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知的資産経営がイノベーションを起こす 〈其のニ〉

 

金融機関と行政への提言


しかし、金融機関が知的資産経営を学ぶ必要がある。
現在行なっている金融機関の主な業務は、短期的な金融商品を作り、その営業に日夜奔走していると言ってよい。
企業と向き合って、経営資源である人的資産・組織資産・関係資産などの情報を集合させて、企業の成長性・持続性などを正しく評価することはしていない。
したがって企業経営の実態把握調査など到底できるような状況にはなく、金融行政のあり方によって、金融検査マニュアルなどの信用格付けによる画一的な判断を強いられているのが実態であると言ってもよい。
信用格付けでは、定量的な財務諸表だけで判断される傾向にあり、定性的な人的知識要因は、ほとんどの場合は削り落とされる。企業が自社の“目に見えない”強みに気づかないだけでなく、評価する金融機関も、それら企業の強みに目を向けようとしない。
しかし、金融機関もサービス業であるからには、中小企業が持つ知的資産の評価基準を新しく構築しなおして融資を増やさなければならない責務を持っている。この構築には会計基準を見直す法律の制定など、その法制度化に困難はつきまとうだろうが、モラトリアムとは別次元の検討が必要である。知的資産が会計・税務的に法制度化できれば、中小企業の成長度は飛躍的に伸長するであろうことを予測する。

 そこで提案であるが、金融機関も各企業が持つ商品やサービスを評価できるノウハウを作ってはどうか。
つまり、特別な「金融目利き委員」を作る。急務として、企業の知的資産を評価できるノウハウを身につけた目利き委員会を創設する。そのうえで、政府主導のもと、金融機関の目利き・政府関係委員の目利きに従って一定枠の中小企業貸し出し融資特別枠の設置を金融機関に義務づけたものを法制度化する。このほうが、(返済期間を猶予するよりも=モラトリアム)よほど企業に成長力が増し、国の成長戦略が生まれ未来に夢ができるというものである。(知的資産等と知的財産等の融合、かつブラックボックス化したノウハウを構築している企業の選定=政府認定)

 

 

経営の全ては人に帰結する


中小企業の知的資産経営を政策によって支えることは時代の急務である。モラトリアム(債務返済猶予)で後ろ向きになっている経営を救うことも必要であるが、それより以上に必要なことは、中小企業のノウハウ(知的資産)を育成することが、国家の経済成長戦略として急務である。それには、中小企業の知的財産の運用や活用が不可欠であると前述してきた。
多種多様な企業をクロスさせて、息吹を吹き込むことも大切なことであり、また企業と学術研究者との融合も必要となる。国を挙げて取り組んでもらいたいと強く要望するところである。
さらに視点を広げれば、学究的な最先端技術だけに目を向けるのではなく、成熟したサービス業であっても、ありふれたサービス業であっても、一定の技術や特異・特別なノウハウや知的資産(政府主導の目利き委員会の創設によって特定する)があれば、先でも触れたが資産担保価値評価するという会計基準の見直しをする。
政府は、最先端技術のような目新しいことだけに目を奪われるのではなく、生活に根づき、地域に根づいた企業の知的資産を掘り起こしていくことを政策的に行わなければ、中小企業の知的資産は宝の持ち腐れとなる。
誰でもが、華やかさを追い求める。しかし、それではロングライフ商品やサービスは生まれない。つまり、老舗と呼ばれる100年、200年企業が育たないということに他ならない。
重ねて書くが、政府が政策として 「草の根」 的にある中小企業の財産・知的資産を育成する。併せて、知的資産経営企業の会計基準と税制を見直して法制度化すれば、多くの中小企業の活動が活発化して国内需要が活性化し、新たな雇用創出も可能になる。

 「知的」 ということは人間の特権である。人の営為の集積である企業活動を見る際も、「知的(知識・知恵・英知・ノウハウ)」 という観念的要素を正当に評価し、知的資産を資産価値評価として認める法的整備を急いでほしいと思うところである。
そして経営者は、自企業の人材の育成を急務としなければならないのは言うに及ばない。つまり経営のすべては人に帰結するという理由からである。

 

 次の第5章では 「人材を人財にする」 というテーマで書く。


 
 

 執筆者プ ロフィール 

橋本英夫 Hashimoto Hideo

株式会社 ハッピー 代表取締役

 経 歴 

1949年、兵庫県生まれ。高校卒業後、大型プラントで使用するバルブや弁のメーカーに技術者として就職。蒸気の流体制御機器の設計に 携わる。75年にECCハシモトを設立、浄水再生装置の製造を始める。79年石油系溶剤浄油再生装置を開発し、(株)京都産業を設立。「 ハッピークリーニング」の名称でクリーニング店の経営にも乗り出す。その後、2002年に(株)ハッピーを設立し、従来のクリーニングの 常識を覆す『ケア・メンテ』という新業態を創造して普及に尽力している。2005年、一般消費者に対する啓蒙活動団体としてNPO法人日 本洗濯ソムリエ協会を設立。2006年に、従来の洗浄理論を覆す世界初の「無重力バランス洗浄方法」を発明し、方法論特許・装置特許を取 得。シルエットや風合いを保ったままの「水洗い」を実現し、地球環境に優しく人体に悪影響を及ぼさない画期的な洗浄方法として、世界から も注目を集めている。

 オフィシ ャルホームページ 

http://www.kyoto-happy.co.jp/

 

 

 

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