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スポーツ 上原浩治のTrust Pitch! vol.20 任務をきっちりこなす仕事人 上原浩治のTrust Pitch! ボストン・レッドソックス投手

スポーツ
 
 こんにちは、上原浩治です。
 日本もそろそろ秋の気配が漂い始めた頃でしょうか。ボストンはもともと「暑い!」って感じるほど酷暑ではないけど、デーゲームでちょっと暑かったり、先日は1日だけ、ブルペンで暖房をつけた日もありました。気温の差もあるから、コンディションへの気配りが欠かせません。ピッチングは寒くなればなるほど、ボールに滑りが出てきてしまうので、6年目に入った今も、何が一番いい対策なのか日々研究中です。
 
 

若手がチャンスをつかめるかどうか

 
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 今シーズンもあと一ヶ月を切りました。昨年と今年はずいぶん違う印象を持ったファンもいるかもしれません。この2年で最も大きく違うところは、やはり昨年の優勝の影響かな。それも悪いふうに出てしまった。
 
 キャンプのときにね、ちょっとした優勝ボケというか、やはりどことなくそういう雰囲気があって、それを回復させられるようやってきたんですけど、主力がトレードでいなくなったりして、戦力のバランスが大きく変わった。それだけでも十分難しい状態になっているなというのは感じます。
 
 でも、メジャーではトレードなんてしょっちゅうある話ですし、主力が抜けたから「もうアカン……」なんて悲嘆に暮れてはいられない。こういうチャンスを若手がしっかりつかんで、新たな主力が出てくればいい。そう思っていますね。「メンバーは変わったけど、やるべきことはひとつ」というのは監督もぼくも、たぶんチームメイトの大半が同じ気持ちなんじゃないでしょうかね。
 
 

夏の天敵・モチベーションダウン

 
 夏場はどのチームもモチベーションを維持していくのが難しいものです。リーグが始まって夏前に折り返しを迎え、そこから体力的にも精神的にもどうしても疲れとどう向き合うかが課題になってくる。そういう中で戦っています。
 特にプレーオフを争っていないチームは、非常にモチベーションを保つのが難しい。逆にプレーオフを争っているチームは、まだ緊張感を繋いでいける。
 ただ、モチベーション云々をごちゃごちゃ言っている場合でもない。結局は毎回頑張らないと、打たれたらダイレクトに自分の将来に跳ね返ってくるわけです。自分が打たれたら自分の責任。誰のせいにもできません。
 
 

チームの色

 
 レッドソックスにもチームの色があるように、対戦チームにも、もちろんそれぞれの“色”があります。会社や部署にもあるでしょ? たとえば、先日のヒューストンだったら、伸び盛りの選手が多いチームだし、若手が多いのでどんどん振ってくる。まっすぐに対しては本当に素晴らしいバッティングをしてくる。ドラフトも上位の選手ばっかりだからね。
 連戦の初日にはもちろんチームミーティングもしますし、ぼくの場合は、それも踏まえて、その時の試合で感じることを頭においてピッチングをしています。
 
 

仕事ができる人の条件

 
 ぼくはメジャーでももう、6年も経験しているので、「まわりに流されないように」という意識は常にある。だからそれほど自分で自分のことを心配してないのですけどね。
 
 野球において仕事ができる人ってね、たとえばピッチャーだったら、先発なら先発の仕事、中継ぎだったら中継ぎの仕事、つまり役割にきっちり集中して、その役割をこなせる人だと思うんですよ。ぼくの立場だったら、クローザーとして登板しているわけだから、試合をバッチリ締めきれないと仕事をしたことにならないわけです。3点差が開いているならば、2点まではとられてもいい。でも、残り1点を完璧に抑えて、自分自身の手で試合を締める。先発のピッチャーだったら、6回を投げて3点内におさめるという最低限の目標があるわけで、中継ぎはその場その場、与えられたシーンで目の前の相手を仕留める。ピンチで出て行ったりしなくてはならないからね。いつも言ってるけど、本当にしんどいポジションだと思う。でもそれをやって、はじめて「仕事をした」ということになるんです。
 
 
 ビジネスにおいてもそうだと思います。一人ひとりが与えられた役目をこなしきらないとチームが勝つわけがないし、成績も上がるわけがない。それを支えるのがモチベーションなわけで、そもそもモチベーションが下がってしまうのは仕事に対する準備ができてないということにもつながってくるんじゃないでしょうか。
 
 

若手が陥りやすい落とし穴

 
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 やはり「勝ちたい」という気持ちを奮い立たせなくてはどうしようもないですね、個人個人が。優勝がダメだと思ってしまうと、体の奥から湧きあがってくる気持ちがないので、どうしても全力を出し切れない。それがわかったうえで必死にやらないとチームを去っていくことになるだけ。サボったら、そのぶんのツケはどっかで来てしまうんですから。逆に、頑張れば頑張るだけ、それも自分に返ってくるから、次のステップへつながる。そうすれば、いい思いをして、いいイメージを残してシーズンを終われるので、やるっきゃないわけです。勝ったらみんな笑顔になるしね。
 
 若い選手は「ここで手を抜いたら、自分の今後に関わる」という意識が薄いと、シーズンが終わっていってしまう。メジャーリーグは第三者が懇切丁寧にアドバイスしてくれて保護してくれる世界じゃない。ダメな選手はただ落ちていくだけ。日本のように下に50人くらいしかいないシステムじゃなく、700人くらいいますから、代えなんていくらでも利く。そういう危機感を持たない個人はチームにいい影響を与えないし、危機意識を持たせられない球団も個人にいい影響を与えないのは間違いないですね。
 でも、それはどん底を経験しないとわからないものですし、自分で気付くしかありません。
 
 ぼくだって、いつ首を切られるかわからないという状況ですから、やはりいつも最後に言えるのは同じことばかり。とにかく目の前にある打者を抑えること、試合を締めることだけに集中する。その繰り返しです。シーズンの最後まで気を引き締めて“仕事人”をやりぬきますので、これからも応援よろしくお願いします!
 
 
 
 
 
 
 

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