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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

精神科医療の枠を超え
地域で自立をサポート

 

患者を「真剣」から遠ざけてはいけない

 
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水野 宙麦会さんでは精神障がい者フットサルチームの活動も行っているそうですね。
 
肥田 ええ、ひだクリニックのデイケアのメンバーで「Espacio(エスパシオ)」というチームで活動しています。世界大会では日本代表チームメンバー12名中6人が、私たちのチームから選出されました。
 
水野 それはすごい! なぜそんなに強いチームになったのですか?
 
肥田 チーム設立時に、「勝てるチームづくりをしよう」と考え、真剣に練習したからです。それまでの精神障がい者スポーツには、「参加することに意義がある」という考え方が一般的で、勝敗は重視されていませんでした。でも私は、真剣勝負から患者さんを遠ざけることは、ある意味で虐待ではないかと考えたんです。そこで隣接市で活動するJリーグの柏レイソルさんからコーチをお招きし、トレーニングを重ねました。
 
水野 真剣勝負だからこそ勝つ喜びを味わえて、負けてもたくさんの学びを得られます。そのような喜びや学びを手にする権利は誰にも平等にありますよね。
 
肥田 初めのうちは「和を乱す」という批判も受けましたけどね(笑)。でも、そうやって誰かにつくられた楽しさは本物ではありません。これはスポーツのみならず、生活すべてに通じます。買い物も、自分で働いて得たお金で買うから楽しいじゃないですか。疾患というのは一部であり、その人のすべてではありません。だから宙麦会の職員は、いい意味で患者の皆さんとフラットに接します。健常者と障がい者の区別をなくしたいというのが、私たちの思いなんです。
 
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水野 おっしゃる通りです。努力して得る喜びが、生きる喜びになるのではないでしょうか。配慮は必要でも、過剰な保護はいけませんよね。宙麦会さんは事業形態だけでなく、取り組みの面でも今までにないことにチャレンジなさっている印象です。
 
肥田 今後は統合失調症に関する、競走馬によるホースセラピーにも取り組みたいと考えています。そのために、医学的なエビデンスを収集し、JRAや省庁の方々にも働きかけているところなんです。
 
水野 引退後に殺処分となる競走馬も多いと聞きます。競走馬のセカンドキャリアにもつながる素晴らしい取り組みだと思いますよ。