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 そんな訳で、(1)、PFIって何? (2)、サーマルリサイクルってどうやるの? (3)、生物多様性への対応ってどうする? (4)、地方自治法が抜本改正されるって? などなどは、税理士業務専担で業務を行う人は案外関心を示さない部分かもしれませんが、私は大いに関心があります。(1)(2)(4)はこれまでに私が行政監査で扱った事象、(3)は私が社外監査役を務めるある上場会社が 「環境経営度調査」 で業界ランキング2位の企業になったものの、この生物多様性への対応が不十分との結果が出され、「なにこれ?」 となって関心を持ったテーマです。
 今回の連載でも、追々これらのテーマが出てくると思います。ぜひよろしくお付き合いください。
 
 
 さて、原稿執筆時の 「日本経済新聞」 のトップ記事は 「地方自治法を抜本改正」 となっています。この2年、ある地方公共団体とのお付き合いで、お役所の体質をつぶさに見て感じることがありますが、「なぜ民間とこんなに違うんだろう」 と自問自答しています。そこで、連載の初めは、公認会計士による行政監査の視点から公会計を覗きこんでみましょう。
 
 

予算単年度主義と予算準拠主義

 
 数多くの公益法人と、深く、そして長い間、関わってきていますが、それに加えてこの2年間の包括外部監査で、行政の方の会計に対する発想にも身近に接しています。
 民間の場合は、1000円の貨幣価値のあるものを1300円の価値に作り変えて、すなわち300円の付加価値をつけて物を売りますね。すなわちこの300円の付加価値こそ、民間の知恵であり、利益の源であり、企業存続の大前提です。 
 しかし行政は、民間企業がその活力と知恵をもって生み出した利益に対する課税をして租税収入という形で民間から絞り取ります。まあ言ってみれば社会生活を営む上での会費みたいなものですが、あえてそういう言い方をさせてください。
 従って収入を得る過程での工夫は必要でなく、誤解を恐れることなく表現すれば、「使うことだけ」 を考えればよいわけです。つまり予算準拠主義、予算内決算です。
 公益法人を例にとってみれば、総会や評議員会で承認された事業計画にもとづいた収支予算書の支出予算の額が、事業執行者である理事に与えられた支出限度額となります。従って、予算超過支出は認められませんから、予算と決算の比較をした収支決算書がマイナスになることはありえません。
 もっとも、あちこちの公益法人の決算書を見ますと、この原則的な予算準拠主義、予算内決算の考え方があるにもかかわらず、平気で予算と決算を比較した、収支計算書上△印のついた決算書 (予算より決算の額が多い決算書) が、まだ現存しています。そして、地方自治法には支出についての効率性、有効性、経済性等が謳われてはいますが、民間のように工夫をして (経費を削減して) 付加価値をあげるという発想が無いうえに、予算単年度主義ですから、次年度予算獲得に向けての予算の使い残しは嫌われます。
 
 私の思うところ、この予算準拠主義・予算単年度主義が、実に様々な弊害を国、地方公共団体にもたらしているんです。予算単年度主義、予算準拠主義の弊害そして、地方公会計制度の改革の必要性は、次回で触れさせていただきます。
 
 
 
 
 
 

 プロフィール 

渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe

公認会計士・税理士

 経 歴 

早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。

 オフィシャルホームページ 

http://www.watanabe-cpa.com/

 
 

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