バブル崩壊後、かつてない不況の時代に突入したと言われる昨今、多くの会社が打開策を模索しています。消費が冷え込み 「安売り」 だけが市場で受け入れられた結果、デフレスパイラルに陥りつつある日本を、何とか元気にしたいものです。
我々のようなコンサルティング会社は、新しい発想やノウハウ、あるいは専門的知識をクライアントに求められるものですが、この厳しい時代に 「特効薬」 となるような効果を期待される方も少なくありません。しかし、会社にとって画期的な経営戦略を部外者がもたらすことができたとしても、それを実行へ移すのは社員一人一人に他ならないのです。経営戦略の前に、社員一人一人について考えてみることも必要ではないでしょうか?
<組織は人の集まり>
当たり前のことですが、会社組織は人の集まりです。決して機械が組み合わさって動いているのではありません。機械であれば機能を考慮し、効率的に配置することで、導かれる結果が予測できますが、人間はそういうわけにはいかないのです。学歴や経験、能力を考慮し、戦略的に配置して事業計画を配布したところで、経営者が期待するような結果が出せるとは限りません。ITバブル期に 「経営者マインド」 という言葉が流行りましたが、これは「社長と社員が同じ考え方なら単純に会社は成長する」という安易な発想の典型だとも言えるのです。立場や責任の異なる者が同じように考え、行動すること自体、よく考えてみればおかしな話です。機械と人間の最も大きな違いは人格の有無です。同じような年齢、学歴、経験、能力でも、それぞれに全く別の人格を持っているのが人間です。それゆえに、指導する者、上に立つ者の考え方や接し方で会社の業績は大きく変わるのではないでしょうか?
ある社長が、有能な中間管理職を大企業からヘッドハントして会社の再生を託したことがありました。彼はその会社が今までに取り組んでいなかった様々な戦略を立案し、実行していきました。その結果、社員のモチベーションは少しづつ上がり、業績も回復の兆しを見せ始めていました。ところが、日々資金繰りに悩む社長は、彼に「この程度の成果なら誰でも出せる」と言い放ち、彼を全く評価しなかったのです。その後、彼と社長の間にできた溝は深まるばかりで、会社が再生することはありませんでした。
このように、社長や上司のたった一言が部下の士気を失わせ、会社そのものを台無しにしてしまう事例はいくらでもあるのです。
<文書では表せないこと>
会社は多くの人が集い働く場所ですから、計画や決定事項を文書化することは重要なことです。ただ、そこで働く人々の、文書にできないような個々の人間的感覚がどれだけ研ぎ澄まされているかが、会社の成長に大きく関係しているとも言えるのではないでしょうか?例えば、仲間に対する 「思いやり」「感謝」「気遣い」 といったものを文書にしたらどうなるでしょうか?
「社員同士が思いやりと感謝の気持ちを持って、互いに気遣える職場を目指す」
こんな理念や行動規範は多くの会社で見ることができますが、実際にその言葉通りに会社が運営されているかと言えば、いささか疑問です。「思いやり」 と言えば、体調の悪そうな同僚に声をかけることもあれば、落ち込んでいる部下を食事に誘うこともあるでしょうが、人によってはそっとしておいた方が良い場合だってあるのです。「感謝」 についても、ありがとうの一言だけでなく、態度や行動で示す感謝もあるはずです。つまり良好な人間関係とは、実際にその人とどれだけ向き合い、相手の立場で考えてきたかによってのみ形成されるものなのです。単純に文書化して、「明日からこうしましょう」 と言って一朝一夕にできるものでは決してありません。
<戦略実現の前にすべきこと>
“飲みニケーションなんてもう古い” と考える経営者の方も増えていますが、お酒の必要性は別としても、社内の対話なくして会社の成長はありえないと思うのです。もしも、やるべき業務を個々が淡々と遂行し、プロ意識を持って取り組みさえすれば運営が成り立つのならば、そもそも会社なんて必要ないのです。ネットがここまで発達し、移動手段、連絡手法がいくらでも存在する現代においても、なぜ同じ空間に机を並べて作業するのか。それを考えてみましょう。その空間にいる人たちが生き生きと仕事をしているから、新しい発想や助け合い、シナジー効果が発揮されるのです。
今年の事業計画を大きく打ち出すことも大切ですが、それを社員一人一人が本当に自分の夢の実現ややりがいとして受け取り、あるいはそこにいる仲間と一緒にやっていくのだという思いになっていなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。何かに取り組む前は、それに関わる社員が互いに向き合って同じ方向を向いているかを確認しなければなりません。もしも社内に悪い空気が流れていれば、“窓を開けて喚起すること” が第一歩だと言えるのです。
執筆者プロフィール
園田幸央 Yukihiro Sonoda
株式会社 リガヤパートナーズ 代表取締役
経 歴
医療法人社団の経営者として10年以上経営に従事。その間、フィットネス、コンサルティング、ITなどの複数の法人を立ち上げ、各代表に就任。2005年、経営者としての経験および起業家としての経験を活かし、株式会社リガヤパートナーズを設立。医療機関や製薬会社向けのセミナー・講演会等多数。
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