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ノウハウ 自ら働き、自ずから楽しむ  vol.3 アルバイト・パートタイマーに働く喜びを 自ら働き、自ずから楽しむ 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ
 

アルバイトを腰かけと見るな

 
 こんにちは、小山です。一月は行く、二月は逃げる、三月は去る・・・ と申しますが、三月に決算がある企業においては何かと忙しい時期になってきそうですね。ぜひお風邪などを召されないよう、ご自愛ください。
 
 さて、本コラムも3回目を迎えまして、今回何をテーマに書かせていただこうか考えましたところ、アルバイトやパートタイマーについて、お話できる機会はあまりないので、書いてみたいと思います。
 実際に4月に入ったら、心機一転、新しいアルバイトやパートタイマーなどが多く入社する会社もあるのではないでしょうか? 武蔵野もご多分にもれず、全従業員のうちおよそ3分の2はアルバイトとパートタイマーが占めています。サービス業や物販業を行っている会社だけに、正社員よりも数が多いのは驚かれるかもしれません。しかし、アルバイト・パートタイマーの戦力は、もはや武蔵野にはなくてはならないものです。
 そこで、アルバイト・パートタイマーについても、武蔵野は社内で厳密な基準を作っています。
 非正規雇用という立場から、アルバイト・パートタイマーは、いわゆる小遣い稼ぎや、空いている時間を利用した副業のようなイメージを会社側も持っているかもしれません。ですので、あまり重責を担わせるようなことをしたがらないという心情は理解できます。しかし、アルバイト・パートタイマーも社員と同じく 「人」。彼ら彼女らの動かし方の成否が、彼らを多く雇用している会社にとっては、非常に重要になってくるはずです。
 実は武蔵野のアルバイト・パートタイマーは、一度働き始めると非常に長く勤務していただける方が大半です。勤続30年という大ベテランもいるくらいですから。なので、ときどきパートタイマーに正社員が叱り飛ばされるという、世にも珍しい光景を見ることさえあります(笑)。
  
 

パート・アルバイト改革を遂行

 
 そこで武蔵野では、前回までも話してきた 「経営計画書」 の中に 「パート・アルバイトに対する方針」 も盛り込み、時給(給与)、賞与、保険の加入、有休、勤務上の怪我への対応、罰則について、パート・アルバイトの地位や待遇を明確化することにしています。これは、従業員のモチベーションアップや、全社的な稼働状況を円滑にするためのもので、当社のように正社員以外の方々が活躍する会社では極めて重要なものであると自負しております。
 
 では、どのような内容になっているか? 
 まず給与から。基本的には時給制なのですが、アルバイト・パートタイマーの給与は、各店の店長に独断で決定できる裁量を持たせています。そのときに重要なことが一つ。アルバイト・パートタイマーの時給を決して統一してはいけないということです。統一しようとすると、どうしても水準が高いほうに合わせざるを得なくなります。ところが、給与水準が同じで、能力 (業務への貢献度) が違っているということが往々にして起こりえる。それが不満になり、「私はあの人よりも大変な仕事をしているのに、どうして時給が一緒なんですか?」 と苦情が寄せられることになるわけですね。
 さあ、そこで店長がどうするか。これは見ものですよ。不満をため込まないように、また勤労意欲を買って、時給を再び上げてやるとする。すると、またしても同じようなことが出てきて、時給だけがどんどん上がっていってしまうことになりかねません。反対に、彼ら彼女らの言いぶんを突っぱねてしまうこともできるでしょう。そうすると、不満がたまり、他にいい条件のアルバイト先、パート先が見つかれば、そちらに移ってしまうことになりかねません。
 これ、いずれにしても業績が下がってしまうリスクがありますよね? 業績が下がれば当然賞与に影響してきますから、店長も困ったものです。
 
 

