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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

遺伝子レベルの検査で
動物の健康を守る

 

“細胞免疫療法”でペットの免疫力をアップ

 
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宮地 犬は大切な家族の一員ですからね。ウチのコはもう8歳になるので、今は元気でも、これから先が心配で。
 
山口 我が家にも今年で10歳になる柴犬がいまして、数年前から 「クッシング症候群」 というホルモンの病気を発症し、毎日薬を飲んでいる状況です。病気で苦しんでいる愛犬の姿を見るのは飼い主としても辛いですよね。やはり、ペットにも予防医学という考え方は大切だと痛感します。早期発見して治療すれば、ペットも苦しまずに済みます。飼い主さんには特に、そういった意識を持っていただきたいですね。
 
宮地 現状では、定期的な健康診断をしている飼い主さんは少ないかもしれませんね。ところで、犬の癌を予防する方法はあるのですか?
 
山口 私どもが研究を進めている技術に “細胞免疫療法” というものがあります。これは、癌を患っている犬から血液を採り、その中にあるリンパ球という免疫細胞を分離して培養し、増やしてから身体に戻すというもの。要するに、免疫力を強くして、癌を駆逐するという治療法なのです。こちらについては、法的規制で私どもがリンパ球の培養を受託はできないのですが、全国の獣医さんに培養技術を提供しています。
 
宮地 すごい! その技術は山口社長ご自身が研究開発されたものなのですか?
 
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山口 もともとは、人の癌治療のための免疫療法として開発された技術です。私は、大学で免疫の研究をしていたんです。卒業後は製薬会社や化学メーカーの医薬部門で研究職に従事し、産学連携の研究を進める中で、キャリアの半分ほどの期間を大学の研究室にこもって過ごしてきました。そんな時期に、先端技術である “活性化リンパ球療法” に出会ったのです。
 
宮地 その技術を、犬向けに開発したのでしょうか?
 
山口 はい。現在では、“細胞免疫療法” として知られ、人間の癌の治療法として研究が進められているものです。ところが、細胞療法に関しては薬事法や医療法などの規制が厳しく、研究を進めても企業化は困難、企業としての取り組みが難しいということになり撤退。関わっていたメンバーと共に独立し、人の癌治療への細胞免疫療法技術を提供するベンチャー企業を興しました。しかし、研究は進んでも、ビジネスベースに乗せることは困難だったため、その技術をペット分野に生かそうと決意し、このケーナインラボを設立したのです。ちなみに、この “canine(ケーナイン)” とは、犬を表す学術用語で、猫のことは “feline(フィーライン)” と呼ぶんですよ。