ページ内を移動するためのリンクです。

ビジネスコラム 経験的ノウハウと専門的知識、そして専門家だからこその独創的な視点。月ごとのテーマに即した特集の他、各分野のエキスパートが、ビジネスに活用できる「知」と新たな視野を提案します。

アシストワン 有限会社 代表取締役 玉川 卓生 5回目 デフレスパイラルの真只中にいる日本経済の状況を受け、事業経営にとっての売掛について、あらためて考えてみます。

売掛について、もう一度考える。
 
  日本経済は今、デフレスパイラルの真只中にいます。デフレとは、供給>需要の状態となることです。この結果、物価が下落し、企業収益が悪化し、普段よりも多く倒産やリストラが発生し、大量の失業者が生み出されます。失業者の購買力は当然低いですから需要が落ち込みます。大量の失業者を目にしながら将来に不安を抱かず消費を続ける人間はそうはいません。つまり、一度デフレになった社会の消費性向は通常に比べて確実に減少します。かくして需要が落ち込み、供給過剰の状態は続き、また倒産やリストラが・・・この悪循環が「デフレスパイラル」です。
 
 現在の商取引は、その9割以上が売掛とか掛け売り等と呼ばれ、後日の支払期日を設定して支払い約束を交わし、商品等を先に納品する商法です。その昔、商取引は物々交換から始まりましたが、やがて貨幣ができ、物と現金の交換ができるようになりました。さらにその後、取引の現場での即時交換ではなく時間差をおいての交換が可能になり、ここに売掛が誕生しました。さらにその後、現金ではなく手形等の金融システムによる商品が誕生し、さらに現在では、売掛債権の証券化、売掛債権担保融資あるいは売掛債権保証の保険商品まで登場して、経済は大きく変化してきました。
 
 このタイミングで、事業経営にとっての売掛について、あらためて考えてみたいと思います。
 
 
 売掛とは、代金は後で受け取ることを前提に商品を売る――後で代金を支払うことを約束してもらい、商品を先に渡してしまう――ことです。つまりこれは、厳密に言うと『未回収金を発生させること』です。この点を厳しく認識し、前提や約束にどれだけ真剣に取り組めるか、または、こだわれるかが、その売掛取引を成功させられるか、失敗に終わらせるかを決めると言って過言ではないでしょう。
 売掛取引のメリット及びデメリットは数多くありますが、『与信・管理・回収』を完璧にできれば、現金取引の何倍もの取引ができ、企業としての成長が早くなる点は大きなメリットです。
 
 与信について、新規取引の場合、皆さんは何をもとに信用度合を図りますか?
どんな取引でも、簡単に目に触れるデータに100%頼るのではなく、自身の足で情報を収集し、綿密な取引計画を立てることが大切です。
 会社運営上で新しい取引先を作ることは非常にプラスになります。しかし、いい加減な調査しかせず最終的に債権や売掛金を回収できない事態になった場合には、それまでにかかった自社の人件費や経費等を考えると、むしろ取引をしないほうが良かったということにもなりかねません。ですから、しっかりとした調査をして、優良な顧客を絞っておく必要があるのです。
 
 管理について、取引を開始すると決めた場合には、しっかりとした契約を結ぶことです。
 取引を行う時には、普通、何らかの取り決めをします。しかし、それが口頭だけであったり、いい加減な取り決めであるケースが多いのが実情です。「昔からの付き合いだから」「お得意さんの紹介だから」といった習慣的な要素に頼ってしまい、正式な契約を結ばないケースも多いにあると思います。
 しかし、この際、そのような傾向は全部捨ててください。取引の途中ではあらためて契約書等を交わすのもなかなか難しいでしょうから、最低でも、これから始める取引に関しては、正式な契約書を作成し、先方と取り交わすことをお勧めします。契約書を作成するに当たり、自社に有利な特約条項を入れ、忘れずに契約書に記しておく工夫も大切でしょう。
 また、日々の取引の中で、取引先の状況は絶えず変化しています。例えば支払いが遅れている取引先には出荷を停止したり、常に回収できる枠を設定し、売掛金がそれを超えないようにする管理体制を普段から作っておくことが大切です。
 
 回収については、請求の際の手続きがしっかり確立されていることが必要です。電話連絡をする際の話し方や対応、書面での督促・催告の仕方や時期、納入した商品を引き上げる仕方や時期、最終的に法的手段に至るまでの規準や体制等々が、社内で徹底されていなければなりません。
 
 参考までに、弊社アシストワンがサポートした事例から、未回収の傾向を分類してみます。
 
 
売掛金等の未回収に悩むことが多い業種 ベスト5
   広告代理店(Web広告・求人広告等)
   【未収になる理由:費用対効果がなかった/広告等の色や掲載場所に対するクレーム】
   印刷業(チラシ印刷・書籍印刷)
   【理由:チラシや書籍等の仕上がりに対してのクレーム】
   リース・レンタル業(建設重機・付帯設備品等)
   【理由:機械等の故障、破損】
   建設・建築業(リフォーム業・下請・孫請)
   【理由:仕上がりに対するクレーム・元請が発注先から回収できない】
   サービス業(情報提供・調査業)
   【理由:情報の内容や調査の内容に対しての、料金面での不満】
 
上記を見ると、一目瞭然、クレーム等による不払いが圧倒的に多いことが分かります。「払えるお金がないからもう少し待ってほしい」とか、「何年かかっても少しづつ支払います」といった言葉が出るのは稀です。
 広告代理店場合、その多くは、出来上がりのサンプルや原稿を確認して、了承のサインや押印をしているにも関わらず、「こんなはずではない」「サンプルと違いすぎる」との理由でクレームを付けられています。あげくに、販売した会社や制作会社側に全ての問題があると主張する取引先が多いのが現実です。
 また、「ではクレームをつけた商品はどうしたのか?」と聞くと、納品は終わっているのですから、クレーマーは当然、商品を使用したり、または自社の商品として販売しています。非常に性質(たち)が悪く、困った現象だと言えるでしょう。
 

有限会社アシストワン 玉川卓生