鈴木アシュラフの駅そば行脚 File.04
没個性の影に射す、一条の光 ~成増駅「どん」~
成増駅南口に隣接して、「どん」という駅そば店がある。自宅から近いこともあり、この店にはこれまでに10回以上足を運んでいる。ところが、かつては非常に個性的だった店なのだが、行くたびにその個性が失われ、少々残念な気分になる。かつてお気に入りだったメニュー「あげそば」(芯のない油揚げをトッピング。そのまま食べるとカリカリ、つゆに浸すとフワフワになる、不思議な食材)が消え、関東の駅そばでは珍しい青ネギが、いつの間にかスタンダードな白ネギになってしまった(写真は春菊天そば320円)。
しかし、個性が完全に消えたわけではない。この店一番の人気メニューは、そばでもうどんでもなく、焼肉ライス。これは健在だ。焼きたての肉をご飯の上にたっぷり乗せ、味噌汁付きで450円、特盛り550円。頻繁に注文が入るので、厨房の奥からは常に肉を焼く音が聞こえてくる。あくまでも看板はそば・うどんだが、助演としてキラリと光る存在だ。


執筆者プロフィール
鈴木 アシュラフ 弘毅(すずき・あしゅらふ・ひろき)
1973年、埼玉県生まれ。中央大学文学部卒業。小学生時代から一人で暖簾をくぐっていた、筋金入りの駅そば好き。これまでに巡った店は、1200軒以上。「美味い・早い・安い」のみならず、地域や店舗ごとに個性を発揮している駅そばは、没個性の世の中に一陣の風を吹き込む存在であると考え、日夜を問わず全国を駆け巡る。著書に、『「駅そば」読本』(交通新聞社)がある。



