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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

野球を愛し続ける男が放つ
シンプルで力強いメッセージ

 
 
思いを内に秘めるのではなく、ストレートに言葉にして発する。しかし、発言した内容には当然責任が伴うもの。その意味では、チームの監督の立場にある中畑氏にとって、有言実行の姿勢は生半可な思いでできることではない。
 
 

野球を愛するファンが増えてほしい

 
 私は球界がもっともっと盛り上がってほしいんです。球界全体がもっと活況を呈してほしいんですよ。そのためには、自分のチームだけを盛り上げていても仕方がない。対戦相手があって、ファンの皆さんがいて、野球に関わる方々の全てが一体感を持ってこそ、球界は盛り上がるわけですからね。私の仕事は横浜DeNAベイスターズを勝利に導くことですけども、それは、球界全体の活性化にもつながるんです。そのためにこのチームで、お客様が興奮してくれる試合を増やさなくてはならないし、野球に対して喜怒哀楽を表現してくれる、ファンの方々をもっと増やしたい。
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 だから、どんなに辛く厳しい状況にあっても、おかれた立場でやるだけですよ。失敗してしまうこともあるかもしれない。でも、野球は失敗のスポーツです。3割打ち続けられたら一流選手ですが、逆を言うと、7割は失敗しているんですよね。それが野球なんです。だから、失敗を引きずらずにどうやって前向きになるか。そのメンタルコントロールが大事になる。それができる選手だけが生き残れる世界なんですよ。
 私は、根が暗くてマイナス思考な人間です。本当ですよ。だから、現役時代から苦心して、自分の思考回路が前向きになるよう矯正していました。うまくいかなかったら、「次はうまくできる」 と自分を奮い立たせて、表向きには堂々と振舞っていたんです。たとえば、エラーした時は、「ドンマイドンマイ」 って言いながら、ピッチャーのいるマウンドに行く。それで、「次は俺が打ってやるから大丈夫だ」 って声をかけていた(笑)。ミスをミスと思わせないようにね。そういう、ふてぶてしいパフォーマンスは意識的に行っていました。
 最初はそういう行為に躊躇する気持ちもありましたが、開き直って一回やれば、あとはそれが普通になってくるものですよ(笑)。それだけの振る舞いをするんだから、「次は失敗できない」 と自分にプレッシャーをかけることにもなりますしね。その繰り返しがメンタルを鍛え、お客様に興奮してもらえるようなプレーにつながるんです。お客様を喜ばせるのが我々プロの仕事。ビジネスはお客様があってこそ成り立つものでしょう。その理屈はどの業界だって変わらないはずです。だから、ファンの方々を大切にして、喜んでもらうために努力するのは当たり前のことですよね。
 
 
 
ファンのため、そして球界のために――。中畑氏の言動の全てはそこを目指したものなのだ。どんな逆境におかれても下を向かず、ただ己の役割を果たすために力を尽くす。重責と周りの期待に押しつぶされそうになっても、目的のために努力と研鑽を重ねていく。それを遂行し続ける強さがあるからこそ、あの、愛すべきキャラクターで周囲を明るくできるのではないか。
 
 

筋書きのあるドラマを演出したい

 
 私は、人生には辛いことのほうがずっと多いと思っています。だから、その事実をしっかりと受け止めて、どう自分のメンタルをコントロールしていくのかが重要だと思いますね。できるだけ、自分の心がプラスに向くように努力するんですよ。口では簡単に言えますけど、実行するのは並大抵のことではない。それは誰にでもわかると思います。そういう意味では、人生は自分との戦いですよね。弱い自分と向き合い、戦い、何とかして己を超克しようと繰り返すのが人生なんです。それを継続できる人が、大きな仕事で結果を出せる可能性があるんじゃないですかね。
 私は、元気に明るく振舞っているから、「あなたみたいになりたいです」 「あなたを見ていると自分も元気になれます」 と言っていただくことがあります。でもね、それが天然なわけではないんです。強いて自分をそういう方向に導いているだけ。でも、その姿勢を貫いているから、見てくれている方々には「中畑は前向きな人間」と映るのかもしれないですね。
 「野球は筋書きのないドラマ」 というフレーズがありますが、私は、監督として 「筋書きのあるドラマ」 をつくりたいんです。野球というスポーツは、たったの1球をどう処理するかで、試合の流れが大きく変わる。その試合の流れを、自分の筋書き通りに演出してみたいと思っています。シーズン中に何試合か、それが実現できそうな機会って巡ってくるんですよ。「監督の采配」 というファインプレーで、試合の結果が変わるようなことがね。自分で言うのはおこがましいかもしれないですけど(笑)。今シーズンもそんな試合を多くして、勝ち星を増やしていきたいです。そしてシーズン終了後には 「今シーズンの仕事は、実に楽しかったなぁ!」 と喜びたいですね。
 

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(インタビュー・文 佐藤学 / 写真 Nori)
 
 
 
 

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