第二回の初めに・・・
ビジョナリーカンパニーをつくるためには、意思決定の基準が経営トップにある「指示命令型カリスマ経営」の会社から、理念に従う民主的な会社へ生まれ変わらなければなりません。
何かにつけトップに判断を仰ぐ癖がついている管理職は、理念に基づき自分で答えを出すようにならなければならない。これは逆に言えば、トップ自身が、あらゆることに口を挟み口出しをしてきた習慣を、慎しむようにしなければならない、ということでもあります。
しかし、中小企業にとって、これはまさに「180度真逆」の生まれ変わり。簡単にはいきません。多くの企業がビジョナリーカンパニーになることができず、中小企業のまま終わってしまう理由が、ここにあります。
それほどまでに困難な「180度真逆への生まれ変わり」。では、どのようにしてそれを実現していけばいいのでしょう。今回からは、その具体的な方法について解説していきます。
最初のステップは「カリスマ経営からの脱却とリーダーの抜擢」です。
追い越し禁止でパワーバランスを変える
ビジョナリーカンパニーへの第一歩は、トップが指示命令をやめ、一人ひとりの社員が企業理念を中心に自発的に動き出す「自立自走型組織運営」を目指すところから始まります。いきなり理念をつくってもうまくいきません。にも関わらず、自分だけで理念をつくってトップダウンで社員に強制するトップがいかに多いことか。
かといって、トップが指示命令を出すことなくして、誰が組織を牽引するのでしょうか。そこで必要となるのが、トップに変わり組織を鼓舞するミドルたち。すなわちリーダー層の抜擢と育成です。
カリスマ経営から脱却し、リーダーを抜擢、育成していくために最も重要なのが「追い越し禁止」の遵守と「パワーバランスの変革」です。
「パワーバランス」の変革とは、「組織におけるパワーの総量は一定である」という法則に着目した方法論です。総量が一定というのは、ある人が強力なパワーを持っていれば他方は相対的にパワーが低くなる。つまり、トップのパワーが強すぎれば必然的にメンバーやミドル層のリーダーのパワーは弱くなってしまう、という意味です。この考え方からは、トップが影響力を意図的に弱め、リーダーに権限委譲を進めることが推奨されます。これによりリーダーの育成を進めるのです。
もう一つの方法論が、私の造語であるところの「追い越し禁止」です。これは、トップが中間管理職を飛び越えて直接メンバーへ指示命令することを禁ずる方法です。逆も真なり。現場のメンバーたちが中間管理職を飛び越えて直接トップへ相談や決裁を仰ぐことを禁止するのです。これによりあらゆるコミュニケーションが中間管理職を経由することになり、彼らの影響力が格段にアップします。
これら二つのメソッドに共通するのは、経営トップの影響力を相対的に減らし、リーダーの影響力を増やす、という動きです。当然のことながらその変革はリスクを伴い、様々な問題が噴出します。しかし変革に支障は付き物です。敢然と実行してこそ変革は成ります。
では次に、そのリスクへの対処法を含め、具体的にどのようなことを実践していけばいいのかを見ていきましょう。
リーダーによる変革プロジェクトを立ち上げる
先述のとおり、リーダーやメンバーの主体性を高めるためには、まずはトップのパワーを相対的に減らす必要があります。しかし、トップが引いてもすぐに社員たちが前面に出てくることはありません。人はすぐには変われないのです。
すると、組織に異常が表れます。トップが引いたスペースを誰も埋めてくれない状態が続く。つまり組織にパワーの隙間が生まれてしまい、そこに様々な問題が起きてくるのです。顧客からクレームが来る、急激に売上が下がる、社員の離職率が上がる…。
しかし、その問題の発生をゼロにすることはできません。社員の主体性を高めビジョナリーカンパニーへ変身するためには、一時的な業績の落ち込みや社内のモチベーションダウンなどは最初から覚悟してかかる必要があります。
もちろん、何も100%甘んじてそれを受け容れる必要はありません。問題の発生はできるだけ少なくすべきです。だからこそ、すぐにでもリーダーたちを抜擢し、彼らの影響力を高めなくてはなりません。そのための施策が、次世代リーダーの抜擢とプロジェクトの発足なのです。




