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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
『子午線の祀り』には3度目の出演となるものの、今回は初めて演出も務める萬斎さん。「正しい日本語」を使うよう、特に気をつけているという。一体どのような意味があるのか、詳しくうかがった。
 
 

「聞くこと」を楽しんでもらう

 
舞台、特に平家物語のような劇文学は、とにかくセリフを正しく伝えることが大切です。日本語の正しい喋り方で発声すれば、それだけでお客さんも舞台の世界に入り込みやすくなります。私は、役者さんたちに「もっと腹に力を込めて喋ってみてくれ」とよくお願いしていまして。例えば映画などの映像作品では、文法が正しくなくとも、その場の雰囲気に合った喋り方のほうが効果的に感じることもあります。しかし『子午線の祀り』のような舞台の演出では、名詞や動詞を明確に表したうえで、副詞や形容詞の使い方などを考える必要があります。長いセリフになればなるほど緻密に構成することが大切でしょうね。
 
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観に来てくださる方々には、「聞くことってこんなにおもしろいんだ」と感じてもらえれば嬉しいですね。言葉のリズム感などを崩さずに、内容をしっかりと届けたいと思っています。また、こういった古典文学を上演する舞台は、歌舞伎や能などを見慣れている方にとっては親しみやすい内容であるものの、そうでない方には少しわかりにくいだろうなとも考えていまして。今回の公演では、今までの『子午線の祀り』よりも“肉体的感覚”を加えてみたいと思っているんです。見た目でも臨場感が伝わるようにしたいですね。
 
『子午線の祀り』は、1979年の初演以来、7回上演されています。世田谷パブリックシアターという公共劇場の芸術監督としては、こうして後世に残る作品を創り続けていきたいと思っています。能・狂言や歌舞伎など、数百年間上演されている古典作品に伍するような作品を創りたい。『子午線の祀り』も、古典の本質的な精神を失わないようにしつつも、アップデートを重ねて、後世に伝えていきたいですね。
 
 
狂言の名家に生まれ育った萬斎さん。物心ついた頃にはすでに舞台に立っていたというが、自身の進む道に葛藤はなかったのだろうか。
 
 

わからなくても「何かおもしろかった」と思ってもらう

 
狂言は“省略の美学”と言われますが、観る人に想像する余地を残すことは、情報過剰とも言える現代には少し“不親切” とも言えます。役者を目指している人も、やっぱり映画やドラマなどの映像方面に進もうとする人が多いんじゃないかな。でも、舞台に立って“ライブ”で演じることの醍醐味を知ってしまうと、もうやめられないですね。自分の発する熱にお客様が応えてくださる喜びは、他ではなかなか味わえません。
 
ただ、古典芸能は少し敷居が高いと感じる方もいらっしゃるでしょう。でも、わからないことにそれほどストレスを感じる必要はないんじゃないかな? 例えば絵画でも、ピカソの絵を初めて見て、「これはこういうふうにすごい」とはなかなか思えないじゃないですか(笑)。「どうしてこういう表現なんだろう?」って疑問を持つことがきっかけになると思うんです。気になって調べて、「ああ、だからこういう絵なんだ!」と思う。狂言もそれと同じ感覚で楽しんでもらいたいですね。
 
そのために舞台に立つ私たちは、「もう一度観たいな」と思っていただけるものを提供しなければなりません。「よくわからなかったけど、何かすごかったな」「もう一度観てみたいな」と感じていただける舞台をつくり上げることこそが、私たちの使命だと考えています。
 
 
 
 
 

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