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人の道が一流企業を創造する
 

  前章の知的資産経営でふれたように、人が経営の根幹をなすのは古今東西において同じだ。なぜならモノの世の中でもなければ、金の世の中でもなく、人の世の中である。
 人の社会、世の中において、人が精神的(意識的) に成長していくプロセスを考察し検証しなければ、知的経営体、すなわち一流企業に至ることはない。
 知的経営は人の道を実践することで完成し、企業の責務は人材を人財にすることで果たされる。人材を人財に変えるということは、企業が永久的に繁栄する近道であり、避けて通ってはならない。また、それが一流の知的企業への道でもある。
 人の道は企業経営において何よりも優先されるべきで、組織運営において必要なテクニックやスキル、マネジメントは、人の道=考え方の上に成りたっていることを認識しなければならない。つまり、テクニックなどの枝葉末節的なことを目的化していては、一流の知的企業になりえないということであり、まずは人間を磨くことから始めなければならない。
 最終の第5章では、人を育成するということに焦点をしぼって話を進めていきたい。
 
 
 

すべてを慈悲でゆるす心「恕」
人の一生は自省の繰り返し
 

 人は生まれながらにして慈しみの心を持ち、その反対に悲しみの心も持っている。仏教の教えである慈悲がそれだ。絶対的なものはなく、すべてが相対していると説く。人と人が関わりあうことで相対性が生まれる。そこには、人間形成の基になるコミュニケーションがある。
 またコミュニケーションは、その中で周囲の人たちから自分を発見できる。そういう発見は、人としての資質である素直さや謙虚さをつくってくれる。
 素直さや謙虚さというのは、具体性を持たせて言うならば 「頭の中を空っぽにする」 ということだ。空っぽにすることができれば、自分自身を見つめなおして反省する心が芽生える。つまりは人への思いやり、労り、優しさができるということである。
 素直さと謙虚さが根底になって、「問題が起きた原因は、自分側にある」 という考え方ができるようになる。相手は悪くない、事が成就しないのは、自分の考え方や行いに問題や課題があり、まちがいが起こっているという反省だ。
 この反省は、素直さと謙虚さに裏づけされている。そして、反省は必ず喜びへと変化し、生きる喜びが、命に感謝することに繋がっていく。
 すべての事象を慈悲で覆い尽くそうという 「恕」 の 「ゆるす」 心がなければならない。人の一生は自省の繰り返しと言ってよい。
 
 自省の心 「恕」 というのは、頭の中を空っぽにするということに置きかえてもよい。しかしながら、空っぽになったつもりが空ではなく、頭の器の底には澱のような滓が溜まっているときが常だ。
 その滓は、子供のころから、知らないあいだに「躾け」られてきた親の教えと言ってよい。ほとんどの場合、親の考え方、育て方で子供の成長が決まると言ってもよい。
 それが、潜在意識下にヘドロ状態になって溜まっている。潜在したヘドロのような心は、子供のころから身体で覚えてきたことなので、なかなか抜けない。刷り込み作用で一杯になったヘドロの腐敗した心は、潜在意識下でヌクヌクと育成され成長している。
 自分では、空っぽになって、素直に謙虚に、自省を繰り返して生きているつもりが、実は、ヘドロが腐敗した 「自分さえ良ければ、それでよい」 という利己的な考え方で、発想し判断している。だから 「すること、なすこと」 すべてがマイナスに働いており、コミュニケーションがないため、周囲との協調もなく失敗の連続となる。
 それでも 「自分は悪くない、正しい」 という 「我」 を押しとおすことを繰り返す。
 生きていくうえにおいて、大切なことは 「自省する」 という一語に尽きるといってよく、慈悲の心、すなわち人の悲しみを自分の悲しみにできる 「慈しみの心」 を磨くところから出発しなければならない。
 そこに気づいて 「自浄」 すなわち反省である。自省を朝な夕なに繰り返して行うこと、それが人生の第一歩である。
 そういう心を持っている人には、なぜか求めているわけでもないのに、不思議と理解者や味方が多くいる。なぜなら、素直であり謙虚さの中で生きているからだ。それが、頭の中を空っぽにしているということである。すなわち 「恕」 である。
 相手の立場にたち、人の役に立とう、世の中の役に立とうする心が成長しているからだ。素直に人の話に耳を傾けて、謙虚になって、人の話を実践してみる。実践して出てきた答えの反省を繰り返して、次に、また、挑戦する。その繰り返しが大事であり、選択肢がたくさんあるのがよい。
 
 
 

株式会社ハッピー 橋本英夫 イノベーション基礎学

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