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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

 
プロフィール 東京都出身。哲学者になることを夢見ていたが、周囲の勧めもあり、医師になることを決意。東京慈恵会医科大学を卒業後、同大附属病院に勤務。その後、町田市民病院の精神科医長を務め、さらに都内の病院勤務を経て、町田まごころクリニックを開業した。日々の診療の傍ら、成城大学や医療福祉専門学校でも講師として教鞭を振るう。1日の来院者数はおよそ120人、大学の講義を履修する学生は毎年のように約400人と、多くの人に支持されている。【ホームページ
 
 
 
心の病を罹患する人が年々増加している。だが、患者のよりどころとなるべき医療機関では、薬物療法に偏り、効果的な治療が行えていないケースも多い。そんな中、薬に頼りすぎず日常会話を重視した癒しやカードによる“言葉の贈り物”で、患者を支援している精神科医がいる。町田まごころクリニック院長・鹿島直之氏だ。鹿島院長は来院する患者の切実な思いに応え、一人ひとりと丁寧に、まごころをもって接している。
 
 
 

精神科医になって気付いたこと

 
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インタビュアー 川﨑麻世(タレント)
川﨑 鹿島院長はかつて、哲学者を志しておられたそうですね。
 
鹿島 はい。でも私の親族からは反対され、私自身も学者として身を立てる覚悟にまでは至りませんでした。それで医学を志すことにしたんです。哲学と関係がありそうな、心の領域を扱う精神科で学ぼうと決意しましてね。反対する家族もいましたが、この道に進みました。私の中学からの親友で、今では大阪大学の教授になっている村上靖彦という高名な哲学者がいます。彼の恐ろしい程の該博な知識や、語学力、その独創的な構想力を考えると、哲学者は自分には無理だったなと心底感じます。
 
川﨑 精神医学に何か哲学に通じるものはありましたか?
 
鹿島 いえ、精神医療の営みと哲学という学問は異なる方向性ですからね。混同してしまうと、患者さんを正しく診察できなくなる恐れがあります。そもそも、哲学者は自分の考えを論じるのが仕事。精神科医は仕事上、自分の考えをそのまま口にする機会は多くありません。
 患者さんはしっかり話を聞いてもらいたいんですよ。ただ、お話を聞くにあたっては、様々な知識が相手を診る際の先入観になってしまうことも少なくありません。知識偏重でいると、相手に冷たい印象を与えることもあり、コミュニケーションを図る上で逆効果なんです。かくいう私も、精神科医になって数年間はそうしたことに気付けませんでした。