時給は同じにするべからず

 
 そんなとき、私は店長たちにこう指導しています。「みんな自分が一番大変だと思っているんだ。時給を同じにすると必ず不満が出てくる。だから、高い時給が欲しければ、それだけ結果を出すか、高い時給をくれるところに移っていくか。その二者択一だとハッキリ伝えなさい」 と。
 一般的なパート・アルバイトへの給与は、一律の額を支給し、時給アップは勤続期間の長さにおいて検討するというところがほとんどでしょう。しかし、仕事ができる人は稼ぐことができ、仕事ができない (結果を残せない) 人は稼げないというのは、世の常なのです。難しくハードな仕事をしている人と、アシスタントのような責任の軽い仕事をしている人とが少なからず分かれてしまう以上、「アルバイトやパートだから一律で、管理しやすいようにしよう」 という考え方は、すぐに捨て去るべきなのですね。それが本当の平等というものではないでしょうか。
 昇給も然り。せいぜい勤続年数に応じた昇給があるだけというケースが大半のようですが、それは悪しき平等主義です。たとえ身分は非正規雇用者であっても、困難な仕事・専門性が要求される仕事をしている人と、補助的な簡易労働をしている人とでは、昇給幅にも差をつけるのが本当の平等です。
 
 また、有給休暇についても明文化してあります。アルバイトやパートタイマーが自分の有休の日数を把握し、上司 (管理者) の管理ではなく個々が自分で管理できるようにしています。さらに、勤務時間が正社員の3分の2に満たないアルバイト・パートタイマーでも、一定の条件を満たせば各種保険に加入できるようにしています。
 
 賞与評価はポイント制です。「誰々さんはどれだけのポイントを獲得したから賞与はこれだけ与えます」 と、公平に透明感のある支給をしています。アルバイト・パートタイマーはそれぞれトータル10ポイントの枠を持っています。それをどれだけ埋められるかという加点評価方式です。10のうち5は上司の評価ポイント。3は 「方針共有点」 とし、早朝勉強会や社内見学会などの社内行事の参加状況を見て計算。残る2ポイントは、毎朝の清掃や整理整頓活動といった職場環境整備にどれだけ参加しているかで評価します。10ポイント獲得した場合と0ポイントだった場合とを比較すると、支給賞与には約5万円の格差がつきます。これはモチベーションアップに大きく作用していますね。
 ちなみに、「方針共有点」 に関し、早朝勉強会に50回出席したアルバイト・パートタイマーには2万5000円の旅行券を渡しています。このコストは年間で1000万円ですから、会社にとって決して少額ではありません。上司との面談や各種勉強会へも500円の参加手当がつきます。
 
 

モチベーションは金で釣れ

 
 と、ここまで書くと、「結局は従業員のモチベーションを金で釣るのか」 という意見が出てくるでしょう。その通り、お金で釣るのです。教育を会社内で義務化しているのであれば、そこに時間を割いてもらうわけですから、報酬が発生するのは当然のこと。お金を払っているからこそ、参加を強制できるわけです。それで従業員の質が向上して、結果的に会社の利益に還元されてくるわけですから、投資コストとして意味があるはずです。
 ご自分の会社でちょっと試されてみてください。アルバイト・パートタイマーの方に、「どうしてうちで働いているの?」 と尋ねてみる。そこで返ってくる答えが、「会社のことを勉強したいから」 とか 「社会に貢献したいから」 という理由だったとしましょう。さて、皆さんはどう感じますか?
 私はそういう答えに期待感を持ちません。口ではいくらでも言えるからです。そこに期待して 「この人のモチベーションは給料ではなく、そうした経験値なのだ」 と受け取る社長は二流と言えるでしょうね。暴論かもしれませんが、働いている、労働をしているという条件下にある以上、彼ら彼女らとの間で金銭のやりとり以外のことを優先させないのが、正しい社長のあり方なのです。

 
 
 自ら働き、自ずから楽しむ ~小山昇・独自経営の哲学~
第3回 アルバイト・パートタイマーに働く喜びを
 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 
 
 
 

 

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