6月の月例経済報告以来、政府は「一部に持ち直しの動きが見られる」など、上昇基調をうかがわせる発表を続けていますが、経営者や個人事業主の大多数にはその実感がなく、資金繰りの悪化や消費の低迷でまだまだ多くの方が悩んでいるのが現状です。こんなときだからこそ未回収の売掛金等を再度見直してほしいのは、連載の冒頭でお伝えしたとおりです。
連載初回は回収業務全般の基礎的な心構えについて、2回目の前回は知ると知らないとでは大違いになる法的な知識についてお伝えしました。そこで3回目の今回は、それらを実践して弊社が
回収サポートに成功した例をご紹介します。
<事例1> 都内にあるIT関連の某法人企業からの相談
約3年前から取引を続けていたA社。初め1年ほどはホームページの作成や修正等の発注が継続的にあり、支払いも約束の期日より早めに入金してもらえるほど良好な関係を続けていた。しかし約1年が経過する頃から発注は激減し、支払いに関してもわずか数万円を不定期に支払うだけになっていた。連絡も取れず、留守番電話を残してもメールを送信しても、債権者からの一方的なアクションに終わっていた。未回収額は約150万円、支払い遅延期間は約17カ月。
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依頼を受け、アシストワン社がA社を直接訪問。代表と対面で話し会う場を持った。これまでの経緯等を詳しく聞いたところ、A社は一般のユーザ及び企業からホームページ作成等の注文を受け、そのまま業者に丸投げして手数料を稼いでいたが、受注が減ったことや、顧客から料金や代金を回収できておらず、債権者への支払いもできない状態にあった。また、これまで数度にわたり支払い期限を再設定して待ってもらったものの守れず、約束不履行となってしまっていたので、「現金を確実に握ってから連絡しようと思っていた」というのが現状だった。
ポイント⇒ 直談判に及んだことで、債務者も未回収の売掛金を抱えていた事実が判明。アシストワン社はその回収に関しても書面作成や交渉方法のアドバイス等のサポートを早期に実行することを約束しました。重要なのは、「当方も本気であるから貴方も本気になって支払いしてほしい」との意思を確認してもらうために、一歩踏み込んだアクションを起こすことです。ただ「払え、振り込め」と言うだけでは相手は動きませんし、動けません。
その後も双方で話し合いを続け、一括払いは無理であるとしてA社から6~7回での分割払いを提示されたが、債権者はそれを長過ぎるとして3回までの分割を主張した――相手の要望を全て聞いてしまうとそれ以上の努力をしないことが多いのが実情です。債権者は相手の申し出を安易に承諾せず、あくまでも一括か2~3回払いでの支払いを要求する姿勢は必須です――。A社は多少無理をしつつも支払いに合意。代表の個人連帯保証をとる旨の書面を交わした。
その後、多少の支払期日や金額の相違はありつつも誠意を持って対応してもらい――約束期日と金額に執着して管理することも重要です――、結果的に計4回の分割払いで完済した。
<事例2> 都内の某印刷会社からの相談
ある得意先の紹介で飲食店のメニューやその他広告物の制作を1年以上前に受注し、納品したが、印刷代金190万円が入金にならない。これまでに担当者だけでなく社長からも先方に電話をかけ、訪問もしたが、本人と話すことも会うこともできず、お手上げの状態。
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担当者からの情報によると、債務者は埼玉県内でホストクラブを経営しており、今回の印刷物は北海道でカレーの店舗を新規オープンするためのものだった。ただし、店舗所在地等の情報は聞いておらず、請求書の送付先である代表者の自宅兼会社事務所しか分からなかった。
