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ビジネスコラム 経験的ノウハウと専門的知識、そして専門家だからこその独創的な視点。月ごとのテーマに即した特集の他、各分野のエキスパートが、ビジネスに活用できる「知」と新たな視野を提案します。

アシストワン 有限会社 代表取締役 玉川 卓生 第4回は前号に続き、回収サポートに成功した例を紹介します。

 回収サポートに成功した例 (続き)

 
<事例3> 都内にある鉄鋼加工企業からの相談
 
 約1年半前頃から取引をしていたA社。当初の取引契約書で、毎月20日を納品完了及び締め日として翌々々月5日に代金を支払ってもらう約定を交わし、月間100万円から150万円の商品を受注、納品していた。
 取引開始から5ヶ月が過ぎた頃から支払い日が多少遅れるようになり、「約定どおり5日までに支払いができないのであれば取引を止める」と念を押したところ、翌月は期日前に入金があり、改心したのだと思っていた。ところが、翌々月の5日に再び入金が滞った。A社に電話連絡をしたが誰も出ず、とりあえずしばらく待ってみることにした。売掛残金は約360万円だった。
 約半月待ったが連絡も支払いもなかったので債権者はA社を訪問。しかし社には事務員しかおらず、要領を得ないまま日数だけが経過した。そのうちに月が替わり、さらに10日経過した頃、A社より1枚のFAXが届いた。内容は『支払いに関する報告・お詫びとお願い』との見出しで、
 
   A社社長が約20日前に脳梗塞で倒れ現在入院中であること
   買掛金の支払いを長期分割(月額10万円×36回)でお願いしたいこと
   社長代行兼務管理部長として第三者を指名すること
 
が記載されていた。しかし電話での連絡はなく、約10日後にA社専務と管理部長が来社し、改めて支払い遅延のお詫びと、今後の長期分割での支払いの承諾を求めてきた。債権者はA社の一連の対応を考えると納得できず、了承できなかった。かといって、今後どのように交渉すれば全額回収できるか方針が立たず、アシストワン社が相談を受けた。
 
 アシストワン社としては、A社に支払いの意思があり支払計画も提示されていることから、第三者立会いの下で、あらためて話し合ってもらうことにした。その際、双方が腹を割って協議することが肝心なので、A社専務と管理部長を債権者の企業に再度来社させ、アシストワン社も同席して話し合いの場を設けた。それでも明確な回答は出なかったので、具体的に「月々の分割額が10万円になる根拠」と「債務を履行できなくなった場合に誰が・どのように責任を取るか」等について詰め寄ったところ、A社専務も管理部長も十分な説明ができず、ただ「一生懸命頑張ってやります」「決して不義理は致しません」との言葉を返すのみであった。
 A社は社長が倒れて以来、新規受注がほとんどなく、それまでに入っていた仕事をこなしているだけの状況で収入が激減しているのは明白だった。アシストワン社としては、弁済を確約できる要素がA社に揃わない状況で協議を続けても無意味であると判断し、社に案件を持ち帰り社長とよく話したうえで期日までに明確な返答をするようA社専務と管理部長に念を押し、その日の話し合いを終了した。
 しかし、返答期日が過ぎてもA社からの連絡はなく、こちらから連絡してもつながらない。ここに至って、先方の対応に全く誠意が見られない点を債権者と確認したうえで、法的手続きに出ることを決定。相手方住所管轄の簡易裁判所に『支払督促の申立』の手続きをとった。
 
 支払い督促とは…… 金銭等の請求をする際に、金額に関係なく簡易裁判所に申し立てを行い、簡易裁判所を通して相手に督促をするものです。途中で相手方から異議の申し出がない場合は仮執行宣言も付きますので、訴訟等による判決と同様の効力がある債務名義になり、強制執行も可能になります。
 メリットは、費用(貼用印紙)が訴訟の半額程度と安く、裁判所に出廷する必要がなく、郵送の書類審査のみで手続きが完了するため、相手が遠方でも可能である。

 デメリットは、相手が異議を申し立てると通常訴訟に移行されるので、そこから時間がかかる場合がある。

 『支払督促の申立』の手続き後、簡易裁判所からA社に支払督促が送達され、10日後に異議の申し出があった旨の報告が裁判所からあった。これにより本件は簡易裁判所から地方裁判所に管轄が移行され、通常訴訟が始まった。
 準備書面を作成して裁判所に提出。第1回目の口頭弁論期日になり出廷した。A社は社長が出廷しており、債務額等を全て認めたので、裁判長から和解を勧められ別室で協議することになった。A社は月額25万円程度を上限として分割払い案を提示したが、債権者企業はこれまでのA社の対応を考え、あくまで一括支払いを主張。仮に分割に応じるとしても3回までと譲らなかった。
 そこで裁判官が調停に入り、「A社の状況では3回まででの支払いは無理だと思います。30万円から36万円程度で10回から12回までの分割払いに譲歩できませんか」。さらに「双方が今の主張のままでは和解は成立できず、判決を言い渡すことになります。A社にどれだけの資産があるかわからないが、多額の費用をかけて強制執行をしたとしても回収できないことが多々ありますので、良く考えてください」と債権者に申し渡した。裁判官はA社にも月額金のアップを検討するよう求め、双方に考える時間が与えられ、約30分後、「月額36万円の10回払い」で和解が成立し、調停は終結した。
 
 その後は一切の連絡及び催促をすることなく、A社は毎月期日前に振り込み入金を継続し、10ヶ月で完済した。
 
ポイント 回収にはいろんな方法があり、相手によって回収方法を考えなければなりません。今回は、相手方が裁判所からの呼び出し等を受けるのが初めてであり、一定の効果が見込めたので、法的手続きを実行しました。
 

有限会社アシストワン 玉川卓生