株式会社 キズナフーズ 代表取締役 谷口友啓
築地一代。固い絆を社名に掲げ
躍進を続ける鮮魚仲卸業

岡安 まさに体当たりで仕事を覚えていったわけですね。それだけお客様と親しかったということですよね。
谷口 料理人の方も含めて、築地の人間は、たとえ喧嘩になっても翌日にはケロッと忘れています。そのくせ、人情味に溢れているんです。その気風が、実に自分の肌に合うんですね。仲卸の社長も競りの方々に「こいつは俺の息子だから」と紹介して歩いてくれて、それが嬉しくて嬉しくて、魚の目利きを真剣に覚えるようになりました。
熱い仲間たちとの出会いから始まったキズナフーズ

岡安 現在、キズナフーズ設立から3年目ですが、独立されるまでの経緯は?
谷口 その仲卸の会社に骨を埋めるつもりでしたが、倒産してしまったんですよ。仕方なく他の会社に入ったのですが、その頃にはもう5年修業して、魚の目利きや売り方を完全に身につけていましたから、新しい会社では物足りなく思っていました。
築地の世界は、1,000円の魚が2,000円に化けることもあります。目利きの良さでも変わりますし、その日の相場も左右します。また、「明日は時化るぞ」という情報も影響します。それらを全部含めた、何ともいえない全体の雲行きで、品物の価格も利益も大きく変わります。それをつかむ醍醐味を覚えてしまうと、雇われの身では全然物足りなくなってしまうわけです。私も、最終決定権を持てない状態や、稟議や判断を仰ぐといったことに嫌気がさしていました。だから、自分が思うような会社を作り、水産業で生きていこうと決心したんです。
その気持ちを、魚の貸し借りをしていたような親しい仲間たちに打ち明けると、「面白い!ぜひ俺たちも一緒にやらせてくれ!」ということになりまして、「いっちょ皆で大きくしていこうか」ということで、創業メンバーの5人が集まりました。
岡安 仲間たちの“絆”から始まった会社だから、社名がキズナフーズ。

谷口 そうです。この商売は、お客さんや仲間との信頼関係が一番大切なんですよ。それを言葉で表したいと思っていたら、誰かが「僕らって家族でしょ。だから、“絆”が大切でしょ」と。本当は漢字で“絆”でも良かったんですけど、将来的には水産も含めて幅広い分野に事業を拡げていきたいということで、“キズナフーズ”という片仮名の社名になりました。
岡安 熱い気持ちが込められた、素敵な社名だと思います。仲間の存在も心強かったでしょう。
谷口 創業当初はお金が出ていくばかりで本当に厳しく、私も20代の頃の自分に戻ってお客様のもとを一軒一軒回るところから始めたのですが、仲間たちが「魚河岸の基本を忘れるな」と励ましてくれて、築地の店舗や車を常に綺麗にして手伝ってくれて、本当に大きな支えになりました。
現在、仲卸事業のほうは、多店舗チェーン展開が持ち味の流通系企業を対象に魚の目利きを代行・納品する事業モデルを確立し、ようやく軌道に乗ってきました。苦しい中でも仲間たちとの“絆”の強さを確かめることのできた素晴らしい創業期だったと、誇りに思っています。



