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ビジネスコラム 経験的ノウハウと専門的知識、そして専門家だからこその独創的な視点。月ごとのテーマに即した特集の他、各分野のエキスパートが、ビジネスに活用できる「知」と新たな視野を提案します。

株式会社 DWC 経営コンサルタント  佐藤康弘 「コンサルの花道」 -喜の章-  あるベテランコンサルタントの感動を、

 
 皆様はじめまして。経営コンサルティングを生業としております、株式会社DWC の佐藤康弘と申します。経営コンサルタントとして仕事を始めてから、早25年が経ちました。その間、様々な企業様とのお付き合いを重ねて参りましたが、今は、旅館業界をメインにコンサルティングを進めております。
旅館業界。そう、ほのかに湯気が立ち上る露天風呂と、美味しい料理が楽しめる温泉旅館です。北は北海道から南は九州まで、クライアントの旅館は全国各地にいらっしゃいますから、毎日が出張続き。年間約250日は、自宅以外に泊まる生活を続けてきています。

「仕事とはいえ、温泉旅館に毎日泊まれていいなぁ…温泉入り浸りじゃん」 という羨望の声が聞こえてきそうですが、なんのっ!仕事が終わって、疲れ切った身体を引きずって部屋に戻ると、布団にバタンキュー。お風呂にすら入らないこともフツーのこと。食事と言えば、試食が続きますから、一気に3人前を食べるなどという難題も待っています。食事をゆっくり…なーんてことは、夢のまた夢。和食を食べ続けていると、ふと食べたくなるのはカレーやトースト。確かに、何とも贅沢かもしれませんが…。
毎日毎日、飛行機で、列車で。あるいは車でと移動を重ね、食べて走って話をして書いて。そんな仕事をしているのが、私です。
 
 よく言われます。「大変な仕事だよね!」と。
クライアント企業の業績にも責任を持たなきゃなりません。人が辞めると聞けば、飛んでいき、話をして思いとどまるよう説得することもあります。夜中に、若い子たちからのメールも届きます。大きなクレームが出て、どう対処するのがいいですか?と、緊急のメールが入ることもあります。師である船井幸雄先生から最初に教わった「24時間仕事をしなさい」という言葉の、本当の意味が分かった時、こりゃ大変な仕事かも…と、改めて感じたこともありました。修業時代の年間労働時間は4千時間超なんて当たり前でしたし。
 
 しかし、その大変さ以上に、この仕事の素晴らしさや楽しさが分かった時、自分の中で 「この仕事で頑張ってみよう」 と、確信したのだと思います。
 
 


涙を流して信じてくれた、山形での仕事

 
 その強烈な印象を与えてくれた一つが、山形にある、とある宿の仕事でした。宿全体のサービスレベルを上げる。社員のモチベーションを上げる。社員自らが動く会社にするというご依頼でした。とても難しいご依頼ですが、やりがいは十分。社員の皆さんを主人公にした宿の改革を進めていきました。
と、ちょうどその時、私にTVカメラが張り付き、とある番組を作っていました。「旅館業界のコンサルタントの活躍」 みたいなテーマの番組です。宿の改革と撮影は同時に進みました。そしてTV放映。ところが、放映された番組を見た客室係が 「私たちの普通の姿じゃないっ!」 と怒り出したんです。そりゃもー大変です。涙を流し、声を大にして 「佐藤さんは嘘つきだ!」 となりました。
 
 すぐ宿に飛んでいき、客室係1人1人と話をしました。リーダークラスの方々を皮切りに、じっくりと話をするしかない。皆さん、私より十も二十も年上の方々です。旅館業界のキャリアも長いのは当然です。そんな方々が、涙を流しながら同じことを口にしたのです。
「佐藤さんは、私たちの大変さを分かってくれていると、本当に信じていた。今まで接してきた、どのコンサルタントの先生方よりも、現場の事を分かっていてくれて、私たちと同じ目線で考えてくれている人だと思っていた。なのに、あの番組を佐藤さんが認めたっていうことは、やっぱり私たちのことを分かっていなかったんだ。それが悔しい」 と。
 
 1人1人と、じっくり話をしました。TV撮影から放映までの流れを説明し、プレビュー自体見ていないことを話し、そもそも番組の趣旨自体が私の意に沿うものではないことを、ゆっくり説明していきました。何よりも 「私も皆さんも、TV番組のために頑張ったのではない。自分たちのために、会社のために頑張っているんじゃないか…etc」 と、話を繰り返しました。
翌日には皆さん理解してくれて、「やっぱり佐藤さんを信じて良かった…」 と、全員が涙を流してくれたんです。手を握ってくれたんです。
 
 


今日もまた、お客様のもとへ

 
 『佐藤さんを信じて良かった』
 コンサルタント冥利に尽きる言葉です。何よりも嬉しい言葉です。
 信頼関係がコンサルタントとしての必要条件であることは間違いないこと。が、分かりやすい言葉だからこそ、その実現が難しい。仕事として、形式的にお付き合いをしていては、そんな信頼関係は生まれないのです。クライアントの懐に入り、本音で話ができるようにならないと、不可能なのです。
 当時、上司から 「少しクライアントへの訪問頻度が多すぎないか?」 という指摘を受けましたが、ご依頼内容を実現するには仕方ないんですと言い切ってご訪問を重ね、一緒に働き、考え悩んできたからこそ、皆さんと同一目線で話せるようになった。考えることができるようになったんでしょう。少なくとも、私はそう思っています。
 
 確かに大変な仕事かもしれません。休みもなく毎日東奔西走。時間も不規則です。が、その代償として “クライアントの成長を間近で見られる” という喜びがあります。成長や成功、そして信頼関係の構築を、身をもって感じることができます。忙しい日々が、報われる瞬間があります。これが、よく言われる 「やりがい」 なんでしょうね、きっと。
 
 「身をもって感じることができる」。それは社員各位の内的な進化・変化だけではありません。料理の改革なら、目の前に並ぶ料理が、劇的に変わります。前菜…造り…椀物…というフツーの流れで出されていた料理が、出てくる順番も変われば、料理そのものも変わる。献立を見て思わず 「どんな料理だろう…」 と考えてしまうような料理への変革を、目の当たりにすることができる。それが何よりも嬉しいですし、自分の喜びなのです。それがあるから、大変な毎日でも、ウキウキした気持ちで、クライアント企業へと足を運ぶのです。
 
 そして何よりも、こちらがお金をいただく立場であり、こちらが丁重にお礼を言うべき立場にも拘わらず、お客様から 「ありがとうございました」 って…。それは、こちらが発する、言う言葉なのに、お声を掛けていただける。この喜びこそが、経営コンサルタント業が素晴らしい職である証かもしれないですね。
 だから今日も頑張ろうと思い、出張へと向かっています。
 
 
コンサルの花道(次回、“怒” の章へと続く)

 
 

 執筆者プロフィール 

佐藤康弘 Yasuhiro Sato

経営コンサルタント/株式会社DWC代表取締役社長

 経 歴 

宮城県出身。大学を卒業後、経営コンサルティング会社大手の(株)船井総合研究所に入社し、衣・食・住をはじめとした様々な業態・商材のコンサルティングを手がける。2005年末、同社を退社。個人事務所としてコンサルティング業務を継続し、2009年に(株)DWCを設立。以来、特に旅館ホテル業及び飲食業界のコンサルティングを得意とし、同業界のみでも100軒以上に携わってきた実績を持つ。

 オフィシャルホームページ 

http://o-dwc.com