株式会社 ジェイ・エム・シー 代表取締役 渡邊大知
成形・鋳造業の
変革に挑むファイター
成形業の価値を高める医療用実体モデルの造形

渡邊 光造形の技術は工業部品だけでなく医療用にも使えます。例えば脳外科や口腔外科の分野では、顎が曲がったり歯が折れたりと特殊な傷病に悩まされている方が少なくないですが、それらの治療は手術時に医師が患部を開くまで実際の様子が見れません。骨を削るのも成形するのもぶっつけ本番です。ですから、患者さんと医師の双方に大きな負担がかかっています。
それが当社の技術なら、健康診断などで使うCTスキャンのデータさえあれば、樹脂や石膏で実体モデルが短時間に作れます。それにより術前のシミュレーションができるようになり、オペ時間の大幅な短縮や、患者さんの負担軽減が見込めます。
顎や歯に関するそれらの症例は全国で年間3万例くらいあると言われています。当社では心臓や腎臓、膀胱などの臓器診療への活用と、美容整形の分野などへの活用も含め、積極的に対応しています。
伊藤 光造形技術は、直接人を助ける役にも立つのですね。素敵ですね。
渡邊 ありがとうございます。よく「この症例のオペができるのは世界で一人!この医師だけ!」という類の話を聞きますが、私は、それはまずいんじゃないかと思うんですよね。できる人間が一人いるのなら、それを10人、20人と増やしていく道を考えるのが本筋だと思うのですよ。そのためには技術を継承するためのツールが必要です。昔は動物の臓器や献体で提供された臓器を使ってトレーニングしていましたが、今は時代がそれを許さなくなり、精巧な実体モデルのニーズが高まっています。まずはそれを作る技術を育てる事業に行政も力を入れていまして、当社も協力させてもらおうと、10年も前に手を挙げさせていただきました。
伊藤 10年がかりとは、じっくり取り組まれてきた事業なんですね。
渡邊 そうです。医療に対する要求がどんどん高度になり、昔は「治ればいい」だったものが、今は「見た目もきれいに治してほしい」に変わっています。手術をしても傷跡はなるべく小さく、できれば誰にも分からないようにしてほしいというように、医療が求められる審美的な要求水準も高まっていますので、その部分でお手伝いができれば、技術と提案力を売る成形会社として実にやりがいがあると考えています。今後はメディカル分野にさらに力を注いでいきたいですね。
伊藤 社会の動きと連動した、非常に意義のある事業に育ちそうですね。

渡邊 10年以上の協力を通じ、骨格や臓器に関するデータはしっかり蓄積しています。そのうえで独自の成形加工技術や素材技術をさらに活用し、当社ならではのスペシャリティを発揮できる大きなチャンスだと捉えています。
実は、個人的に入れ込みたい気持ちもあるんです。私はボクサーだった頃は人を殴るのが商売でした。いわば、人を壊す側でした。それが今は人を治す側にまわれて、患者さんからお礼のお手紙をいただいたり、術後の写真を見せていただくことも増えてきました。これでやっと、少しは罪滅ぼしができているかなと。だから頑張って続けていきたいんですよね。



