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ノウハウ 自ら働き、自ずから楽しむ  vol.5 社員をうまく育てろ 自ら働き、自ずから楽しむ 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 

会社にとってよい社員とは?

 
 
 こんにちは、小山です。4月に入り、いよいよ春も本格化。心新たに新年度を迎えられていますでしょうか? もっとも花粉症にお悩みの方にはつらい季節かもしれませんが、お花見や歓迎会を通じてしっかりとコミュニケーションを育んでいく時期ですね。
 さて、今回のコラムのテーマは 「どのように社員を育てていくか」 です。まず最初にみなさんに問題を出します。あなたが経営者である場合も、そうでない場合も、ここは一つ、答えてみてください。
 
【問題】 会社にとって、よい社員とはどちらの社員でしょう。
A) 「お金のためではなく、自分のやりがいのために働いている」 が口癖の、とにかく高い能力のある社員
B) 「お金、めちゃくちゃ欲しいです」 と豪語している、他の社員と価値観が同じ社員
 
 それぞれのお考えもあるでしょうが、株式会社武蔵野ないし小山昇としては、正解はB。同じ価値観で仕事ができるに越したことはなく、素直にお金を求める人のほうがよいのです。
 理由としてはいろいろありますが、まずネックになってくるのが 「能力のある社員」 であるか否か。そもそも能力とはなんでしょう? プロ野球の花形は4番バッターですが、4番を打てる人が能力があり、1番や8番が能力がないなどということはありませんよね。4番バッターばかりを集めても優勝できないのは誰が考えてもわかりきったことです。これと同じで、会社には様々な人材が必要なのです。
 会社をひとつの城と考えると、大きな岩、中くらいの石、そして小石がすべてないと、城として成り立ちません。薪だって、形のいい薪を10キロと、不格好な薪を10キロ集めて火をつけても、火力は同じでしょう。形の違いは能力の違いではなく、それぞれの得意不得意が異なるだけなのです。多くの会社にありがちなのが、この得意・不得意と能力をはき違えてしまうことなのです。
 
 

不得意なことはやらせるな

 
 私は、社員に対して徹底していることがあります。「不得意な業務はやらせない」 ということです。「不得意なことでもやらせていけば、いずれできるようになる」 というのは幻想です。短所を補正し長所を生かすやり方で実力の平均化を図ろうとしても、できないものはできません。背が高い人に、いきなり背を小さくせよと言っているようなものです。
 ですから、マネジメントができない人にはマネジメントを任せなければいい。そういう人はスタッフとして優秀だったり、違う側面が必ずあるわけですから、得意なことをやってもらったほうが会社のためにもなりますし、自分も働いていてストレスを感じないでしょう?
 ときどき、不得意なことでも挑戦したがる社員がいます。その熱さは否定はしませんが、私は決して普通に働かせません。挑戦したがっていて、しかも失敗するとわかっていることだけ許可を出します。「失敗することがわかっていて、どうしてやらせるのか? 自信がなくなるだけなのではないか?」――そうです。それが狙いです。
 若くして成功を続けると、人間必ずダメになります。エリートコースに乗ろうとする人には、挫折を経験させてあげなくてはいけない。負けた痛みを知ったうえで上に登って行かなくては、真の成長とは言えません。武蔵野の管理職は誰もが一度は更迭された経験を持っています。だから人にやさしい管理職が多く育っているのです。
 
 話は少々それましたが、そうした大小の石を織り交ぜた組織を作り、彼らに必ず目標を与えてやる。それが会社として社員を育てるコツです。たとえば社内キャンペーンを展開し、他の部と競わせる。「あの部署には負けたくない」 と結束し、自分がチームのためにどんなことをできるのか、自分の背丈で考えるようになります。またはイベントをやらせるのも一つの手でしょう。いずれにせよ、何か目標ができると、人間、それに向かって動きはじめるものです。決して、自由にさせてはいけないのです。
 
 

お金の制度は明確にせよ

 
 次に、先ほどの問題のもう一つのポイントはお金です。誤解を恐れずに言えば、社員を満足させるためにはお金で釣るのが最上の策です。つまり賞与ですね (ただし、賞与に対して罰則もないとバランスがとれません)。
 一般的に、日本人はお金の話をできるだけストレートにしないようにしますが、ここをぼかしていては従業員満足を図れません。顧客満足と従業員満足があれば、従業員満足を先に持ってくるのが、まっとうな考え方です。社員が満足していない環境でお客様にご満足いただける仕事などできないからです。その点、信賞必罰を明確にしておくことは、彼らに不満を抱かせず、かつやる気を引き出させるために重要なのですね。
 賞与について、当社では最上級のSクラスから最下級のDクラスまで、5つのレベル分けをしています。Dの賞与額はSに対して4分の1。これは相対評価なので、一度Sをとったからといって、それがずっと継続されるとは限りません。次期の成績次第では、SからDまで急転直下ということもありえます。今までの最高の落差は、前年度216万円から次年度7800円という大落差でした。逆に、下から一気に飛び級で上がり、100万円くらいアップしたなんてこともザラです。毎回、50万円前後のアップダウンはいたるところで見られますからね、武蔵野の場合は。
 これをより正確に言うと、いつも上位ではいられない仕組みというものが、わが社にはあるのです。たとえば小学校1年生の評価カテゴリで戦っていてSをとると、一気に小学校高学年ないし中学生レベルの評価カテゴリに昇格させられます。当然、今までのライバルとは比較にならない実力者ばかりですから、昇格して最初の年は、もうけちょんけちょんに叩きのめされるわけです。そして、また下のカテゴリに降格させられてしまうわけです。
 前回のコラムでも書きましたが、ずっといい思いをさせると、その人が天狗になってしまう可能性が出てきます。そうならないように、成功と挫折をともに味わい、着実に実力を重ねていく仕組みにしてあるのですね。シビアと言えばシビアな評価基準です。しかし、当社ではこの制度に不満を持つ社員はおりません。なぜならば、入社前にそのことをきちんと説明し、ピンチがあればチャンスもあるという制度を理解してから入社してもらっているから。そして、必ず制度の中に大きなビッグチャンスを用意しており、誰もがそこに挑める権利を持っているからです。
 
 
 適材適所を見極め、社内のルールを明確にし、チャンスを眼前に見せつける。それが真に彼らの実力を高めるために必要なことなのです。
 
 
 
 自ら働き、自ずから楽しむ ~小山昇・独自経営の哲学~
第5回 社員をうまく育てろ
 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 
 
 
 

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