取ることが義務付けられており、制度を利用しなければ即始末書です。武蔵野では始末書が2枚溜まると賞与が半額になりますから、これは大変ですよね(笑)。何せ働いているのに賞与が半額になるのですから、休まないと損です。
仕事に人を付けよ
こう書くと、「たとえば管理職がそんなに長期で休んだら、会社がまわらなくなりはしないか?」 と疑問視する向きも出てくるでしょう。でも私に言わせれば、その人が休んで会社がつぶれてしまうならば、そんな会社はさっさとつぶれてしまったほうが世のため人のため。大事なのは、人に仕事をつけるのではなく、仕事に人を付けること。部長がいなかったら課長が部長の仕事を代行し、課長がいなかったら課長補佐が課長の仕事を代行する。そうして、誰がどのポジションにいても円滑に回っていく組織こそ、優秀な組織だとは言えないでしょうか。そのシミュレーションを行うという意味でも、長期有給休暇制度はメリットのある制度なのです。
もうひとつ、社員の健康チェックに有効なのがボイスメール。武蔵野では日報のように、ボイスメールによる各種報告をさせているのですが、これを聞くだけでも社員の健康度がかなり把握できます。私が注意しているのは、内容ではなく声のトーンです。声というものは実に正直で、健康な時と、心の不安や悩みなども含めて健康でない時は、やはりどこか違って聞こえるものです。
しかし、ここでも武蔵野のルールがあります。深夜12時を超えてボイスメールが送られてくる場合もあり、その場合は理由がふたつ考えられる。ひとつめは遅くまで仕事をやっているため。ふたつめは、飲み歩いているため(笑)。いずれにせよ、あまりに深夜になることが続くのであれば、早く帰れと警告を発します。で、帰らないと更迭。厳しいでしょう?(笑)
管理体制悪化は会社の不健康
他にも、管理職が太りすぎていたら更迭です。考えてみてください。体重の管理は何でやりますか? 体重計に乗って、今何kgだと 「数字で把握する」 ことで管理していくわけですよね。体重が増えすぎていたら、「いけない、節制しないと」 となるはずです。管理職の仕事も同様で、売り上げは数字で管理していくもの。自分の体重の管理ができないのに、どうして人の、しかも数字的な管理ができるでしょうか。
こうした会社の規定に従わなければ、すぐに始末書や賞与減額、または更迭という憂き目にあってしまいます。もちろん健康管理を重視しすぎて、会社の労働力が低下することを懸念する考えもあるでしょう。ただ、私は会社の方針を実行して、それで業績が悪くても賞与は変わらず出します。逆に、会社の方針を実行せずに業績を上げた場合は出しません。会社という組織の中で、社員がどのように動くべきか。あくまで社長が定めた方針の中で動き、それで売り上げが上がらなければ社長が悪いというだけの話ですから。それ以上に、社員が個々に好き勝手をして、管理しきれない不健康な企業になるほうがよほど問題。社員の健康管理は、企業の健康管理にもつながるのです。
自ら働き、自ずから楽しむ ~小山昇・独自経営の哲学~
第11回 社員の健康は企業の健康なり
執筆者プロフィール
小山昇 Noboru Koyama
株式会社武蔵野 代表取締役社長
経 歴
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。