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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

相対的な視点と手法の転換が
環境問題への取り組みを変える

 
 
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 そこでリサイクルワンでは、ReNew 、つまり 「環境をもっと新しく」 というテーマを掲げています。
 一般の人々が普通に生活する中で、リサイクル料金が半分になればいいと心底思っているかといえば、そうではないですよね。よくよく考えたときに初めて、「確かに下がったほうがいいよな。安くなるといいな」 と気付く。そんな曖昧な部分は随所にあると思うのです。それを形にしていきたい。
 我々は 「一歩先」 と言わないで 「半歩先」 という言い方をするのですが、それというのは、曖昧になっているまさにその部分を、形にすることだと思うのですよ。たとえば家庭プラスチックのリサイクル工場も、それを運営すること自体が何かを 「もっと新しく」 したことにはならないんです。2000年から国の制度が整ってきて、市場にはもう丸9年の歴史がある。ただ、その中に世代があって、初期のプラントは小型で、確かに努力賞ではあるけれども、効率はそんなに良くない。二世代目になって再製品化までの一貫したラインが誕生して、それは非常に優れたモデルだと思いますが、でもやっぱり、そこで止まっては意味がない。
 リサイクル事業にはインカムが二つあるんです。処理をするインカムと、再生品を売って利益を出すインカムです。売る側のインカムが大きければ大きいほどいいリサイクルであるというのが我々の考えです。売るインカムが大きいということは、わざわざ処理のお金を出さなくて済むということだからです。市場原理によって存在意義が成り立つ側に近くなる。制度に頼る部分が減るということです。
 消費者がテレビをリサイクルしたいときに、2000円払わないといけないところが500円で済めば非常にいいですよね。それにはどうなればいいかというと、たとえば家電製品のレアメタルやその他素材の回収が非常にうまくいき、回収効率が上がってリサイクル率が上がって資源収入が増えれば、処理単価を相殺して500円にできるわけです。プラスチックのリサイクルも同じで、世代が進んでより細かい選別ができるようになったシステムを入れることで、以前なら廃棄物の中に埋もれていた資源価値を新たに掘り出せるようになります。すると、廃棄物そのものは変わらないまま、価値が上がるわけです。これができて初めて、ReNew つまり 「環境をもっと新しく」 できたと言えると思います。
 
 

消費者のReNew
企業におけるReNew

 
――そのような考え方が一般の社会にももっと広まり、相対的な筋道を辿らなくてもみんなが自然に廃棄物に価値を見出すようになれば、市民レベルから循環型社会を実現する大きな一歩になると思います。その意味で、リサイクルワンは消費者に対しても半歩先の絵図を示そうとされているのではないかと思いますが、いかがですか。
 
 その気持ちは確かにあります。ただ、一足飛びに消費者の意識を換えるというのは難しいでしょう。プラスチックの事例で言いますと、まず、廃棄されてくるプラスチックの質からして市町村によって違います。最もきれいなのは地方の田舎。一番汚いのは東京や大阪などの都心部です。単身者が多かったり、忙しい人が多かったり、ようするに非協力的なんですよ。皆さんドキッとされるかもしれませんが(笑)。 地方は家庭に主婦がいらっしゃったり、ご高齢の方が多かったりで、やっぱり協力的なんです。自治体が洗って出すようにお願いしたら、皆さん、ちゃんと洗って出してくださいますから。住んでいるところによっても人によっても、環境に対する意識が全然違う。意識が行動になるまでにもギャップがあります。残念ながら、現状はそのレベルです。我々は日々のリサイクル現場でそのことを感じています。リサイクルしやすい、つまり価値の高い廃棄物を全員がリサイクルに最適なように出してくださるようになるまでには、まだ時間がかかるでしょうね。
 まあ、難しいですよ。リサイクル法もどんどん改正になりますし。市民団体の方とも話しますが、非常に厳密な市民団体もありますが、それが全体ではないし。大きな社会全体をゆっくり、ゆっくり動かしていかないといけませんから、先走らず、やっぱり半歩先くらいの絵を示して続けていくしかないと思っています。
 リリサイクルワンはシンクタンクな機能も持っています。経済産業省や環境省の下で新しい環境づくりの制度提案もやっています。自社の事業でノウハウを蓄積し、各企業が廃棄物をちゃんとリサイクルできるよう支援し、それらの知見を社会的な制度作りにも活かす。この繰り返しです。
 
 
――では、企業に対しては、廃棄物のより良いリサイクルという観点からどんなことに取り組んでほしいですか。
 
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 基本的には、経済原則に乗る範囲でやってくださればいいと思います。清貧思想みたいなアプローチもありますが、我々はそちらにはあまり価値を置いていません。いままで普通にゴミを燃やしていた。それよりも経済原則に適う、つまり安い方法があればそちらへ移行してくださいというだけの話です。無理に高価なリサイクルに挑戦する必要はないです。ただ、技術開発などによって、一時高価だったリサイクルが、市場原理で処理するより結果として安くなるということはありえると思います。
 実際、廃棄コストを下げる手立てというのはいろいろあるんです。たとえば建設現場。ものすごい量の廃棄物が出ますよね。ガラス、木材、プラスチック、コンクリートと種類も多い。それを現場で分別して捨てるのが当たり前になると、ごちゃ混ぜに捨てるより処理単価が下げられます。プラスチック廃棄物だって、たとえば物流センターでは荷物の梱包フィルムが山のように出ます。放っておくとアッという間に溜まっていく。それをなんとなく焼却処分しているとコストがかかって仕方がない。ところが、上手く形を圧縮すればプラスチック工場が引き取ってくれて、再生製品にしてくれるんですね。つまり価値に変えてくれる。相対的に廃棄コストが下がるわけで、そういった領域はまだまだあります。ただ現状はそういった活動は社会全体ではなく、一部の取り組みなので、コストが相対的に高くなってしまう。全建設現場や全物流センターが同時に現場リサイクルを推進したら、それは収集効率が上がって、社会コストは大幅に下がるでしょうね。
 
 
 

 

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