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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

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扉を開いておく――櫻井氏の謦咳に触れていると、「素直」という印象が浮かんでくる。ある種“アポロン的”な、明るい光の感覚を伴う素直さだ。その印象を率直にぶつけてみた。
 
 

「素直」という徳

 
 スポーツの世界でよく、「素直な選手ほど伸びる」と言いますでしょう? 「この練習を100回やれ」と言ったら本当にやる人。「自分はもっと効率よくやるから20回でいいんだ」なんて言わずにね(笑)。私は、これは身体スポーツのことだけでなくて、考え方や内面の蓄積においても同じだと思っています。
 
 素直というのは、思い込みを捨てて、目や耳、感性から入ってくるものに真正面から向き合うということでしょう。だからたとえば、素直な人は、世間からとてつもなく変な人だと見られている相手の話も一回聞いてみようと思うんです。
 
 だから私、騙されやすいの(笑)。こんなに信じやすい人間がジャーナリズムをやってていいのかしらと思うくらい。その点は本当に注意しています。素直なのは、いいところもあるし、仕事によっては弱点にもなります。自分の性格を知って行動しないといけませんよね。
 
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「プライベートではすごく信じやすい人間」と自己分析する櫻井氏の話は、“八十神の国・日本”の国柄にも及んだ。2007年に創設した国家基本問題研究所はまさに、日本の国柄を理解し、共感してくれる国際世論をつくっていくためのシンクタンクである。櫻井氏の奮闘は、まだ終わりを迎えることはなさそうだ。
 
 

使命感を賭して

 
 昨年から産経新聞の『正論』とコラボレーションして「この国の形」というテーマでまとめてきた研究があります。これは日米関係を通じて、あるいは宗教、軍事などを通じて日本が目指すべき理想の国の形を、いろいろなアングルから描き出そうとしたものです。これがそろそろ終わりに近づいてきました。
 
 そして次に進めているのがアメリカ研究です。中国やロシアの研究はよく聞きますが、対中政策とか軍事研究を除いては、文化やメンタリティまで含むアメリカ国研究は、ここしばらくなされていないのです。今のアメリカは人種構成からいっても言語からいっても、かつてのWASPの国ではなくなっています。当然、国としての価値観が変わっています。外交戦略も変わっています。このアメリカの変化を一体として見極めなければ、日本の安全保障や外交政策は対応できません。
 
 それともう一つが、教育ですね。歴代の政権が「子供の教育は行政の仕事」との立場を続けた結果、家庭が教育に果たすべき役割が軽視されるようになってしまいました。ですから今年は1年かけて、子供の教育は今どうあるべきかの研究を進めます。これも大きなプロジェクトです。だからまだ休めませんね。今がこれまでの人生で一番忙しいんじゃないかしら。
 
 
 
 (インタビュー・文 筒井秀礼 /写真 Nori)
 
 
 
櫻井よしこ (さくらい よしこ)
 
1945年10月、ベトナム・ハノイ生まれ。
 
日本に帰国後、大分県中津、新潟県長岡で育ち、ハワイ州立大学卒業。英字新聞『クリスチャン・サイエンス・モニター』などを経て、1980年より1996年まで日本テレビ『きょうの出来事』のメインキャスターを務める。2007年にシンクタンク「国家基本問題研究所」創設。第26回大宅荘一ノンフィクション賞、第46回菊池寛賞をそれぞれ受賞。
 
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(この情報は2014年4月1日現在のものです)
 
 
 
 

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