「生産者の思いを届ける料理を提供したい」――そう力強く語るのは、兵庫県神戸市、JR住吉駅から徒歩8分の閑静な住宅街にある日本料理店「きたむら」で腕をふるう北村拓也代表だ。食材を仕入れる際には、生産者のもとを訪れ、共に汗を流して働き、思いを共有することから始めるという。その過程を経ることでしか生まれない、「物語を伝える料理」こそ、この道一筋15年以上のプロフェッショナルがたどり着いた答えだ。
住吉駅近くの日本料理店「きたむら」

インタビュアー 吉村禎章(野球解説者)
北村 高校を卒業後、アルバイトとして割烹店に入って修業を始めました。15年以上ずっとこの道で働いてきたことになりますね。
吉村 まさに職人ですね! 日本料理の修業時代というと、厳しいと聞きますから、辛いことも多かったでしょう。
北村 いえ、親方も先輩も素晴らしい方ばかりで、辛いと思ったことはありません。特に親方は、経済的にも恵まれていなかった私のことを親身になって助けてくださいました。今の私があるのは、親方のおかげです。本当に感謝しています。
吉村 北村さんが一生懸命な人だからこそ、親方も応援してくれたのだと思いますよ。修業してみて、料理の世界は自分に合っていると思いました?
北村 自分ではよくわからないものの、周りからは「向いている」と言われることが多く、自信になりましたね。