後日、代表者の自宅兼事務所のマンションに出向いて居住確認はできたものの、本人は不在。その後も時間帯を変えて何度か訪問したが、全て空振りに終わった。そこで、ホストクラブを経営しているのなら帰宅は朝方になると見越し、早朝に待っていたところ、やっと本人と思われる人物が建物に入って行くのを見たので声を掛け確認したところ、本人と判明。しかし、酒を飲んでいることと眠いようで込みいった話ができる状況ではなく、携帯電話の番号とホストクラブの住所及び電話番号を聞き出し、後日再訪する日時を確認して別れた――相手が通常の判断をできない状況で約束をしても不履行になる可能性が非常に高いです。二度手間になっても、日を改めるほうが結果的に得策です――。その後、ホストクラブの住所に行って実在を確認した。
後日夕方(開店前)、あらためて店に行って話を聞いたところ、未払いの印刷代金の件は承知しており、長期間支払いしていないことも事実で間違いないが、債務者いわく「請求書も連絡も来なかった」とのこと。ただし「印刷物が納品され、カレーの店がオープンしてしばらくしてから交通事故に遭い、約4ヶ月入院していた。その間は連絡が取りづらかったかもしれない。しかし、その他は全く連絡が取れないはずはなかったと思う」とも。
支払に関しては「大変申し訳ない」としたうえで、オープンの際に短期返済の約束で金融機関から多額の融資を受けており、かなり無理をして返済している。状況的に一括返済は不可能なので月額20~25万円/8~10回の分割払いにしてほしい、と要望があった。
当方としては、①期間が長すぎること、②月末に20万円から25万円の額を捻出し続けるのは大変だと思われることから、毎日の売上から2万~2万5千円をプールし、週12万円から15万円を毎週日曜の朝9時に集金するよう提案した。債務者は概ね提案を了承したものの、「毎週集金に来てもらうのは申し訳ない」として、月曜午前中に自分から振り込むことに固執し、アシストワン社はさっそく翌週から実行してもらうよう念を押したうえで了承した。
しかし次の月曜、振り込みが実行されず、火曜朝に再訪問し、一部入金を預かった。以降は当初に提案した通り毎週日曜朝に訪問し、10万円から15万円の集金を繰り返し、約6ヶ月かかって全額回収した。
ポイント⇒ 回収には労力が要ります。相手からの振込入金を待っていても回収は進みません。また、日銭が入る飲食店といえども、それをプールしてまとまった金額を用意するのは容易ではありません。回収側が小まめに管理し、集金に出向くことも必要だと思います。
この2例に共通して言えるのは、ただ相手に連絡し、約束を取り付けて支払いの実行を待つだけでは、なかなか回収に繋がらないということです。これは当然としても、ポイントは、回収する側がどれだけ相手方の事情を理解して話を聞けるか、協力できるかということです。
皆さんの多くは、「相手方が払わないことが全て悪いのだから、何も協力することはない。請求や督促をしても払わなかったら、裁判に訴えて差し押さえでもすれば払うだろう」と考えているかもしれません。しかし、事例1にも見られるように、債務者が自分の売掛を回収できないと、皆さんへの支払いもできないのです。確実に回収するためには、時には優先順位の面で譲歩することも、回収する側から何らかの協力なり情報を提供することで相手を「この人には支払わない訳にはいかない」気持ちにさせることも必要です。
そして、それらの状況優位性を最大限機能させるために必要なことは――「こまめな管理」。これに尽きます。
皆さんが今抱えている未回収の問題と比べ、何ができていて何ができていないか。しっかり認識して、再度回収にチャレンジしてみてください。
次回、さらに専門的な知識がからむ事例を紹介し、今回と同じくポイントを挙げながら分析します。
執筆者プロフィール
玉川卓生 Tamagawa Takuo
アシストワン 有限会社 代表取締役
経 歴
昭和56年、大手消費者金融入社。入社後6ヶ月で支店長となり、5支店を移動しながら新規店立上げに奔走した。昭和60年、中堅消費者金融入社。不良債権回収の責任者に就任。平成2年、事業者向金融入社。取締役専務に就任。 平成16年、有限会社アシストワンを設立。 23年間金融業に携わり取得した、回収のノウハウ及び交渉術を活かし、企業・個人をアシストすることを事業目的とする。
事業内容
・ 売掛金等管理回収サポート業務
・ 調査業務(債権の調査・所在調査)
・ 利息再計算(利息制限法)




